13 人助け
うさぎはわずかに時を止めた後、僕の顔を見て、肩に乗るユキの顔を見て、また僕を見た。
そして少し戸惑いながらも、遠慮がちに口を開いた。
「あ、あの……。お話を聞いていただいても、いいですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
うさぎは僕の返事を聞いて、自分の周りを見てから、はぁ……とため息をついた。
「夢中になって買い物をしていたら、持ち帰れないほどの荷物になってしまって……」
うさぎが見つめた先にある、荷物の袋の口からは、ぬいぐるみや瓶詰めのお菓子がはみ出している。
たしかにうさぎがこの量の荷物を一人で持ち帰るのは、無理かもしれない。
「浮遊カートのレンタルは?」
「浮遊カート?」
ユキが不思議そうに言うから、僕は聞き返した。名前から、なんとなく想像はできるなって思ったけど。
「魔法で浮いてるから、荷物を乗せて紐でひいて歩けば楽に運べるよ。しかも、使い終わったら自分で勝手に帰る優れもの!」
「へぇ! 自分で戻るのは便利だね!」
「カートの貸主が魔法をかけてるから、持ち主の元に帰るんだよ」
「うん、それなら体が小さくても大丈夫そうだけど……?」
僕はユキと会話しながら、問いかけるようにうさぎを見たら、しょぼんと項垂れてしまった。
「その、レンタル料を出せないほど、お財布の中身を使い切ってしまって……」
「あー……」
「お店の方も心配してくれたんですけど、手持ちがないとは言えず、迎えがくるからここで大丈夫と言ってしまったんです」
「なるほど……」
僕は状況を理解して、さぁどうするかと頭の中で考えを巡らせた。
さすがにこの量は、僕一人では持ちきれない。ラパンと二人なら分担できるけど……。合流するのを待つ? でもいつになるかわからないし……。
「それなら、僕が運ぶよ」
あれでもないこれでもないと考えると、ユキがそう言って僕の肩から飛び降りた。
そして、邪魔にならない場所を選ぶと、ボンッと大きくなった。しかも今回は、背中に荷台が付いている。
「ああ、そうだ! ユキは大きくなれるんだったね!」
「そうだよ〜。もっと、僕のこと頼りにしてくれていいからね?」
「ごめんごめん、普段は小さくて可愛いうさぎだから、すっかり忘れちゃってたよ」
「ふふ、僕可愛いもんね。それなら仕方がないか〜」
僕たちがこんなふうに、和気あいあいと笑いながらやりとりをしていたら、戸惑っているうさぎと目が合った。
「あ、ごめんね、説明しなくて。ユキは、サポートキャラなんだ。普段は小さいままでのんびり一緒に過ごしてるけど、いざという時はとても頼りになるんだよ」
「そうなの、すっごく頼りになるんだから! このくらいの荷物なら、余裕だよ!」
僕の説明と、自慢げにフフンとふんぞり返る大きくなったユキを見て、うさぎはふっと緊張していた表情が和らいだように思えた。
「……お言葉に甘えてしまっても良いのでしょうか?」
「もちろん、大丈夫だよ! ね? ユキ」
「まかせてーっ!」
僕たちの答えに、うさぎはホッとしたように見えたけど、でもその後すぐに再び表情が曇った。
「実は……この街の外なんですけど……」
「え……?」
「街の、外?」
僕たちは勝手に、『グリーンヒル』の中だと思っていた。まさか外だとは――。
僕とユキは顔を見合わせたけど、一度約束したことを、やっぱり無理だなんて言えない。僕はユキを見て無言でうなずいた。
「場所はどのあたりかな? あまり遠いなら、冒険の仲間がいるから相談しないといけないけど……」
「そんなに遠くないです。ここを出て少し進んだ場所にある、うさぎが多く住んでいる街『ホワイトバロウ』です」
「ホワイトバロウ? ユキ、知ってる?」
「うん、サポート契約していないときは、時々遊びに行ってた。グリーンヒルから北の方に向かうと森が見えてくるんだけど、その一角だよ。そんなに離れてないけど……」
ユキが知っている場所で、すぐそばなら、ラパンと合流を待たなくても大丈夫かな?
そう思ったけど、ユキが僕の耳元で囁いた。
「このあたりのモンスターは僕でも十分倒せるけど、荷物が心配なんだよね」
そっか。マジックバッグに入れれば、盗難の心配もないし、落として壊してしまうこともない。
でも、初めて会った人のマジックバッグに、自分の持ち物を仕舞うことに、抵抗はないだろうか。
僕はうーんと考え込んだ。どの方法がベストなんだろうか。
「でも、遭遇しても、僕が一気に駆け抜ければ大丈夫だと思うよ」
「ユキがそう言うなら……」
僕がリベラリアを始めたのは昨日で、ユキと会ってからまだ二日目だ。けど何故だろう、ユキを信じて任せても大丈夫だっていう、安心感があるんだ。
「じゃあ、決まり! シロ、僕の背中の荷台に荷物を乗せて。終わったら、前に乗ってつかまってね」
僕はユキに言われた通り荷物を乗せ、うさぎさんには手元のカゴに入ってもらった。
ユキは大きくなれるだけじゃなく、荷台をつけたりちょっとしたカゴをつけたり、便利機能搭載という感じだ。
「しゅっぱーつ!」
元気よくユキが声を上げると、ゆっくりと進み出した。




