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VRゲームの世界でキミを待つ  作者: 一ノ瀬麻紀


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17 病院に設置した理由

「うん、今日は大丈夫そうだね。けど、ゲームの中とはいえ、無理はダメだよ」

「はい。……ログインできなくなる方が嫌なので、無理しないで楽しみます」


 言われた通り大人しくお休みしたおかげか、今日の朝にはすっかり熱も下がっていた。

 朝の検温も、検査数値も問題なく、主治医の先生からログインの許可が下りた。


 結局、二日間ログインできなかったので、久しぶりのログインはちょっとドキドキする。

 けど、ゲーム内時間はオートセーブされた状態で止まっているはずだから、なんの問題もないはず。


 コンコン


 病室のドアがノックされた。こんな時間に誰だろう? 看護師さんかな?

 僕の両親は週末しか顔を出せないし、(すばる)さんが来るのは、いつもログイン前の時間だ。


「はーい」

「こんにちは、入ってもいいかな?」


 ドアの向こうから聞こえたのは、この時間に来るはずのない昴さんの声だった。


「あれ? 昴さん?」

「元気そうだね」

「今日はどうしたんですか?」

「今日は、仕事で来ているんだよ」


 昴さんはいつものようにパイプ椅子を持ってくると、ベッドの横に座った。


真白(ましろ)の他にも、リベラリアを体験している子たちがいるからね。データ収集のために、話を聞きに来たんだ」


 なぜ僕や入院中の子供たちが、病院というゲームとは不釣り合いな場所でVRゲームをしているかというと、昴さんの会社が関係しているんだ。


 僕のように自由に走り回れない子どものために、リアルVRゲームの世界で自由に動き回って欲しい。そんな願いを込めて制作されているのが、RPGタイプのフルダイブ型のリアルVRゲーム『リベラリア』


 今は試験的に、ここの子ども病院にVR機器を設置してもらい、子どもたちにどのような効果があるか調べていると言っていた。将来的には病院だけじゃなく、いろいろな施設で利用できるようにする計画らしい。


「僕もそうですけど、みんな前よりイキイキしている気がします」

「うん、そうだね。どうしても入院生活は気が滅入りがちだから。でも……」


 と、そこまで言いかけて、昴さんは言葉を飲み込んだ。

 どうしたんだろう? そう思ったけど、昴さんが飲み込んだ言葉は、きっと僕も感じていることだと思う。


 現実世界に戻ってきた時の、楽しさの影に隠された、虚しい気持ち――。


 どれだけゲーム内で自由に動き回っても、ログアウトした時に突きつけられる現実は、消すことはできない。

 それでも、やっぱりVRゲームを通して、前向きになっている子がほとんどだというのは、良い傾向なんだと思う。


「今日は、どうなの?」

「今日は先生から許可が下りました」

「良かった。じゃあ、またログインする頃に来るよ」

「毎日は大変じゃないですか? 無理しなくても……」


 僕は、毎日顔を出してくれる昴さんに申し訳ないといつも思ってたんだ。だから、僕なりに気を遣って言ったつもりだったんだけど、僕の言葉を聞いて昴さんが寂しそうに目を伏せた。

 少しの沈黙の後、寂しそうな表情のまま、昴さんは顔をあげて僕をまっすぐ見た。

 こんな表情の昴さんを見るのは初めてだった。


「俺が真白に会いたいから、毎日来てるんだよ」


 昴さんの言葉に、僕の心臓がドキンと跳ねた。

 どういう……意味だろう。こんな言い方をされたら、勘違いをしてしまう。

 これじゃあまるで、昴さんが僕のことを――。


「じゃあ、また後でくるね。しっかりと仕事をしてこないと」


 じゃあねと手を振ると、病室の外に出て行った。その表情は、いつもの昴さんに戻っていた。



 お昼ご飯も残さず食べ、体調の変化もなく、これなら大丈夫だと僕はログインするために支度をしていた。


 支度と言っても、本来は特に何もすることはない。病院着のまま、VR機器を設置している部屋に行き、顔認証をして入室。ドアにはプレートをかけて、使用中と分かるようにする。


 管理会社の方でも、異常があった時のために監視システムを稼働させてるけど、病院側でも把握できるようにしてあるらしい。


「今からログインします」


 モニター越しにそう言うと、マッサージチェアのようなVRマシンに乗り込んだ。まるでロボットアニメのコックピットに搭乗するシーンみたいだ。


いつものようにパネルを操作し、ログイン作業を進めた。


『ログインを確認しました。リベラリアの世界をお楽しみください』


 三度目となるログインの案内音声を聞きながら、手元のユキをきゅっと握りしめた。


 いつも手ぶらの僕だけど、今日は昴さんにもらったユキのぬいぐるみを連れてきた。

 一緒にログインしたら、本物のユキやラパンに見せてあげられるかもしれないと思ったんだ。


 AIアシスタントの声が遠のき、かすかな浮遊感を感じ、僕はリベラリアの世界に飛び込んでいった。

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