悪役令嬢に転生しましたが、そう簡単に負けたりなんてしてあげませんよ。
悪役令嬢が転生者だったらこう言う戦い方もあるかな?と思って書いてみました。
日間短編ランキング2位でした!?
ビックリ嬉しいです!!
読んでくださった皆様、投票して下さった皆様ありがとうございます!
7歳のある日、高熱を出し死にかけた私は前世というものを思い出しました。
前世も今世も、いわゆる超の付くお金持ちの家庭に産まれたらしいですが、今世はさらに「貴族の」お嬢様ですって。わーお
ちなみに今世の私には兄(12歳年上)しかいませんが前世の私には姉と妹がいました。
とくに妹は趣味が高じて声優にまでなってしまった程のゲーマーでした。
そんな彼女が特に気に入ってプレイしていたのが、とある乙女ゲームでした。
そのゲームは乙女ゲームとしては良くある設定の「庶民として生まれたヒロインが稀な光属性の持ち主と判明し、庶民の通う一般の学校から貴族や貴重な属性持ちのみが通える「私立パールス魔法学園」へと転校し学園での有力者でもある攻略対象のイケメン達と恋に落ちる。」と言った物語でした。逆ハーはありません。
ちなみにこのゲームはメインのヒロイン以外にも主人公となるキャラクターが選べる稀有なゲームとしても有名でした。
そんなことをなぜ思い出したかと申しますと、そのゲーム上でヒロインには攻略中に高い壁となる敵キャラがいます。
その名は「公爵令嬢 レイラ・ルーチェ・パールス」そう、ゲーム上での主となる私立パールス魔法学園の創立者の子孫であり、メインヒーローでもある「アンジェロ・フラマ・ソル第一皇子」の婚約者で彼と仲良くなっていくヒロインをとことんイジメ抜く通称「紫のレイラ様」。
それが、この私です。
ええ、そうです。妹曰く乙女ゲーム史上最高にファンから愛された悪役令嬢のレイラ様に私は生まれ変わっていたのです。
「……マジかー。」
理解した瞬間にポツリと出たのはこの一言。
それにしても、艶々サラサラのプラチナブロンドにすみれ色がかった空色の瞳、プルプルの美肌。
悪役令嬢ってルックスのレベルぱないんですね。知らなかった
確かヒロインさんは皇子と同じ学年で1年遅れで転入して来る筈なので今から準備にかけられる時間は8年
15歳までにやらなければいけない事をリストアップし、我が家の優秀な執事のオスクリダを呼んでもらう。
「お待たせいたしました、お嬢様。なんの御用でしょう?」
「ええ、あのね……」
アンジェロ様から遅れること1年、魔法学園へ入学してから早1か月が経ちました。
今日はヒロインさんが転入してきます。
そんなヒロインさんですが学園側からのメッセージを読んでいらっしゃらなかったのかゲーム上と同じ、校門が一番混み合う時間帯に走ってやって来ました。
お目当の馬車を探していらっしゃいますが見つかるわけありません。
ああ、何人かの御者に注意されていますね、危ないですからね。と思っていたら先生が迎えにいらっしゃいました。
手を引かれて歩いて行くヒロインさんは訳が分からないという顔をされていますが、あんな調子で大丈夫でしょうか?
ヒロインさんが転入してから2週間が経ちました。
いろいろな所に顔を出しているようですが不思議とお友達といらっしゃる所は見かけません。
先日は食堂に入れる日付を間違えたらしく食堂前の廊下で注意を受けていましたが、お友達が出来ればそういったルールも教えてもらえるのにこの世界のヒロインさんはゲームより人見知りなのかも知れません。
話題には良く上がっているのですが、私たちは彼女より1学年下なので関わる事は年に1度の共同魔術実習の時くらいでしょう。
まあ、それもレベル次第では別のエリアになりますけどね。
アンジェロ様に誘っていただき構内にいくつかあるテラス席で皇子の側近とその婚約者様達と共にティーパーティを嗜んでいた時の話です。
アンジェロ様の従者の1人、ジュリウス様の声が聞こえました。
普段寡黙なジュリウス様の異変を感じそちらへ注目しているとヒロインさんがこちらへ向かっているのが見えました。
彼女は大股で歩きながら「邪魔しないで、後でジュリウスのことも構ってあげるから」なんておっしゃっているそうです。
ちなみに読唇術でヒロインさんの声を拾ってくれたのは私のメイドであり、今は同じくこの学園に通っているソナリサです。
優秀なジュリウスのおかげで一定の位置からこちらにはヒロインさんは来れそうもありませんが視線が気になりますし、あまりの態度に王国騎士団の騎士長を父に持ち将来は彼自身もその地位を得るであろうと噂されているヒース様が「私が行ってきましょう」と席を立って向かってくださいました。
ヒース様の婚約者でもあるモデナ様が「相手は女性ですし、私もお付き合いいたします」と追いかけて行きました。
15分ほど経ち戻ってこられたお二人は少し疲労した様に見えたのでお茶のお代わりをすすめました。
