窓越しのもう一人の自分
宵を越えた手紙のあと
君の瞼から傷が消えた
朝焼けは丸く開いた
橙色の扉の向こう
ずっと 夜通し探しあぐねた夢に
出逢えた朝には顔を水に浸し
窓越しのもう一人の自分に
掌を合わせ「さよなら」を
鏡の奥へ走り去った自分に
もう一度会える時まで
手をつなぎ 一輪車を
走らせたままの子供たちは
街を離れ 草原をのぞむ
あの丘の上へたどり着く
白地図に描く線は
明日に続く道しるべ
ホテルの個室から出て
ケースの中の錆び始めている鉱石を手放し
虹のかかる橋の上で
手を振る昨日の自分に
お別れの涙を流しては
両指を組み合わす君は
崩れていく街の面影を
抱き締めたまま 戻りきて
蓮華が咲いたそのあとに
振り返らずに明日へ
指でたどる地球儀の先に
深く憂えた君がいて
僕を見据える君の瞳は
忘れえぬ思い出の扉を閉じては見開かれた
雨音に耳を澄ましたあと
訪れる静けさに
体をゆだねた君は今
眠りから目を覚まして
イメージの殻を破って
振り返らない世界へ
行く
ただひたすらに
行く




