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森の守護者

カーナは森のざわめきを感じると直ぐ様横の樹に立て掛けていた弓を手に取り駆け出した。

彼女は森に住む精霊と呼ばれる者達を祖先とする知者の一人だ。

彼女らは木々の生命力を特に身近に感じることができ、彼らの力を借りることが出来るとされている。

その為、自分たち以外を見下す選民思想が強い。

故に他の種族達とは折り合いが悪い。


彼女は木々の声を聴きながらざわめきの元へと向かう。

するとそこには森の魔物に追いかけられる醜い小人が居た。

小人は手に光り輝き音楽を奏でる不思議な箱を手に喚きながら逃げ惑っていた。

森を走るのに慣れていないのかそこかしこで躓いてはいたが、不思議なことに足取りに迷いはない。

自分たち以外には手を伸ばした先でもまともに見ることが出来ないはずの森の中に居ながら、まるで全て見えているかの様に思えるほどである。

しかし、それは無い。

何故なら彼女ですらこの森では精霊の力を借りて漸く何があるかを把握出来る程度なのだから。


彼女はある程度事態を把握すると、相手に気付かれない様に注意しながら尾行することにした。

小人がそのまま息絶えればそれでよし、さもなくば迷い込んだ醜悪な生き物を刈らねばならない。

外からやってきたものは森の営みを破壊するからだ。


そして、醜い小人は面倒なことに生き延びてしまった。

息を切らせ、周囲を見渡し安全を確認するやいなや、その場に倒れ込むと奇妙な袋から透明な入れ物を取り出した。

見るとそれは水を入れたガラスのビンのようで、蓋を外すと中の液体を一気に飲み込んでいった。

そして許し難いことに、なんと小人は飲みきった後器を脇へと放り投げた。


神聖な森にガラスの器を投げ捨てるとは、とカーラは憤ったが何故か器が割る音が聞こえてこない。

注視してみると驚いたことに小人が投げ捨てた器は割れていなかった。


あの小人はとても希少な道具を持ち歩いていると判断した彼女は、即死させない程度に重傷を負わせる事に決めると弓を構え狙いを付ける。


「殺してしまっては道具の使い方を吐かせられないからな」


そう呟くと引き絞った弦から矢を放つ。

そしてその矢は狙いたがわず小人の背に吸い込まれるように突き刺さった。


カーラは少し待つと倒れた小人に近づいた。

勿論荷物を奪いとるためだ。

見ると小人は残念なことに気を失ってしまったようだ。


面倒だが手間を掛けたくないので、そのまま捨て置く事にする。

放っておけば死ぬだろうし、その前後には獣たちが大地へと還しにくるだろう。


そう結論づけると小人が抱えたままの荷物を持っていくために掴んで引っ張る。

しかし幾ら引いても浅ましく手を離そうとはしない。

小人の癖にとても力が強く自分の力では奪い取ることが出来そうにない。

イラつきながら抱え込んだ腕を幾度となく蹴やり踏みにじりもしたが効果がなかったので、

仕方なく諦めて小人ごと持ち帰ることにした。




しかし、彼女は荷物に意識を奪われるばかりに気付かないでいた。

醜い小人が意識を失わずにじっと彼女の行いを見ていた事に。

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