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夜語り その1

「俺の前のパートナー、カメリア・エクレスティールのことを話す前に、まずは俺がいた村のことを話さなきゃならない」

「ユキトがいた村……昨日聞いた、尊敬する両親と師匠といた村?」

「そう。俺の故郷。家族や大好きな人たちがいた村。今はもう、俺以外の全員、この世にはいない」


 アメリアは目を見張り、何かを言おうと口を開こうとして、やめた。当然だろう。突然こんなことを言われたら誰だってこうなる。


「俺が生まれ育った場所はアミラ村という小さな村だ。ちょっと有名な事件だから知ってる人も多いと思う。アメリアは聞いたことあるか?」


 そう聞くと明らかに動揺した様子で手を組み、目を伏せる。これは知ってる反応だな。ただ聞いたことがあるだけなのにここまで大げさに反応するのはやや不自然だけど。


「……うん。知ってる」


 しぼりだすようなその声に俺の方が申し訳なくなってしまう。


「知っているのなら話は早い。二年半前、俺の故郷は、滅ぼされた。今でも夢に見るよ。炎に包まれた村の様子を。いつも武勇伝を語って聞かせてくれた屈強な傭兵のおっちゃんたちは歯が立たずあっけなく散っていった。Aランクの剣魔術士たちが束になってもかなわなかったんだ。唯一のSランクだった師匠も、いつの間にか死んでいた。死体すら残っていなかった。父親も母親も俺の目の前で、殺された。運悪く俺一人、俺だけが、生き残ってしまった」


 脳裏によみがえる生々しい記憶に飲み込まれないように頭を振り、話を進める。


「最初は、なんで俺だけ生き残ってしまったんだろう、俺もみんなと一緒がよかったって思った。でも、すぐに命が助かったことに感謝したよ。生きていれば、みんなの仇を討つことができるってことに気がついたから。その日から俺の生きる目的は復讐を果たすことになった。これが俺の一つ目の旅の目的だ。その目的を果たすために、お前の力を利用させてもらうことになる」


 俺はいつの間にか強く、強く拳を握り締めていた。

 村が滅ぼされたあの日、何も守れなかった。当時一四歳だった俺は、はじめて経験した戦場で足がすくんで動けなかった。ただただ大人たちに守られて。恩返しも何もできなかった。

 あのとき身体が動かなかった自分を思い出し、悔しさで涙がにじんでしまいそうになる。その時、震えていた俺の拳を、アメリアの手がそっと優しく包み込んだ。


「あたしはあんたのパートナーよ。どんな目的だろうとついていく。一緒に戦う。……その、村を襲ったやつの情報って、どれくらい集まってるの?」


 この上なく真剣な表情でそう問うてきた。


「まだ、ほとんど何の情報も得られていない。名前や所属組織も、何も。俺はその襲撃者の顔を見たはずなのに、どうしても思い出せないんだ。でも、ちょうど今日、糸口が見つかった。三ヶ月後にこの学園で行われる覇導祭という大会で優勝すれば、願いを一つだけ叶えられるらしい。俺はその大会で優勝して、王家が握っているという襲撃者の情報を優勝賞品として受け取るつもりだ」

「! 王家が隠してるってことは相当危険な情報なんじゃないの? もしその情報を知ってるってその組織にバレたら、王家の庇護がないユキトじゃ消される可能性もあるのよ!?」


 アメリアが勢いよく肩をつかんできたせいでベッドに倒れ込んでしまった。

 何するんだよ、離せと言おうとしたが、あまりに必死に、そして心配そうにこちらを見つめるアメリアを目の前にして、そう言うのをやめた。


「俺が今さらそんなことぐらいで立ち止まると思うか? 復讐を果たせるならどんな危険にでも突っ込んでやる。復讐なんて無意味だ、死んでいった人たちはそんなこと望んじゃいない、とかいうキレイごとを言うのはナシだぞ」

「……そんなこと、言わないわよ。言ったでしょ、あんたについてくって。ただあたしはあんたが心配で……でも、目を見てわかった。あんたの意志は決して揺るがないって。復讐という目的が、あんたの生きる糧だって。ならあたしも覚悟を決めるわ」


 アメリアは俺の肩から手を離し、自分のベッドに腰掛け直し静かに足を組んで、目を閉じた。 


「ユキト、のどが渇いたから何か飲み物を持ってきてほしい。あたしも話すわ。以前いた施設のこと」


 今このタイミングでこう言ったということは、もしかして俺の話とつながる部分があるのかもしれない。

 言われたとおり俺は寮部屋の簡易キッチンでココアを淹れて持っていき、休憩がてら一緒に飲んだところで再びお互いにベッドに腰掛け向かい合う。

 今夜は思いの外長くなりそうだ。

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