解決策
「取り敢えず、いま直面してる問題」
彼は私のスマホをぼんやり眺め
「写真送るんだっけ?」
そんな事を私に聞く
「…そうですね」
「じゃあ頑張ってそれっぽく見える写真宜しく」
彼は目を瞑る
…勝手に撮れと、そういう事だろう
私は服をはだけさせて
スカートの中に手を突っ込み下着を脱ぐ
そしてそれを彼の上に置いた
「先輩、目開けたら殺しますからね?」
彼は面倒くさそうに
「…さっきまでやろうとしてた奴の台詞かよ」
そんな言葉を漏らす
「うるさいです」
取り敢えずどうにかそれっぽい写真は撮れて
私は下着を履き直す
「…うーん大丈夫ですかね?」
した事のない私が見ても良くわからない
「どうです?」
私は先輩に写真を見せてみる
先輩は固まった顔をして
「俺、目を瞑ってた意味無くない?」
……そうだった
全然考えてなかった
私は、慌ててスマホを隠す
「忘れてください、てか忘れろ」
「もういっそ忘れさせてやる」
先輩の頭を思い切り叩く
マウントを取られた先輩は抵抗むなしく
殴られ放題だった
それでも必死に先輩は声を上げる
「見せパンなら良いんじゃないのかよ?」
「コレは見せられないパンなんです!」
その言葉に先輩は顔を赤くして
それを見て私はもっと恥ずかしくなる
「ばかっ、変態っ」
もう言ってる私も支離滅裂だった
彼は、私の腕を掴む
「…落ち着けよ」
そう言われてやっと手の力が抜ける
「…二回もパンツ見られた」
「見せちゃダメなやつ見られた」
先輩は目を逸らしながら
「…なんか、すいませんでした」
「悪いと思ってます?」
彼は目を逸らしたまま
「…不可抗力だと思ってる」
私はため息をついて
「…先輩は私の見てもなんとも思わないんですよね」
「そういう関係なんですよね?」
そんな確認を先輩にする
彼は笑って
「そう、そういう関係だから気にすんな」
「ペンギンにパンツ見られても何とも思わないだろ?」
私は先輩の上から身体をどける
「…分かりました」
私は撮ったそれをグループLINEに投稿する
みんなの返事は早くて
「キター」
「卒業オメ(^o^)」
なんて言葉が並んでいて、私は安心する
「…大丈夫みたいです」
彼は身体を起こしながら
「何も大丈夫じゃ無いと思うけどな…」
そんな呟きを漏らすけれども
それでも咎めはしない
「取り敢えず、課題はクリアだ」
「次はゲームの方だな」
彼はゆっくりとルールを反芻する
「月に何度か、このゲームは行われる」
「…はい」
「ゲームのルールは」
「援助交際を持ちかけて金を持ち去る」
「…そうですね」
「行為に及んだらルール違反で」
「ひと月の間に金を持って来られなかったら」
「…焼き鳥ですね」
彼は深く考えこむ
「…焼き鳥ね」
「先輩、焼き鳥で意味通じるんですか?」
私は最初、何のことだか分からなかった
「ああ、麻雀用語だからな」
「焼き鳥罰符って」
「上がりが一度も無かったら罰則って事だろ?」
間違ってないけど、それはそれで疑問が残る
「なんでそんなルールあるんですか?」
私の疑問に先輩は少し考えて
「…現状維持を許さないため」
「ゲームを面白くするためと言い換えてもいい」
「みんなが上がりを目指さなければ」
「誰も損しない」
「それだと面白くないから、その為の罰則」
彼は私を見て当たり前のように聞いた
「って事は、金は一位の総取りか?」
その言葉に私は首をふる
「みんな、自分のお財布ですね」
彼は苦虫を噛んだような顔をして
「ますます意味がわからん」
「それじゃゲームですら無いだろ」
「何でですか?」
「倫理的にとか道徳的にとか置いといて」
「ゲームとして考えるならだけど」
「…例えば」
「お前が自分で金を持ってったらどうだ?」
「ちゃんと出来たなんて言ったら誰も分からない」
…考えてみればそうだった
なんで、今までそれに気が付かなかったのだろう
「そしたら一位の総取りでも変わらないですよ?」
「いや、懐事情が寒くなるだろ?」
「ゲームとして体裁を保つなら」
「そうじゃなきゃ、おかしいんだよ」
おかしい?何がだろう
彼は私が考えるのを許さないかのように
矢継ぎ早に質問を続ける
「…他に焼き鳥になった奴っていんの?」
「私以外は居ないです」
「みんないつも上がれんの?」
「そんなこと無いですね…」
みんなだって、いつも捕まえられる訳じゃない
「罰則は金じゃないんだよな?」
「…いつもそうです」
彼はすべてを確認し終えたように
ゆっくり息を吐き出す
「なら、とりあえず簡単だ」
「月一で金を見せればいい」
私はそんな言葉に嬉しくなる
当たり前の事実に気がついて、気持ちが楽になる
それでも彼の表情は憂鬱そうなままで
「ほんと因果な遊びしてるなお前」
そう、ボヤくように呟いた




