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VRゲームの世界でキミを待つ  作者: 一ノ瀬麻紀


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01 サポートキャラ

 ラパンさんがスピードを落としゆっくりと歩き出したから、やっと僕は辺りをゆっくり見渡す余裕ができた。


「ほら、あと少しで始まりの街、グリーンヒルだ」


 ラパンさんの言葉に前方を見ると、草原の中の小高い丘の上に、街が見えてきた。

 街からは賑やかな声が聞こえてきて、少し離れた場所からでも活気があるのが伝わってくる。


「ようこそ、グリーンヒルへ!」


 ラパンさんが、僕をお姫様抱っこしたまま街の入り口まで近付くと、陽気な声が聞こえてきた。

 街の門番の猫獣人が、両手を広げて歓迎してくれた。


「あ、あの……ラパンさん、そろそろ降りたいんですけど……」


 ラパンさんは猫獣人に軽く手を挙げ挨拶をすると、そのまま街の中に入ろうとしたから、僕は慌ててラパンさんに声をかけた。

 足を怪我してるわけでもないし、このままお姫様抱っこされて街の中を歩くのは、さすがに恥ずかしいよ。


「ああ、そうだな」


 ちょっと困ったように言う僕を見て、ラパンさんは「ここでは、大丈夫だもんな」と小さな声でつぶやくと、ゆっくりと僕を下ろしてくれた。

 ここでは、大丈夫? どういう意味だろう……?

 僕はラパンさんの言葉が気になったけど、きっと、フィールドじゃなくて街の中まで来たから大丈夫ってことなんだろうな。


「じゃあ、とりあえずサポートキャラを登録しに行くか」

「はい!」


 サポートキャラってなんだろう? と思ってラパンを見たら、歩きながら説明してくれた。

 サポートキャラとは、常に一緒にいて、困った時など助けてくれるキャラらしい。……うん、言葉のままだった。

 ゲームに慣れている人や、そいうのが好きじゃない人は登録しないらしいけど、僕は初めてなので登録したい。


「シロは、なんのキャラがいい? ……シロはうさぎが好きだろ?」


 登録所の中に入ると、サポートキャラ一覧のパネルを見ながらラパンさんが言った。

 あれ? 僕がうさぎ好きだって言ったっけ?

 不思議そうに首を傾げてラパンさんを見たら、僕の耳に優しく触れた。

 なんて優しい触れ方をするんだろう。僕は敏感な耳を不意打ちで触られ、ドキドキしてしまった。


「アバターにうさぎを選ぶくらいだし、それに、ほらそれ、うさぎのキーホルダーだろ? 好きなんだろうなって思って」

「あ! そ、そっか。……なんで知ってるんだろうと思って、びっくりしちゃいました」


 僕は耳に触れられてドキドキしたのを誤魔化すように、あははっと笑った。


 僕は、アバターを選ぶ時に、キーホルダーをワンポイントに選んだ。

 現実世界でも、大切にしているうさぎのキーホルダーがあるんだ。


「うさぎのキーホルダー可愛いね」

「実際に、子どもの頃から大切にしている、うさぎのキーホルダーがあるんです。似てるなって思って」


 僕がうさぎのキーホルダーをゆらゆらと揺らしながら話をすると、ラパンさんは嬉しそうに微笑んだ。


「うさぎ選んでみるか?」

「はい」


 他の子も気になるけど、やっぱりまずはうさぎを見てみたい。

 僕がラパンさんに教えてもらいながらうさぎを選択すると、目の前にポンッと真っ白なうさぎが現れた。


「うわぁっ! 可愛い!」

「この子でいいなら選択して、両手を広げて待ってるんだ」


 画面には、『はい/いいえ』の選択が出ている。僕は迷わず『はい』を選択した。

 すると、目の前からパッと消え、僕の手の上にポスンと着地した。手乗りサイズの真っ白なミニうさぎだ。


「可愛い! もふもふ! 軽い!」


 僕は感動して目をキラキラさせ、うさぎをじーっと見つめたら、目の前のうさぎも僕をじーっと見つめている。


「シロ、名前を決めてあげるんだ」

「名前? え、どうしよう。真っ白でシロだと、僕と同じになっちゃうし」


 捻った名前を出せなくて困ってる僕を、ラパンさんはくすくすと笑って見ている。

 長すぎても呼びにくいし、シンプルがいいよね。

 僕は何度か頭をひねったあと、よしっと呼び名を決めた。


「えっと……ユキ?」

「ユキか。いい名前だな」

「はい、ユキにします。――ユキ、よろしくね」


 白うさぎに向かってそう言うと、ぴょこっと耳が揺れた。


「僕の名前はユキ。――改めまして、よろしくお願いします。サポートのユキです」

「あ、ご丁寧にありがとうございます。僕はシロです。よろしくお願いします」


 僕が両手の上に乗せたままの『ユキ』に向かってぺこりと頭を下げると、ユキも僕と同じようにペコっと頭を下げた。

 頭を下げるたびに、2人の耳がぴょこぴょこ揺れる。

 なんだか楽しくなっちゃって何度も繰り返していたら「可愛いな」という声が横から聞こえてきた。

 うん、ユキは可愛いよね。小さくてふわっとしてて、ずっともふもふしていたくなる。


「敬語じゃなくてもいいんじゃないか? 仲間として一緒に冒険するんだし」

「そっか。……ユキ、よろしくね?」

「うん、僕も敬語をやめて話すね。シロ、よろしくね」


 僕とユキは、またお互いにぺこぺこと頭を下げるから、耳がぴょこぴょこ揺れる。


「ねぇ、俺とも普通に話してよ」

「ええっ? で、出来るかなぁ。ラパンさん、よろしく……」

「さんもいらない。ラパンって呼んで」

「じゃ、じゃあ、……ラパン!」


 僕が意を決して呼び捨てにしたら、目の前でラパンさ……じゃなくて、ラパンはぷっと吹き出した。


「そんなに気合い入れなくても」

「だって、助けてくれた恩人、だし……」


 まだおかしそうに笑うラパンを見ながら、僕はちょっと口を尖らせた。


 ――とそこで、僕はあることに気がついた。

 さっきラパンは『仲間として一緒に冒険するんだし』って言ってなかった?

 僕の聞き間違えでなければ、まるで僕たちはパーティーを組んで冒険に出かけるみたいじゃないか。

 今日ログインしたばかりの僕にとっては、願ったり叶ったりだけど……。


 僕は様子を伺うように、チラッとラパンを見た。

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