断片 独り言
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このミディアムヘアの金髪を美しいとは思わないけれど、この目で視るものは美しいと思う。
たとえば花。
咲き誇り、未来の為に種子を残す。
たとえば獣。
吠え猛り、世界の為に体を揺らす。
たとえば人。
考え抜き、誰か皆の為に力を使う。
たとえば画。
美しくて、いつも世界を魅了する。
たとえば材。
ただそこ、あるがままに役に立つ。
アタシの目には全てが美しく、アタシだけが美しくない。
この碧い瞳には感謝さえするが、価値と言うものを未だ見出せない。
人はみな、アタシの金の髪を見て、碧い瞳を見て、膨らんだ胸を見る。
もう慣れたはずなのに、どうしてかその「視線」には慣れない。
金言術師『ザラカイア・アズライト・シーカー』
その名を与えられ、アタシはアタシを作った。
その次にアタシは画材を作る。
もっと人の役に立ちたいから。
もっと世界の役に立ちたいから。
まだこの世界に存在しない、美しいものを造り上げたい。
役に立ち、美しく、そして、未来に残るものを造り上げたい。
そういうものを遺したい。
アタシのわがままはそれだけ。
それ以上のわがままは、きっと誰かを傷つけてしまうから。
アタシのわがままはそれだけ。
アタシの世界は異世界画材店未来堂とその周辺の少しの世界。
アタシをそこから連れ出してくれるのはきっとあの――剣を持った厄災の少年くらい。
好きなものを聞かれたら、もしかしたらあの少年と答えたりして、はぐらかしたりして。
どうだろう。よく分からない。あの厄災の少年は案外よく視えないのだ。
なんでも解かるこの瞳も案外、歳のせいか、元々の出来のせいなのか、分からない事が多い。
しかしいつかこの瞳の力を失った時、そこから眺めた景色というのは、もしかしたらもの凄く、自分すら美しいと思えるくらい、視力が落ちてくれるかもしれない。
よく視えないからこそ、美しく視えるものもある。
――こちらから深淵を見つめる時、深淵もまたこちらを見つめている。
そんな言葉にふと思うことがある。
つまらない、只人の言葉遊びの類だが、
もしかしたら、アタシが覗く厄災の深淵が覗くのは、アタシではなく――――
厄災の剣士、ケンシロー・ハチオージ、
アタシは君を待っているよ。
「必ず帰ってこないと、さすがのアタシも怒るからな。剣災」
この世界の断片で、アタシは独り、そんなことを言う。
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短いですが、あの人のモノローグです。
本編の続きはしっかり今日の夜頃にと思っております。




