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君を知らないまま、恋をした  作者: 一ノ瀬麻紀


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46 決意

 次の日の朝目が覚めると、鳥のさえずりではない、何か不快な雑音が耳に入ってきた。

 昨日は聞こえなかった不自然な音が気になって、僕は寝ている子うさぎたちを起こさないように、そっと家の外に出てみた。


「――!」


 僕は、目の前の光景に思わず息を呑んだ。

 

 昨日は住人や冒険者などの気配がないだけで、それ以外は前に来た時と変わらなかった。なのにどういうことだろう、今日は明らかに街並みがおかしくなっている。

 街の中の木々が消えたり現れたりを繰り返し、空の一部がモザイクになりノイズが走る。そして、建物の一部がまるでレトロゲームのような、ドット絵になっていた。


「なにこれ……」


 僕はそれ以上何も言葉が出ず、しばらくその場に立ち尽くしてしまった。


「とにかく、街の様子を見てこないと」


 何が起きているのか、全く見当もつかないけど、今ここにいるのは僕しかいない。子うさぎたちを守れるのは、僕だけなんだ。

 それに、街中を探し回ったら、もしかしたら誰かいるかもしれない。


「大丈夫、僕ならできる」


 自分自身を鼓舞して、僕は街の隅々まで歩いて見て回った。


 幸い、モンスターが入り込んでいるとか、不審な人がいるとか、そういうのはなかった。

 ただ、聞き慣れない不快な音はまだ鳴っているし、ノイズやドット化など、街の至る所で異変を確認できた。


「一度、子うさぎたちの元へ戻ろう」


 僕が不在の間に、家を出てしまったら困ると思い、僕は一度戻ることにした。


 幸い、家に戻ると、子うさぎたちは眠そうに目をこすりながら、起きてきたばかりだった。


「あ、おにいちゃん、おはよー」

「ホットケーキつくるんだよね?」

「わたし、あさごはんでたべたいのー」


 子うさぎたちの、のんびりとした声を聞いていると、心がホッと落ち着く。


「そうだね。でもね、一緒に作りたかったけど、僕ちょっと用事ができちゃったんだ。だから、今日は僕が作るから、また別の日にみんなで一緒に作ろうか」

「えー。たのしみにしてたのにー」

「おやくそくしたら、おにいちゃん、またあそびにきてくれるんだよ?」

「そっかー、それならきょうはがまんする」


 口々に言う子うさぎたちを見ると心苦しいけど、緊急事態だから仕方がない。

 そのあと僕は手際よくホットケーキを作ると、待っている子うさぎたちの前にお皿を置いた。


「食べ終わったらお話があるから、椅子に座って待っててね」

「はーい」


 僕は、美味しそうにホットケーキを食べる子うさぎたちをその場に残し、次の行動のための準備を始めることにした。


 街を確認した限りは、外から攻撃されたような様子はなかった。ラパンも疑っていたけど、多分これはゲームシステムの問題だと思う。

 だから、何もできない僕はログアウトするのが一番いいんだろうけど、できなかった。

 それなら、子うさぎたちを守り、ラパンたちを静かに待つのが、最善なんだと思う。

 けど、それもできそうにない。黙ってただ待っていることは、僕には無理そうだ。


 僕は、昨日寝る前に色々と考えていた。

 子うさぎたちを守りたい。この街を守りたい。リベラリアの世界を守りたい。

 僕にできることがあるはずだ。子うさぎたちを守りつつ、役に立てること……。


「まずは、子うさぎたちの当面の食事を確保する。そして、安全の確保のために、この家全体にバリアを張る。そのあと子うさぎたちに、誤魔化さずにちゃんと話をして……洞窟、ラパンたちの元へ向かう」


 僕がこれから行動に移すことを、確認のために口に出して言った。


 以前僕は少しの間だったけど、バリアを張ることに成功している。あれから練習して、もっと対象が大きなもので、時間も長くバリアを張れるようになった。

 こんな大きな家にバリアを張るのは初めてだけど、今の僕なら大丈夫だ。


「話があるんだ。よく聞いてほしい」


 次は、子うさぎたちに包み隠さず話をすること。

 いつになく真剣な僕に、子うさぎたちはピシッと姿勢を正して、真剣に聞いてくれた。

 子うさぎを子どもだからと思って適当なことは言わず、ちゃんと説明すれば無闇にこの家から出ないと思う。


「わかった! ぼくたち、まってる」

「おにいちゃん、おかあさんといっしょにかえってくるんだよね? おうちまもってるよ」

「ぼくたちにまかせて!」


 子うさぎたちは頼もしい言葉で、僕を励ましてくれた。こんなに小さくても、自分たちなりにちゃんと考えて、頑張ろうとしてくれている。

 僕も、頑張らなきゃ。


 子うさぎたちを家の中に残し、僕は外に出た。そして、みんなを守りたいと一生懸命念じた。

 すると、うっすら光が見え始め光の壁が形成されていき、家をすっぽりと覆うドーム型のバリアが完成した。


「やった。完成した……」


 大きなバリアを見ながら、僕はひとまずホッと胸を撫で下ろした。


 次は、移動魔法だ。

 初心者の部屋で、ルナさんに知識として教えてもらっただけの魔法。だから僕にできるかなんてわからない。

 けど、僕ならできる。きっとできる。

 ラパンの元へ駆けつけて、補助魔法をかけて援護したいんだ。 

 そのためには、是が非でも移動魔法を成功させなければいけない。

 

 僕は、大きく深呼吸をしたあと、手を組み意識を集中した。


「ラパン、今から行くから待っててね」


 ひたすら、念じ続ける。どんどん体が熱くなり、今までに感じたことのない力が、全身を駆け巡っているような気がした。


 そして、僕の意識は一瞬途切れた――。

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