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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ある婚約解消のその先で

作者: きつね耳モフモフ

とある学園での出来事のその後の話

 とある世界のとある王宮に今一人の女生徒が王の前に呼び出されていた。

「既に聞いておろうがお主と王子との婚約を解消する。」

とふんぞり返った王が告げる。 

 彼女は先頃通っていた学園にて皆の集まる所で王子から求婚され婚約者になったばかり。

彼女に散々虐めや諫言をしていたと王子に断罪された王子の元の婚約者は

その場で婚約者の座から引きずり降ろされてしまっている。

「・・・何でですか?私が王子の本来の婚約者と王子との仲を散々邪魔した挙句、

 あらぬ噂まで流していたから。と学園では聞きましたが。」

とふてぶてしく頬を膨らませた女生徒が悪びれた様子も無く反論する。

ピクリ。と王の側近の一人が眉を顰める。

「あらぬ噂はおいておいてだ。そもそもお前は我らが用意した会費を無駄遣いしたではないか。」

と別な側近が目つきも鋭く追及する。

「無駄遣い?会費とやらは貰った分に関しては孤児院に寄付しただけですが?」

と眉を顰める女生徒。

「あの会費は王妃となる為の会合を開く為の物だ。それを孤児院だけに寄付するとは。」

とその側近が呆れた口調で言う。

「大体現金で渡す者が居るか。貰った者が着服するとかは考え無かったとはな。」

と彼女をさげずんだ目で見降ろした。

「あら?変ですね。私の知る限りちゃんと寄付したお金は使われていた筈ですが?」

と怪訝な顔を彼女がする。

側近はこれだから。という顔をあからさまにすると

「確かに着服は無かった様だな。だが一ヵ所だけが富むとどうなるかは知らないだろう。」

と彼女を馬鹿にした様な顔をする。

「他に寄付するべき様な場所がある事は私は知りません。誰も教えてくれませんのでしたので。」

と彼女はさらりと答える。

「それに会合と言ってもお茶会でしょう?その類いの物でしたら『自費』で行ってましたが?」

と彼女は言う。

「はん。それは一般学生の集まりであろうが。会合とは我らの様な地位のある物同士で催す物だ。」

と側近が反論する。

「お茶会でしたらちゃんと目上の学生の方々もお呼びしましたし、参加なさってましたが?」

と彼女は彼女なりの『正解』を反論する。

「大体目上の方々だけの集まりでは市井の声は聞こえないではありませんか。」

と有用性も説いているが彼らの耳には痛い話だった様で

「ふん。流石に王子を誑し込むだけの口はある様だな。だが邪魔の件はどうなる?」

と話しを逸らす。

「邪魔って何です?私が彼女に悪戯したとかされたとか言う話でしたら虚偽無根ですが?」

と逆に問いかける。

「大体、私、王子と結婚する心算はないので。」と冷ややかだ。

「は?」

と思わず側近が口にする。

「皆の前でプロポーズまがいの事を受けたのは事実ですし、はい。と返事もしたのは事実ですが・・・」

と女生徒が首を傾げる。

「そもそもあの場でいいえ。と言えますか?皆が見ている前ですよ?

  それこそ王子に対し失礼と言う物。違いますか?違いありませんよね?

 お断りの手紙書こうとしていた処で呼び出されたのでまだ途中ですが・・・」

と書きかけの手紙をポケットから出して広げて側近の方に見せる。

「手間が省けましたわ。どうぞ、お受け取りになって下さいませ。」と手紙を畳んで

近くの衛兵に渡す。

「ま、まて。それでは先ほどの態度は何だっ!」と側近が王の傍だという事も忘れて喚く。

女生徒はそれこそジト目で側近を見つめ

「私はただ単に王様に『説明』を求めただけです。それを代わりに貴方が答えてくれただけの事。」

とこれまでとはうって変わって冷ややかな目線で皆を見つめる。

「どうも貴方方は『地位』にばかり拘り市井の現状に目を向けられない様ですね・・・失望しました。」

側近が何を言いだすかと言うばかりに顔を女生徒に向ける。

「きさま・・・。自分の立場が分かっているのか!?」

だが、女生徒の笑みは深くなるばかりだ。

「・・・分かっていないのはあなた方の方。私の『名』ばかりに気を取られていた様ですね。」

そう。女生徒がちやほやされていたのは彼女の名の一部が自分達の信仰する精霊と同じだから。

だがお妃候補に与えられるその『名』を得られていたのは彼女だけでなく王子の婚約者とて同じ事の筈。

「何を騒いでいるの?」と王妃が謁見の間の袖からしずしずと現れた。

王も側近もホッとした様な顔で彼女を向かいいれる。

「あぁ、貴方が王子を誑かす娘ね。こうなる事は分かってましたわ。だからあれ程反対しましたのに。」

とドッカと王の横の玉座に座る。

 彼女は自分の推す娘、だけでなく女生徒にも『名』が与えられた事に

王宮内で最も不快感を示していた人物でもある。

(本来ならばわたくしの推す娘だけでいい筈なのに。幾ら『慣習』でもこれだけは納得いきませんわ。)

