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準備

「というか、先輩の連絡先知らないです」

結局あの後

カラオケを出てみんなと合流しようと思ったが

「今日はもう解散」

なんてLINEが入ってて


そんなこんなで私は先輩と帰路に付いている


「それ必要?」

歩きながら先輩は面倒くさそうに私に聞く

「明日、服買いに行くって言ったじゃないですか」


連絡先すら知らないで

どうやって待ち合わせるつもりなんだろう?


そんな私の返答を聞いて

先輩は観念したようにポケットからスマホを取り出し

「勝手に登録しといて」

私にそれを投げる

電話帳を開いてみれば、ほぼ空白で

「データでも消えたんですか?」

思わずそんな言葉を口にしてしまった


そんな私の言葉に彼は苦笑いして

「スーファミのカービィじゃ有るまいし」

「データなんてそうそう消えないだろ」


…聞いてて悲しくなってきた

アプリの一覧を眺めれば

そこに、見知った緑のアイコンは無くて

「…先輩LINEしてないんですか?」

「してない、必要ないから」


もうこの人、スマホすら要らないと思う


仕方なく私は先輩の電話番号を

自分のスマホに登録する


「先輩、名前は?」

「なんでもいいよ」

「ああああとかで登録しとけよ」


…何でもいいって言ってたから、先輩でいいか

私は手早くそれを打って先輩にスマホを返す

「後で着歴残しとくんで、登録よろしくです」

「いや、面倒くさいからいいや」


「それじゃ私って分かんないじゃないですか?」

「いや、電話掛かってこないから」

「鳴ったらお前って事だろ?」


…もう返す言葉すら無かった


私は先輩をまじまじと眺める

髪はずっと切って無いのかすごく長くて

顔の造形は…可もなく不可もなくって所だ

本気で壊滅的なのは、その服装で

「ていうか、改めてじっくり見ると」

「先輩のその服、なんなんですか?」

彼は悪びれもなく

「パーカーとパンツ」

「いや、それは見れば分かりますよ」

「どんなセレクトしたらそうなるんですか?」


「洋服ダンスの上から順に取った」


むしろ、それ以外に何かあんの?

みたいな顔してる、殴ってやりたい


「いや、そもそもなんですけど」

「そのパーカーどこで買ったんです?」

先輩の着てるパーカーは

良くわからない飾り文字のアルファベットが羅列されてて


すごく優しくオブラートに包んで

傷付かないように言葉を選べば

中学生みたいだった


「ワゴンセール?」

そんな返答に頭が痛くなる


「なんで?」

「安かったから」


「…分かりました」

「明日、先輩が思う一番まともな服着てきて下さい」

「後、持ってる服全部撮ってくる」

彼は心底嫌そうな顔をしていて

「すごいダルい」


「そんな糞ダサ童貞ルックで告白とか死刑ですよ?」

「ツイッターに晒されますよ?」

彼は引きつった顔をして

「…そんな酷い?」

「結構真面目にイケメンが着てても無理」


私はそこまで言って笑い

「でも誰でも通る道ですよ、多分」

「私だって思い出したくない歴史有りますし」

「分からないなら、勉強すればいいだけです」

「だから、面倒臭いは禁止です」


そんなのは、私だって面倒臭いって思う

そんな事しなくたって可愛い人が羨ましい

でも、そうなれなかったから諦めるなんて

努力しないなんて間違ってると証明したい


「作りもん上等です」

「イケメンなんて、9割雰囲気です」


彼は私に釣られるように笑い

「残りの1割は?」

「勝ち目のない、マジもんですね」

「でも、足りないところは仕草でカバーですよ?」

私は彼にニコニコ愛想を振りまく

彼は感心半分、諦め半分みたいな顔をして

「…すげーあざといな、お前って」


それは、私にとって誉め言葉だ

「そうじゃなきゃ生きてけないですよ?」


彼はため息をついて

「とりあえず、頑張ってみるわ」

「ファイトです」


少しやる気になった

そんな彼にもうひとつ宿題を出そう

「後、明日までにデートプラン考えてきてくださいね?」

彼は驚いたような顔をして

「誰向けに?」


「決まってるじゃないですか」

「先輩の愛しの彼女向けにですよ?」

他に誰がいるのだろう?

また彼は面倒臭いなんて言うかと思ったが


先輩は素直に頷いて笑う

「とっておきのプラン考えとくから採点よろしく」


そんな先輩の笑顔を見て

服装と髪型と姿勢と性格ぐらい直せば

まぁ、60点位はいくんじゃないかな


そんなことを思った


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