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VRゲームの世界でキミを待つ  作者: 一ノ瀬麻紀


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28 伝え合う

「ラパン……?」


 まだ半信半疑な僕の呼びかけに、(すばる)さんは黙ってうなずいた。


「騙すつもりはなかったんだ。すぐ、本当のことを話そうと思ってた。……けど、シロが楽しそうにしてるのを見たら、どうしても言えなくなって……。それでも、嘘をついていたのは事実だ。幻滅されても仕方がない」


 泣きそうな顔をしながら、真実を告げている昴さんを見ていたら、僕は胸がギューッと締め付けられた。

 僕は、昴さんにそんな顔をさせたいんじゃない。いつものあの優しい笑顔を見たいんだ。


「――っ!」


 気づけば僕は、勢いのまま昴さんの胸に飛び込んでいた。

 驚いた昴さんが目を見開くのも気にせず、腕を回して、ぎゅっと抱きしめる。


「幻滅なんてしない! いつも、僕を守ってくれてありがとう――()()()


 現実世界で、昴さんにラパンの名を呼ぶのは不思議な感じだけど、昴さんがシロって呼んでくれたから、僕もそれに応えたいんだ。


「怒らない……のか?」


 頭の上から、戸惑った昴さんの声が聞こえたから、僕は顔を上げて昴さんを見つけて言った。


「怒るわけないよ。現実世界でも、ゲームの世界でも、ずっと僕を大切に守ってくれていたんでしょ? 感謝しかないよ」


 僕の病気が発覚してから、忙しい両親の代わりにずっとそばにいてくれた昴さん。けど僕は、心のどこかで申し訳ないっていう気持ちがあった。

 だけど、昴さんがラパンだとわかったから、自然とラパンと話すような口調になっていた。


「そんなふうに言ってくれて、ありがとう」


 僕が一生懸命に感謝を伝えると、昴さんは少し照れたように言った。

 目の前にいるのは昴さんなのに、いつもと違う話し方が照れ臭くて、僕もつられるように笑ってしまった。


「それにね。……なんか時々、昴さんとラパンが重なる時があったんだ」

「重なる?」

「うん。仕草とか、癖とか……雰囲気とかかな」

「そっか……」


 今日の昴さんは、どことなく不安げで、弱気になっているように見えた。いつもの『頼りになるお兄さん』じゃなくて、僕が『守ってあげたい』って思うような、そんな存在に感じた。

 完璧で、なんでもこなしてすごくカッコ良くて、頼りになるお兄さんの昴さんも好きだけど、ちょっと弱いところを見せてくれるような、人間味ある昴さんの方がもっと好きだな。


 僕は昴さんから体を離し、両手を取って指を絡めた。


「完璧でなんでもできちゃうかっこいい昴さんも好きだけど、今の昴さんの方が好きだよ」

「え? ……好き?」

「えっ?」


 僕は、自分が思ったままの言葉を伝えた。飾らず、正直な気持ちだ。

 けど……あれ? 好き?

 僕は、自分で言った言葉なのに、理解ができなくて戸惑ってしまった。


真白(ましろ)は、俺のこと……好きなの? 俺と同じ気持ちなの?」

「僕は……昴さんのことが、好きなの?」


 僕の口から出た「好き」って言葉なのに、昴さんからの問いかけに、質問で返してしまった。

 首を傾げて問い返す僕に、昴さんはぷっと吹き出した。


「真白、今のは無意識だったの?」

「無意識?」

「はは、真白らしくて、可愛いよ」


 突然、可愛いって言われて、僕の顔は一気に熱くなった。


「俺は、真白のことが好きだよ。現実でもゲームでもどこへ行っても、ずっと隣で見守っていたい」

「昴さんが、僕のことを……好き?」


 まるで、オウム返しのようにつぶやく僕を、今度は昴さんから抱きしめた。

 昴さんの腕に包まれて、僕は僕の気持ちを考えていた。

 昴さんが好き……。これは、身内として好きなんだと思ってた。僕が病気になって不安だった時、ずっとそばにいてくれた人への、尊敬の念だと思っていた。

 でも、違うのかな? 僕の本心は、昴さんのことを、恋愛対象として……好きってことなのかな?


 まだ自分の気持ちが整理できていない僕は、昴さんの温もりに包まれながら、いろいろ考えた。


「真白は、俺のことどう思ってる?」


 黙ったまま、何も言わなくなってしまった僕に、昴さんが不安そうに聞いてきた。昴さんの声は、かすかに声が震えているような気がした。


「多分、僕は……昴さんのことが、好きなんだと思います」

「多分?」

「僕、普通の人みたく、誰が好きとか、友達と恋バナしたことがないし、恋とかよくわからなくて。……でも、これからもずっと一緒にいたい。大切にしていきたい、そう思うこの気持ちが恋だというなら、僕は昴さんに……恋してるんだと思います」


 僕は、大切な言葉を一生懸命伝えようとしたせいか、また敬語に戻ってしまっていた。でも、僕の精一杯の気持ちを伝えるには、今まで昴さんに話していた言葉でいいんだと思う。


「……うん、僕は真白に恋してるし、真白は僕に恋してるね」

「そっか……僕は、昴さんに恋してるんですね」

「俺たち、両思いだな」


 僕たちは、二人で笑い合った。

 ずっと心の中に眠っていたこの感情が、恋だと気づくのに時間がかかってしまったけど、答え合わせができて良かった。


「僕、ラパンにもこの気持ちを伝えたいな」


 昴さんに気持ちは伝えたけど、ラパンにはまだ伝えられていない。

 ゲームの中での感謝と、僕自身が気づかないうちに、ラパンに想いを寄せていたと伝えたい。


「そのことについてなんだけど……」


 昴さんが、にっと笑って話し出した。

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