地理と魔法
メイヤを部屋に招き入れメイヤは椅子へ、俺はベッドへと腰掛けとメイヤが柏手を打つように2度手をたたく。すると何もない空間から木のカップと水差しのようなものが現れベッド横のサイドテーブルへと置かれる。
「何を呆けておる、お主が持つ指輪と同じようなものをうちも持っているだけじゃ。」
あっけに取られていた俺はその言葉に納得する。だが、こちらへ来てまだたった数時間。なれるまでにはしばらくかかるだろう。
「さて、うちからも聞きたいことは多々あるが…とりあえずはこちらの情報をだそうかの。
この地には大きく分けて魔法国家シグナスの治めるシグナス領、軍事国家ジェベルが治めるジェベル領、聖堂協会ゼルビスの治めるゼルビス領、停戦区域である商業都市ディオに分かれておる。」
聞けば、各国は考えの違いからだいぶ中が悪いらしく、国境沿いでのイザコザは日常茶飯事だという。
だが例外もある。商業都市ディオに置いては国同士の争いは禁止されており、各国から選出された数名で都市を収めているらしい。
「後はシグナス領内にエルフが、ジェベル領内にはドワーフ、が住んでおる。獣人は点在しておるかのぅ。人間の手が入っているのはこのくらいじゃろ。人の力では超えれぬ大海峡が地の果てにあるが、その先は魔族の住処になっておる。簡単な地理はこんなもんじゃな。」
つまりは、その人では越えれない大海峡とやらを超えてその先に行かなきゃいけない訳か。道のりは遠そうだ。
「地理はわかった。今度はこっちの番だな。」
元の世界で死んだこと、神様に会ったことを隠さずに伝える。
「ふむ、女神ユミル…聞いたことない名じゃの。お主の元の世界とやらは気になるが、なるほど、お主の感じたことのない魔力はやはり異界の者だったか。」
思いの他動じないメイヤに年の功だろうかなどと考えていると表情から心意が読まれたらしく軽く脳天にチョップを食らわされる。
その後、メイヤに魔法についてレクチャーしてもらっていると、話を聞いただけなのにもかかわらずスキル習得をするという、長年生きてきて、異世界人ということにも驚かなかったメイヤでも驚く事態に、ズルいと何度も同じ言葉を聞かされる羽目になった。
カズキ イチガヤ
Lv2
HP:95/100
MP:85/85
防具:布の服
武器:ナイフ
スキル:短剣術Lv1、初級火魔法Lv1、初級水魔法Lv1、初級土魔法Lv1、初級風魔法Lv1、初級精霊魔法Lv1、回復魔法Lv1、状態異常回復Lv1、鑑定Lv2、メールオーダーLv1
パッシブスキル:経験値上昇、自然治癒、全属性適応、言語習得、魅了チャーム
装備アイテム:マジックバッグ(2/無制限)、マジックリング(0/100)
この世界で魔法適性は普通1系統のみで、高適合者でも2系統だというのだからだいぶチートな感じがする。
いや、どんなゲームでもLv2でこれだけスキル取るとかありえないから完璧チーターだよ。βテストがないからビーターにはなれないのが残念だ(笑)
現在地はシグナス領の西の端。目指す魔族領は東の最果て……始まったばかりなのだからこれからとは言え、西遊記の三蔵にでもなった気分だ。向かう方向は真逆だけどな。
とりあえずは最寄りのシグナス城下へと目標を定め、途中の街を経由しながらレベルアップか。
せっかく取得した魔法を試してみたい気もするが、すでに夜半近く。魔物の活動も活発になる上、ご近所迷惑になるからと止められてしまった。
「そうじゃ、通常人族は鑑定スキルを持っている物が少ないと聞く。故に人々はギルドカードなるものでステータスの確認・身分証としているようでの、道中にある少し大きめの街にならギルドがあるはずだから寄るがいいじゃろ。」
メイヤもギルドカードの詳細は知らないらしく、ただステータスを確認するのに使っているだけという認識らしい。
でもまあ、ギルドカードって名前なのだから、仕事を受けたりするときにも必要なのだろうから手に入れない理由は無い。ただ、スキルまでまるっと表示されるといろいろ困りそうだ…。
「ふぁぁぁぁ、久しぶりに人の姿を固定してつかれたのぅ。うちは寝る。」
口を大きく開けてあくびをすると、目を擦り眠気を訴えてくる。そんなメイヤに礼を言って部屋の扉を開けに立ち上がるが、そんな俺の横をすり抜け次の瞬間には俺に配分されたベッドへと身を投げ出し寝息を立ててしまっている。
「………定番…イベントだな。うん」
その様子に己に言い聞かせるように呟くと、タオルケットを手に与えられた部屋を後にしリビングのソファーへと向かいおとなしく一晩を超えることにした。
余談だが、翌朝リビングのソファーで寝ている俺を見てエリスがメイヤを怒っていた。
今後このメンバーで動くならば野営もあるだろうから、今日のオーダーで野営グッズを購入しようと心に決めた。
現代技術の詰まったサバイバルグッズや、キャンプ用品は優秀だからな!
メイヤはモンスター寄りなので詳細は知りませんが、たまに人に変化して街をぶらついているのである程度のことは知っています。