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ランク計測結果

 またしても一〇体もの巨大なゴーレムが現れる。ほぼ連続でこれだけの魔法を発動できるなんて、あの教師が使っている魔法剣、相当の魔力保有量だろうな。それだけじゃなく、きっと相性も良いはず。稀にいるんだよな、生成系魔法に適正がある特殊な剣魔術士が。

 そして俺の方には身体強化魔法が施される。

 魔力が身体を巡り、筋肉、骨、神経を強化していく。久しぶりだな、この感覚。

 ふぅ~、と肺から息を吐き出し、呼吸を整える。目を閉じ、精神統一。

 ゴーレムの足音が聞こえてくる。でもまだ動かない。

 俺の周囲を数体のゴーレムが囲み、腕が降り降ろされる。それを耳で、肌で感じながら、その瞬間を待つ。


 ゴーレムの巨大な手が俺に接触する、そのギリギリ前に目を見開き、跳躍。

 ゴーレムの腕に着地。即座に駆け上がり首を切断。こいつらの弱点は頭部。高い位置にあるほど攻撃しにくくなるため、ファーストアタックはカウンターと決めていた。まずは一体。

 そのまま倒したゴーレムの胴体を蹴り、近くにいたもう一体の首を刈る。

 この時点で他のゴーレムは俺からやや距離を取った。

 後ろでは二体が魔法を放つ準備をしていて、その周りを四体が守護している。

 戦略なんていらない。真正面から突き進む!

 距離を取ったのち挟撃してきたゴーレムの攻撃をギリギリで避け、二体がぶつかったところで跳躍。


「片手剣型四番・桜流し!」


 回転斬りで二体を倒す。残り六体。

 身体が軽い。普段の何倍ものスピードで動くことができる。きっとアメリアのやつ、驚いているだろうな。同じ型でも強化されたものでは段違いだから。手数も斬撃の鋭さも。

 迫り来る四体と後ろに控える二体を見据え、走りながら型を繰り出す。


「片手剣型五番・五月雨さみだれ!」


 まずは横一文字。そのまま遠心力を利用しつつ方向修正。下からの左斜め斬り。同様に遠心力を利用し右斜め上へ斬り上げ。そのまま振りかぶり、真下へ振りおろす。最後に剣を後ろへ引き、突きを放つ。

 その剣筋は四振りで十字、斜め十字を描き、五振り目で中心点を貫く。本来は一人の敵に対し放つ型だが、今回はそれぞれ一振りずつゴーレムの脚へお見舞いし、護衛の四体と魔法準備中の一体を沈める。ゴーレムには再生能力があるため早くトドメをささなければならないが、まずは残った一体を。

 そう思ってそちらへ向き直ったところで、相手の魔法が発動する。

 一回目の計測時と同じ、岩のつぶてが降り注ぐ。


 この魔法剣はセカンド。魔法耐性は期待できない。だから。

 避ける。避け続ける。強化された今なら、それができる。

 身体の関節が動く限界まで動かし、どうしても避けられない場合は魔法剣の表面をすべらせて受け流しながら前へ進む。

 そうして懐へ潜りこみ、型でもってして斬り伏せる。


「片手剣型三番・片時雨かたしぐれ!」


 剣を逆手に持ちかえ、真上に跳躍しつつ斬り上げ、空中で元の握り方に戻し、重力のままに一振り目と同じ場所へ斬り下ろす。

 間髪入れず先ほど脚を斬って行動不能にしたゴーレムたちのトドメをさしにいく。


「計測終了!」


 すべてのゴーレムをただの土に変えたところで終了。

 使用していたセカンドを返還し、かわりにアメリアを受け取る。

 人の姿になったアメリアは目を輝かせながら俺の腕をつかんできた。


「すごいすごい! あんたって身体強化魔法使うとあんな風に戦えるのね! あたしも今まで何人も剣士型の剣魔術士を見てきたけどあんなに速く、鋭く、無駄なく動ける人間なんて見たことない!」

