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VRゲームの世界でキミを待つ  作者: 一ノ瀬麻紀


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25 再会

 僕は無我夢中で魔法を念じた。

 何の魔法が発動されているのかわからなくなるほどで、僕の目の前には、炎と水と光が入り混じって、まるで水上花火ショーでも開催しているようだった。


 メチャクチャな魔法が足止めになったのか、ベアウルフが一瞬怯んだ。

 今だ、逃げろ!

 僕の中で警笛が鳴る。

 けど僕は、足がすくんでしまって、その場から動くことができなかった。


 どうしよう、もうダメだ――!


 そう思った瞬間、目の前のベアウルフはギャンっと鳴き声をあげ、光の粒となって消えた。

 ……あ、あれ? 前にも全く同じことが起きたような……?

 腰が抜けて立てなくなってしまった僕は、ゆっくりと後ろを振り返った。


「また、ベアウルフに襲われてるのか?」


 少し呆れたように言いながらも、表情はとても優しいその人は、さっと手を差し伸べてきた。

 ……ああ、ずっと会いたかった人だ。

 僕の鼓動はどんどん高鳴り、歓喜に満ち溢れた。


「ラパン……!」


 名を呼ぶと同時に、僕はラパンの力強い腕の中に飛び込んだ。


「一人にさせて、ごめんな。……手間取って、来るのが遅くなってしまった」

「寂しかった! 会いたくて、でも会えなくて、ラパンもユキもいなくて、僕一人で……」


 僕はラパンの腕に包まれていると実感した途端、今まで張っていた緊張の糸が、ぷつりと切れた。

 胸に熱いものが込み上げてきて、とうとう僕の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちた。


 僕一人でアイテムも作ったし、モンスターも倒したし……って自慢したくて頑張っていたけど、一人でもできるって思って頑張ってたけど、やっぱり僕は一人ではいられない。

 ラパンやユキと一緒にいたいし、(すばる)さんとも一緒にいたい。

 今回の出来事で、僕がどれだけ大切にされているのかもわかった。


 僕の中で、ずっと我慢していたものが一気に溢れ出し、声を上げて泣いてしまった。

 その間、ずっとラパンは、黙って僕の背中を優しく撫で続けてくれた。


 どのくらい泣き続けていただろうか。まだ鼻をずるずるとすすってしまうけど、だいぶ落ち着いてきた。


「どう? 少しは落ち着いたか?」


 ラパンは胸の中にいた僕をゆっくり体から離して、僕の顔を覗き込んだ。


「……うん」

「よしよし、よく頑張ったな」


 ラパンは、いつものように僕の頭をポンポンと撫でてくれた。

 ずっと聞きたかった声と温かい手の感触で、僕の涙腺はまた緩んでしまう。


「また……涙出ちゃ……う」


 必死に抑えようとするけど、また目に涙が溜まっていく。


「気にするな、思う存分泣けばいい。この広い草原には、俺たちしかいないからな」

「……草原!?」


 ラパンの言った言葉で、ここは街の外だということを思い出した。……ということは、まだモンスターに遭遇する可能性があるってことだよね? それに、ログアウトボタン消失のこともどうなったのか聞かないと!


「街に戻らないと! 僕、ログアウトできなくなったんだ!」


 ラパンに会えた喜びで忘れてたけど、今僕は大変なトラブルに巻き込まれている最中じゃないか。


「ああ、そのことなんだが……。病院には事情を話してあるから、大丈夫だ」

「え……?」

「エラーは解消したから、ログアウトしよう。……戻ったら、話がある」

「話って……?」


 僕は、ラパンの言葉の意図を汲もうと考えてみたけど、急な話で理解が追いつかない。

 ラパンは、ログアウトボタン消失のトラブルを知っていて、エラーも解消したからと言って、戻ったら話がある……?

 え、まさか……。


「ちゃんと話をするから、とりあえず一度街に戻ろう。メプさんのところに世話になっていたんだろう? 顔を出してから、ログアウトしよう」

「うん……」


 僕は戸惑いながらも、ラパンの言う通りだと思った。相手がNPCだとしても、ここリベラリアの世界でちゃんと存在して、僕たちと同じように生活している。お世話になったら礼儀を通すのは当然だよね。

 そのあと、ラパンの用意していた聖水でモンスターを寄せ付けないようにしながら、グリーンヒルへ戻った。


「おかえりなさ〜い。お家に帰れそうなのねぇ〜。よかったよかった〜」

「うむ、元に戻っておるな。今なら大丈夫じゃ」

「シロチ、お家に帰るの? 帰る前にモモチを抱っこしなさい?」

「シロ、僕のこと忘れてたでしょ……」


 メプさんのお土産屋さんに向かうと、お店の外で、メプさん、ユーアさん、モモチ……そしてユキが待っていた。

 サポートキャラのメンテナンスも、エラーのせいだったのか。

 僕はユキに向かって『おいで』と手を差し伸べると、ユキはぴょんっと跳ねていつものように肩に飛び乗った。そしてなぜか一緒になって、モモチもジャンプして僕の胸にダイブしてきた。


「ご心配をおかけしました。一度家に帰ってゆっくりしてから、また後日改めてご挨拶に来ますね」


 僕が深々と挨拶をすると、みんな口々に「シロが悪いんじゃないし」というようなことを言ってくれた。


「ユキ、明日はログインしたらすぐ呼び出すからね。……モモチ、抱っこさせてくれてありがとう」


 モモチを抱きしめながら、ユキをそっと撫でた。

 明日またログインできるかわからない不安を感じながらも、いつもと変わらない態度でみんなに挨拶をする。


「では、また明日よろしくお願いします」


 僕はそう言うと、パネルを出した。メイン画面の下に、ちゃんと『ログアウトボタン』を見つけた。

 みんなに見送られながら、僕はラパンと一緒にログアウトした。

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