ヒース様がアンジェロ様に何かを伝えていましたが「そうか」と、さらりと返答しているのを聞き私は追求する必要はないと判断いたしました。
共同魔術実習の日がやって来ました。
レベルと属性別に分けられた生徒達全員がこの1年勉強したことを発揮する大事な日です。
私は同じ学年で同レベルの光属性である子爵のアディエル様と第7ホールへ向かいます。
そこには私たち以外に5名の光属性の先輩方がいらっしゃいましたがヒロインさんの姿は見えません。
3年生の公爵令嬢のビクトリア・ルス様が「全員揃った様ですね。まず第1課題はそのカゴの中の動物と妖精の傷を治す事だそうです。終了後に先生から次の課題が届きます。それでは、皆様本日は1日よろしくお願いいたします。」と指揮をとって下さり実習が始まりました。
7体の動物の怪我を治し、4人目の妖精を癒し終えたと同時にホールに光の魔術師「エリオット・ライト先生」がいらっしゃいました。
「はい、みなさん全員を癒し終えた様なので次の課題に移りますよ〜ついて来てくださいね」
7人で先生の後を追いながら別のレベルの光属性の方の話をします。
どうやら光属性の方は優秀であるのも付加価値としてあるらしく、3年生は全員が1番上のレベルにいるそうです。
1年生はどう?と聞かれたので私が「今年は私とアディエル様の2人しか光属性がいないのです。」と答えました。
1年目から1番上のレベルにいるなんて優秀な2人なのねと褒めていただいていたら先生が話に割り込んできました。
「今年はね〜光属性は2年生の1人以外はみんなこのレベルですよ、素晴らしいですね。」とおっしゃっているのでどうやらヒロインさんは下のレベルにいらっしゃるようです。
その後、格技場に着いた私たちは実習で怪我をした他属性の方々を治療し1日が終わりました。
先生曰く、最初の課題で評価は済んでいるのであとはうっかり怪我してしまった人たちを癒してあげてくださいね、との事でした。
初めての魔術実習でしたが後日A+の成績をいただく事ができ満足しました。
共同魔術実習以来親しくさせていただいているビクトリア・ルス様に招待を受けたお茶会でヒロインさんが退学処分になったと聞きました。
どうやらヒロインさん学園の校則を何度も破っていたそうです。
貴重な光属性ですが、この学園はあくまで私立で何より貴族の子供達が通う学校なので厳しい校則があり、それを守れない人には辞めてもらう事もありますが、まさかヒロインさんが退学していたとは驚きです。
まあ、うちの学園は退学になったヒロインさんですが、隣町にある公立の魔法学校へ転入したとの事なので後は3日後に迫った卒業式のお話で盛り上がりました。
アンジェロ様が在校生代表で挨拶をするので私も式から参加させていただきますと話すとビクトリア様は泣いてしまうからあまり見ないでねと可愛らしい事を仰ってました。
キリリとした見た目とは違って随分穏やかなビクトリア様はこの学園で知り合えて良かった人たちの1人です。
卒業後は同じ公爵家の婚約者様とすぐに結婚されるそうで最近は日に日に輝きが増していらっしゃいます。
さて、お茶会も終わりましたし、アンジェロ様の約束に遅れてはいけませんので皆様この辺でごきげんよう。
完
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レイラが記憶を思い出してからした事は徹底した学園改革でした。
昔のままのゆるい校則を見直し、貴族の通う学校内から人目がつかない場所(ヒロインにとっては攻略対象と密会するための場所)を徹底して無くし、学園の中だからこそしっかりと貴族と平民の住み分けをさせ、学園中に監視の陰者を置き間違いが起こらないようにしました。
ヒロインは初日から失敗をし続け、1年も持たず最後は校則違反の蓄積により退学となりました。
彼女は転生者でしたがゲーム上での正しい選択肢を選ぶたびに校則の壁に阻まれ続けました。
レイラのもくろみ通りヒロインはレイラは勿論アンジェロ達ともロクに目を合わす事もできないまま学園を去る事になりましたが隣町の学校に移ることで救われます。
レイラとアンジェロは子供時代の幼馴染の延長からゆっくりと愛と信頼を育み1年後のアンジェロの卒業と同時に全国民に正式の婚約を通達され、2年後のレイラの卒業後に結婚します。
優秀で仲も良く幸せな2人の統治下での王国は歴史上稀に見る繁栄をしました。
ちなみにヒロイン以外でヒロインポジションの主人公になれるのはレイラのメイドのソナリサでした。
このソナリサも転生者でしたがレイラの誠実さと勤勉さを見ているうちに傍観者でいることを選んでいたので彼女は今世一貫してレイラのメイドとしてその人生を全うしました。
誤字脱字など、気になる部分がありましたらすぐに直すので教えて下さるとありがたいです。