 「私は唆してなどいませんよ?貴方方が勝手に解釈して陰でこそこそ動いていただけの事。」

と女生徒は笑みを崩さす答える。

「何ですって?わたくしが貴方の醜態を知らないとでも?」と王妃が咎める。

「くくくく。『醜態』ですか?散々貴方方の『常識』に当てはまらない様な事をやらせておいて?」

と女生徒がせせら笑う。

「私が何も知らない事を逆手に取って貴方方の『常識』に当てはまらない事を

 やらされてた事に私が何時までも気が付かないとでもお考えでしたら大間違いですよ?」

と王妃に笑いかけながら教える。

「どういう意味かしら?」と馬鹿にした様な顔で王妃が問いかける。

「お分かりになりませんか?貴方様の私に対する最初の態度が今度の様な事を招いた事に。」

と側近や王達を見回す。

「ここにいる方々は貴方様の私への態度に報いるべく動いていた。ただそれだけの事なのです。」

と王妃に諭す様に言う。

「もし。いえ、この場合は確実に。ですね。貴方様の所に私の『醜態』とやらが届いているとしたら。」

と笑い顔をやめて元王妃を冷たい眼で見つめ

「それは貴方様が望んだ事だから。

 ・・・それ以外の『答え』は『最初から無かった』事に早く気づくべきでしたね。」

王妃はそれこそ「はぁ?」という顔をした。

「この国が辛うじて持っているのは精霊の『慈悲』があってこその物。

  だからこそ精霊と相性の良い者に『名』を与え婚姻する事で国を維持する手段とする・・・」

と女生徒が自らの胸に片手を添える。

「でも貴方方は『それだけ』に執着しむしろ精霊をないがしろにしている事に気づかなかった。」

と女生徒がここで寂しげにほほ笑んだ。

「だから。・・・もう終わりにしましょう。私が婚約をお断りしようとしていたのもその為。」

王妃と王達が唖然とする。

「まだお分かりになりませんか?あなた方はもう精霊に見放されているのです。・・・この様に。」

と女生徒が自らの腕に付けていた腕輪を取り外す。

「これは私の力と姿を封印し誤魔化す為の物。もう、これも必要ありませんね?」

とポイと腕輪を王の前に転がし落とす。

「この制服も貴方方が私への貢ぎ物として用意された物。それにすら気付かぬとは。」

と傷も汚れも無い制服をどこか懐かし気に撫でまわす。

 一見普通の制服に見えるそれは良くみれば細かい刺繍で飾り立ててあり

注文主である彼らがそれを思い出せば自分達が特注した品である事位は直ぐにでも分かる筈なのに。

「これも貴方方の指示を受けた者によって何度汚され傷付いた事か・・・。」

と女生徒は悲し気な表情をする。それを汚され傷付く度に直してきたのは彼女自身。

 王達の前で女生徒は姿を替え彼らが敬うべき精霊の姿へと変化していった。

着ていた制服はいつの間にか丁寧に脱ぎ折り畳まれ彼女の両腕に掛けられている。

「あぁ、ご安心なさい。王子や市民達にはそれなりの礼を尽くしましょう。でも貴方方は・・・」

と女生徒だった精霊の顔が冷ややかな顔付きで宣告する。

「・・・ただで済むとは思わない事ですね。」

婚約破棄させる為に裏でこそこそ動き回っていた大人達がざまぁされる展開を書きたくて書いてみました。

6/2 最初の王子の件が分かりにくいというご指摘を頂いたので若干加筆修正しました。6/4ご指摘を受け描写が足りないと思う部分を加筆修正しました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 王妃サイドを書いてほしいです。
[良い点] まぁこんな連中じゃあ見放されますよねぇ……という納得 [気になる点] そもそも王妃様が発端だとして婚約破棄して、なにがしたかったのかが分からずもやもやしました 元婚約者の令嬢とそりが合わな…
[良い点] 着眼点が面白かったです。 最後の妖精版水戸黄門的どんでん返しも面白い。 [気になる点] 最初の方の流れですが、 王子と別な人物が最初に婚約している。→王子が主人公に結婚を申し込んで婚約者…
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