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VRゲームの世界でキミを待つ  作者: 一ノ瀬麻紀


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8/10

07 1日目終了

「本格的な従魔というよりは、相棒と言ったほうが良いかもしれないな」

「相棒! うん、そのほうがしっくりくるよ。契約して従わせるって感じじゃないもん。僕とユキは、良い相棒だね!」

「相棒! 相棒!」


 僕は、再び小さくなったユキをそっと両手に乗せると、高い高いをするように上下に揺らした。

 ユキも嬉しそうに、「相棒」と言いながら、僕の動きに合わせてジャンプする。


「でも……。体験版終わってしまったら、僕とユキの関係はどうなるの?」


 僕が今いるこの世界は、体験版だ。製品版とは違うと言っているから、おそらく新規にデータを作成するのだろう。それなら、今いるこのユキはどうなるの?

 僕は急に不安になって、ユキを両手で包み込んだ。


「その点については、俺も知らないんだ。ごめんな。……でも、今度知り合いに聞いてみるよ」

「うん……」


 ラパンは、知り合いに頼まれて、このゲームにもう何度かログインしていると言っていた。その知り合いは、このゲームの関係者なのだろうか。

 もし可能なら……僕は製品版になっても、ユキと一緒にいたい。まだ出会ったばかりだけど、もうこんなに愛着が湧いてるんだ。体験版が終わる頃には、離れがたくなっていると思う。


「今日はもう宿に帰ろうか」

「うん、部屋で今日教えてもらったこと、もう一度確認したいな」

「そうだな。初めてのログインで色々と体験したから、整理するといい」


 街の一番外れまで来たから、入口方面に向かってゆっくりと戻ることにした。宿は大通りから一本入った道の、真ん中あたりにあるらしい。

 歩きながらふと空を見上げると、オレンジ色に染まっていた。


「リベラリアの世界にも、夕焼け空はあるんだね」

「グリーンヒル周辺は、冒険者たちの拠点となるところだから、馴染みやすいように作られているんだ。帰ってきたって感じで、ホッとするだろ?」

「うん、たしかに」

「製品版では、もっと広い空間を移動できるから、色々な場所を体験できるぞ」

「それは楽しみだね!」


 僕とラパンとユキは、話しながらゆっくりと宿に向かった。

 そして宿に到着すると、ラパンは手際よく手続きをしてくれた。


「このゲームはオートセーブになっているから、パネルで選択すればログアウトができる。ベッドで寝る前に予約すれば、そのままじっくり寝たあと、ゲーム内で朝になる前にログアウトできるようになっている」

「ログアウトの予約なんてあるんだね」

「おやすみーってこちらの世界で寝て、元の世界で起きると、なんか疲れが取れる感じがしていいだろ」

「そういうところ、こだわりなんだね」


 何度もログインしているだけのことはあって、やっぱりラパンはリベラリアについてとっても詳しい。

 まるで、VRゲームの開発者側の人間みたいだ。


「食事は部屋で食べてもいいし、食堂でも食べることができるけど、どうする?」

「食堂で! ラパンとユキと一緒に食べたいな」

「わかった。じゃあまたあとで合流しよう。食事はパネル注文すると、お昼に食べたお店から、料理が転送されてくる仕組みだ」

「すごい! そんなこともできちゃうの?」

「転送魔法があるからね。レベルを上げれば、人間の転移魔法も使えるよ」

「レベル? 他の人はレベルがあるの? 僕はなかったんだけど……」


 僕がしょぼんと顔を下げると、ラパンの少し困ったような声が聞こえてきた。


「あ、それは、製品版の話で、これからのことだよ。だから、今シロにレベルがなくても、おかしくはないんだ」

「そうなの? 僕だけ違うってこと、ないよね?」

「全然おかしくない! このリベラリアは、自由がテーマなんだ。種族も生活も何をしても楽しめる、自由度の高いゲームで、今のシロはフリー状態。何にでもなれるんだ。だから、製品版になったら、やりたいことをたくさんやればいい。リベラリアの世界の中には、制限なんてないんだから」


 ラパンは、一生懸命フォローしてくれようとするのが伝わってくる。僕が変なこと言ったから、困らせちゃったよね。ごめん。


 でも僕は幸せ者だ。現実世界でも、ゲーム世界でも、僕を心配してそばにいてくれる人がいる。

 このゲームを勧めてくれたのも、いつも僕のそばで支えてくれる人だ。

 僕は現実世界で待っている人の笑顔を思い出し、心が温かくなった。


 ログアウトしたら、たくさん話したいことがあるんだ。

 初めてゲーム内で会ったラパンは、モンスターに襲われそうになった僕を助けてくれた、強くてかっこよくて頼りになる人。

 サポートキャラのユキは、ふわふわで可愛くて普段はのんびりしてるけど、いざという時にとても頼りになる。

 ちゃんと匂いも感じるしお腹も空く。不思議な食べ物も多いけど、それは楽しくて美味しいこと。

 街の人たちはNPCなのに、まるで本当にここで生きているみたいに、自然に街に溶け込んでいること。

 ……あとちょっと残念だったのは、僕は剣術向きではなくて、サポート魔法が得意だということ。


 そして、一番伝えたいのは、たくさん動いても、苦しくならなかったよってこと――。

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