表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と画材と鋼竜  作者: 鹿井緋色
第2章 病魔騒動篇
52/146

第二章26 断片 隣に

    ××××


 あんたは本当に、ばか。


 これは決定的。


 あんたはいつも走り回ってる。


 これは事実。


 あんたはしかも全身全霊。


 これはちょっと尊敬する。


 たまにね、あんたみたいに成れたらって思う時があるの。


 あんたみたいに真っ直ぐ腐りながらも夢を追える人に成りたかった。


 私は現代美術では輝けない人間だから、輝きながら夢は追えないの。


 腐ったように走らなきゃいけないの。


 あんたは心根が腐ってて、優しくて、力持ちの男。


 だから、あんたは本当にばか。


 どうしてそこまでばか真面目に仕事に打ち込めるのか、不思議。


 辞めたい辞めたいアピールしながら、それでも仕事をするあんたは、本当にばか。


 あんたって本当は頭いいんじゃないの?


 あんたって本当は心の中で頭の良さそうな単語使ってるんじゃないの?


 あんたって本当はなにが好きなの?


 なにを愛しているの?


 なにを尊敬しているの?


 なにが苦手なの?


 なにが嫌いなの?


 なにが出来ないの?


 ――――なんでも出来るじゃない。


 戦えて、絵が描けて、気の利いた軽口が言える。


 これってすごいことだと思うわよ?


 とっても、すごいことなのよ。


 だからあんたは諦めないのよね?


 逃げないのよね?


 投げ出さないのよね?


 あんたは、本当はばかみたいにすごい奴だから、だからいつも私を笑わせてくれる。


 元気をくれる。


 力をくれる。


 ――――鋼の意志をくれる。


 あんたの隣は、結構、あったかい。


 隣にいると、少し安心する。


 あんたが違う女といると、ちょっと胸の奥がざわつく。


 いや、ドロつく、かな? 分かんない。


 でも、自分のことをよく分かんないでいたけど、あんたのおかげで少しは自分のこと分かった気がする。


 私は絵を描くことが好きで、


 私は絵本が好きで、


 私は皆に「私のこと」を認めてもらいたくて、


 私はあんたと仕事をしてる。


 異世界画材店未来堂で、あんたの剣として、隣にいる。


 最初の相性は最悪だったけど、


 今じゃたぶん、あんたが一番、私を使いこなしてる。


 人の私も、剣の私も。


 だから決めたの。


 私は私に約束する。


 あんたが約束守ってちゃんと戻ってきたら、


 もうあんたの股間を蹴り上げるようなことはしない。


 あんたのこと、正真正銘のばかだと思ってるから、


 治らない系の本物のばかだと思ってるから、


 無駄な矯正はしないの。だって今のあんたは――――異世界画材店未来堂のあんたはとっても輝いてるから、治そうとするのはお節介よ。


 でもね、ケンシロー・ハチオージ。これだけは覚悟しておくこと。



「もし帰って来なかったら、あんたの墓石にいやらしい絵を描いてやるんだから!」



 私はそう悪罵する。


 あんたは本当にばか男。


 私の人生を変えた責任でも、とって欲しいくらい。


 でもね、ケンシロー・ハチオージ。


 それでも世界の断片で、私はあんたの隣にいるんだからね。


    ××××


第二章26話でした。短いですが、一人称が「私」の女の子のケンシローに向けた想いです。

今日(明日?)ももう1話くらい投稿する予定ですのでよろしくお願い致します。

夜分遅くに申し訳ないですが、作品の感想・ご意見・評価等々お待ちしております。

率直な感想でもいいのでお聞きしたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