「お前が見てきた剣士型が弱いヤツばっかりだったんだろ。俺なんかよりすごい剣士なんていくらでもいる」


 脳裏にあの人と、もう一人の男の姿がよぎる。

 セカンドを用いて身体強化を行い、剣術で相手を圧倒する剣士型の剣魔術士。俺には尊敬すべき剣士型が二人いる。


「謙遜しなくてもいいわよ。……本当にあたしをパートナーに選んでよかったの? これだけ剣術で戦えるあんたと相性がいいのはどう考えてもセカンド、それか身体強化魔法を使えるファーストだと思うんだけど」


 明るい表情から一転、神妙な様子でそう聞いてくるアメリアに対し俺は軽く頭に手刀をいれる。


「あたっ」

「いいんだよ。お前ほどの魔法が使える魔法剣を手放す剣魔術士なんていない。あと、相性が悪いとも言い切れないぞ。一般的に魔術師型は、剣士型に奇襲を受けた場合のことを想定しチームを組む。剣士型が攻めてきたら剣士型の味方に守ってもらい、その隙に攻撃魔法を放つ。これがセオリーだが、俺は身体強化魔法がなくても剣士型に対応できる。つまりは今の俺は一人で戦える魔術師型、ってことになる。一人で戦うことに慣れている俺にとってはアメリアがファーストでもセカンドでも問題ないわけだ」

「そのセオリーは知ってる。一人で戦う魔術師型なんて聞いたことないけど、あんたの卓越した剣術の腕なら確かにそれが実現可能。でもそれって短所を長所で補ってるだけで、あんたの場合はやっぱりセカンドの方が」

「くどい。それ以上は聞かないからな。会ったときの自信はどうした。俺はお前が思っいてる以上にお前のことを買っているんだぞ。それにあれだ、魔法剣状態のアメリアは王宮の儀礼剣として使われていてもおかしくないほど綺麗な剣だし」


 最後のは完全に蛇足だ。おまけ程度に言ったその言葉を聞いたアメリアは大げさにビクッと驚き、俺から目をそらす。


「な、何言ってんのよ。あたしは武器。そんなき、きれいだとかいう言葉は不要なの。どうせだったらもっと強そうで無骨な見た目がよかったって思うくらいなんだから」


 俺はこいつの剣状態のとき、魔法剣・ブランフラムの見た目、気に入ってるんだけどなぁ。特に剣身に走る赤いラインとか。

 そんな風に測定の話から雑談の類の話へ移ったところで、教師が手元の紙に目を落としつつこちらへ歩いてくるのに気がついた。もう解析結果がでたのだろうか。

 アメリアもそれに気づき、二人してのどをならす。なんだよ、なんだかんだ言ってこいつも緊張してるんじゃないか。


「解析結果がでた。ではまずアメリア・ブランフラムさんから。……文句なしのSランク魔法剣ブレイド。本体耐久力に少々難あり、身体強化魔法はEランクのものどころか一切使えないというのはマイナスポイントだが評価は変わらなかった、特筆すべきは攻撃魔法の威力の高さ。当校の魔法剣の中で歴代一位に比肩するほどだ」

「当然よね。その比肩するっていう表現が気になるけど。そこは比肩じゃなく超越と言ってほしいところだわ」

「私はウソがつけないタチでね。さて、次はユキト・サモンジくんの計測結果だが……」


 教師は眉間にしわをよせながら言葉を続ける。


「Sランクだ。間違いなくSランクなんだが、私が見てきた生徒たちの中で最も特殊な解析結果となった。身体強化魔法以外の魔法適正はほぼゼロなのに身体強化魔法だけは異様な適正値を叩き出している。計測中、君がCランクの身体強化魔法を使っているとは思えなかったよ。剣術もこれまでに類を見ないほどの熟練度の高さ。ここまで剣士型に特化した剣魔術士など前代未聞だ」


 褒められているのかいないのかよくわからないコメントだったが、とりあえずSランク認定されてよかった。これで学校から奨学金を受け取ることができる。


「君たちを教えるのが楽しみだ。言い忘れていたが、君たちが所属するクラスは私、ギルト・フロストの担任しているクラスに決まった。これからよろしく頼むな。計測はもう終わったから帰っても大丈夫。お疲れさま」


 ギルト教師はそう言って立ち去り、また解析者と話をしにいった。


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