第九章/4
第九章/4
教室に入る。まだ先生は来ておらず、半分くらいのクラスメイトは着席、残りはまだ友だちの席の近くで雑談をしたりしている。
俺の席のうしろでは小次郎と弥子が話をしていた。小次郎は着席しており、弥子はそのすぐそばの壁――窓際に軽く寄りかかるようにして立っている。
「おっす」
いいながら俺はじぶんの席に腰をおろし、上半身だけで振りかえる。
小次郎がいつもの調子で、
「やー遅刻ぎりぎりじゃないか。寝坊かい?」
「違えよ。ちょっと姫宮さんのとこへ行ってたんだ。保健室に寄ってみたら、いたからさ」
「おっ、姫宮さん来てたんだ。……昨日は具合悪そうだったし、火事の影響で旧校舎には立ち入り禁止だから休むかと思ってたけど」
小次郎の言葉を継いで弥子が、
「かなり落ち込んでるみたいだったよね……どうだった?」
心配そうに尋ねた。
「ああ……」
もやもやとした気分を抱えつつ、俺はしばし黙考し、
「正直いって元気はほとんどなさそうだった。塞ぎこんでるっていうのかな。俺の呼び掛けにもあまり積極的に応じようとはしてくれなかったし」
そっか……と弥子も悩ましげに頭を垂れる。
「朝会はじめるから席につけー」
と武山先生が教室にやってきた。
ざわざわとしながら、みんなそれぞれの席に戻っていく。
先生が出席をとり、今日の予定について説明する。
事前に連絡があったとおり、今日はホームルームを行って今後の授業日程についての説明、今回の火災に関連して注意事項の徹底を行うそうで、午前中には終わるだろうとのことだ。
朝のショートホームルームが終了する。十分ほど時間をあけてからホームルームにするとのことだ。
学級委員の俺と弥子はその間にプリントを運ぶようにという指示を受け、先生のあとについていくことになった。
印刷室に到着すると、プリントを受け取る。
「私は姫宮の出席を取ってくるから、お前たちは先に教室に行ってなさい」
先生は姫宮さんが保健室にいることを知っているらしい。保健室のある一階へと降りていく。
俺と弥子もプリントの束を持って教室へと戻った。




