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初登校

 話し込んでいたら時間に余裕がなくなってきていた。急いで朝食を食べて宿を出るとしよう。

 実は今も人の姿のアメリアと一緒のベッドで寝てしまっていた、という事実にドキドキしていることを悟られないようきびきびと支度を整える俺なのであった。

 アメリアを伴いアルカス地区のきれいに舗装された道を歩いて登校する。急いで来たため遅刻はしなかった。

 まず俺は職員室に向かい、昨日お世話になった、そしてこれからもお世話になるギルト教師にあいさつをし、共に教室へ。


「緊張してないかい?」

「多少は」

「その様子なら大丈夫そうだね」


 ギルト教師は平然としている俺たちを見てさわやかに微笑んだ。好青年オーラがすごい。女生徒からの人気が高そうだ。

 そんな教師の一歩後ろにぴったりとついて来ているのは、長身の女性。タレ目でおっとりとした雰囲気をかもしだしている。おそらくギルト教師のパートナーだろう。なるほど、このスタイルだからあれだけの大剣へと姿を変え「なんかユキトの視線むかつく」おいやめろアメリアそんなに腕をつねるな。

 そう、ファースト、セカンドとも、剣の姿と人の姿はリンクしていることが多い。だが大きく乖離している例もある。何事にも例外は存在するというわけだ。


 歩くこと一〇分余り。ようやく二年Aクラスの教室に到着する。流石アルカス地区最大の学校。職員室からこんなにも距離があるとは。校内をすべて回りきるのにどれだけの時間がかかるのだろう。

 ニス塗りされた高級感のある扉を前に深呼吸を一つ。

 あくまであの人を探すための情報収集とアメリアを追っ手の目から逃すための隠れ蓑としての編入で友達を作ろうとかは考えてないが、それでもやはり緊張はする。話に聞く学校とは一体どのようなものだろうか、というワクワク感も、ちょっとだけ。

 隣を見やるとアメリアはきょろきょろと辺りを見回し、しきりに感心していた。好奇心の塊みたいなやつだな。物怖じなんて一切していないように見える。


「では、私が合図したら入って来てくれ。その後自己紹介してもらうから何を言うか考えておくように」

「はい」


 そう言って教師はそそくさと教室へ入っていった。

 自己紹介、ね。どこまで言った方がいいものか。当たり障りのないもので十分かな。


「それでは転校生の二人、入ってきてくれ」


 ギルト教師の声が扉の中から聞こえてくる。


「さ、行くとするか」

「ちょっと待って、心の準備するから」


 胸に手を当て深呼吸をしはじめる。さっきまでの勢いはどこへやら。そこまでガチガチになる必要もないと思うんだけどなぁ。

 アメリアの心の準備が整ったところで、俺は教室内へとつながる扉へと手をかけた。



 一時限目の授業が終わり、一五分間の休憩に移る。

 アメリアの周りには多くのクラスメートが集まっていた。矢継ぎ早に繰り出される質問に一つ一つ元気よく答えている。相変わらず価値観や好みが周囲とズレているものの、クラスメートたちはそれに引くことなくむしろ面白がっている様子だった。


 片や俺はと言えば、自分の席で黙々と教科書を読むのみ。どこから情報がもれたのかわからないが、もう俺がSランク認定されたことが知れ渡っているみたいで、ヒソヒソ声で俺のことを話す者、明らかに対抗心を燃やしている者、嫉妬・恐怖といった感情を隠しもせず顔に貼り付けている者、様々な声、視線が集まる。

 今の俺に友達を作る余裕もヒマもない。この状況は好都合だ。頼むからこのまま誰も話しかけてきてくれるなよ。


「ねえユキト、なんかクラスの人に手合わせしてほしいって言われたんだけどどうする?」


 お前が話しかけてくるんかい。やめろよ、その周りにいるやつらに注目されるだろうが。


「そいつは剣士型か?」

「ううん。魔術師型だって」

「ランクは?」

「Cらしいわ」

「ならアメリア一人でも十分だな。行ってこい」

「あんたは来ないの?」

「行かない。面倒だからな。それにやることもある」

「なら手合わせは断る。あたしはパートナーとして常にそばに」

「だからそういうことは気にしなくていいって。俺の顔を立てる意味でも、その手合わせ、受けてこい。学校内なら安全だから心配するな」

「でも」

「ほら、とっとと行けって。周りのやつらも心配そうにお前見てるし。闘技場でやるんならここから見てるから」

「……わかったわ。あんたがそこまで言うなら、行ってくるわね」

「ああ。蹴散らしてこい。勝ったら今日もステーキ食わせてやるぞ」

「ホント!? やった!」


 小さくて赤い舌で唇をペロッと舐めながらお腹を鳴らしている。どれだけ食い意地張ってるんだこいつは。

 アメリアは手合わせを挑んできたと思われる男子生徒の手を引っ張りながら教室の外へ飛び出していった。最初その男子は俺が相手しないと聞いて顔を真っ赤にしていたが、手を引かれて行くときの赤面はその性質が違うように感じた。アメリア、罪なやつめ。

 俺は引き続き教科書に目を落とし、先ほどの授業の復習をする。


 ほどなくして闘技場から戦闘音が聞こえてきた。チラッとそちらを見ると、もうアメリアがトドメをさしていた。

 相手の攻撃魔法を華麗に避け、目にも止まらぬ早さで手刀を打ち込む。見事としか言いようのない戦闘だった。その動きに迷いはなく、無駄など皆無。剣を持っていなかったら俺でも防ぎきれないかもしれないな。


 相手の方も悪くは無い。魔法発動スピードはそこら辺の剣魔術士より断然早かったが、見切られやすい動きだったせいでこんなにも早く決着がついてしまった。魔術師型なのにあんなに大げさに魔法剣を振ってちゃ今からあの場所攻撃しまーすと言ってるようなものだ。実戦経験が少ないせいだな。

 今日一日はその手合わせ以外に目立ったことは起こらず、つつがなく放課後へ。

 アメリアはまた次の挑戦者と戦っている。今は五人目だろうか。噂を聞きつけた他のクラスの生徒が行列を為しているため、まだまだあいつは闘技場から出られそうもないな。

 さて。俺はやるべきことをやりますか。

 教科書類をカバンに入れて教室を出る。目指すは学園長室。


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