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【完結】愛の導  作者: 瀬名柊真
二十章 死が二人を分かつても

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side沙良

 幼い頃から夢に見ていた豪華なホワイトチャペル。ずっと、叶わないと思っていた。だが、今は豪勢すぎるほどのドレスに身を包み、バージンロードを歩いている。エスコートしてくれるのは、拓海の父、響也だ。

 準備をするときに、拓海が少しだけ残念そうに言っていたのを覚えている。


「沙良のお父さん、生かしておけばよかった」


 普通は自分の父親がエスコートするのに、拓海の所為でそれが叶わないからだろう。だが、沙良はそれでも良かった。エスコートなんてされなくても、拓海がいるからどうだって良いのだ。

 ヴェールを被ったままゆったりと歩を進める。全く面識のない重鎮たちが沢山いる所為で気を休めることすら出来はしない。

 そのうち小規模で二人だけの結婚式を開いてくれないだろうか。なんて思いながら歩いていると、あっという間に拓海の下へ辿り着いてしまった。

 かっこいい。

 白いタキシードに身を包み、いつもとは違って前髪を上げている所為か、ひどくキラキラとして見える。此処にきて初めて知る側面だった。

 それは拓海も同じようで、沙良のことを見た後、何度も瞬いていた。それから今にも泣きだそうな笑顔を浮かべて、小声で「綺麗だよ」と言ってくれた。

 それだけで今までの人生が全てこの日のためだったような錯覚すら覚えてしまう。

 二人で神父様の前に立ち誓いを立てる。


「病めるときも健やかなるときも愛することを誓いますか?」


「はい。誓います」


 沙良たちはもう証明している。病めるときにだって愛せることは。今更こんな誓いなど改だってやる必要は感じないのだが、仕方ない。

 いるかも知れない神様にそっと願う。どんな時も一緒に入られますようにと。死ぬときも一緒がいい。

 それから、証明書に名前を書いた。先に拓海が書いたから、沙良が書くときに少しだけ拓海の字を見れた。今まで何度も見る機会があったが、大して興味がなかったし、見ていなかったから、拓海の字だと思って読むのは初めてだ。

 細くて繊細な字。こんなにきれいだったか。

 こんなことならば、置き書きのメモを保管しておくべきだったと後悔した。そう考えるあたりは拓海が伝染ったのだと思う。

 そこからは指輪を互いに嵌め合い、誓いのキスを交わした。ヴェールを外されたときに、真っ先にはっきりと見えるのが拓海なのが、これ以上無いほど幸せだった。これで、此処にいる人全員に、沙良は拓海のもので、逆もまた然りだということを見せつけれているのだと思うと、大勢がいるのも悪くないと思った。

 式が終わると、今度は披露宴に移った。場所もチャペル内からガーデンになるので、先に移動をする。

 そこそこの距離があるため、拓海と二人で車に乗っていった。勿論、運転手は一緒にいるが。

 後部座席に乗り込むと、その横に拓海が座る。実に、一緒に車に乗るのは初めてのことだ。

 あの日から約十年が経過した。挙式するのが遅いのではないかと思わなくもないのだが、拓海は曰く、「社長になってから挙式がしたかった」らしい。理由は、多くの人が見て、同意してくれるから。なんとも拓海らしい理由だ。

 あとは、戸籍云々も色々とあったらしい。鈴海沙良のままでは行方不明者なので結婚をするのが難しくなる。そのため、新たに施設に預けられていたという体で、「ただの沙良」をつくっていたそうなのだ。

だから、沙良は結婚するまでは名字なしという扱いになっていた。当然、会社で結婚を発表した際には周りから少々ブーイングが飛んだらしい。しかし、それは響也が鎮火してくれたようだった。

 数分もすると、車はガーデンに到着した。

 きれいなガーデンだ。緑が生い茂り、花が咲き乱れている。中に入ると、白のカトラリーセットが用意されていた。

 まるで、一種の茶会のようだ。茶会と違って、席に置かれるのはコース料理等だが。

 ガーデンの奥の方に行くと、着替えスペースが用意されている。挙式と披露宴ではドレスを変えるからとのことだ。ペアルックなどをする新婚さんもいるようで、此処でのドレスを選ぶときにはどうしようかと二人で悩んだ。

 なんとか決めきったドレスに着替えていると、遠くの方から大勢の話し声が聞こえた。きっと、皆が披露宴会場に来たのだろう。そろそろ着替えきらないといけない。


「沙良?大丈夫そう?」


 先に着替え終えたのであろう拓海が声を掛ける。早くその姿を見たい。


「うん。後ちょっと」


 言い終えると同時に、後ろについているチャックを引き上げてもらい完成。鏡に映る沙良は綺麗な真紅を身に纏っていた。

 最初は似合わないと思っていたのだが、こうしてみると意外によく似合う。拓海にも見てもらおうとドアを開けた。

 ドアが開いた瞬間、二人は同時に驚いた顔をした。

 相手のあまりの美しさに惚ける他なかったからだ。


「沙良。すごく可愛い。誰にも見せたくない……」


「拓海の方こそ、かっこよすぎる……。皆、拓海に釘付けに違いないよ」


 先に褒めたのは拓海の方だった。遅れて、沙良も返事にならない返事をする。本当、卸し難いほどにかっこいいのだ。

 拓海が纏っているのは、沙良よりも少し深い赤。沙良が選んだものだ。想像通りよく似合っている。黒に近いため、あまり目立たないかもしれないが、それくらいの方が良い。

 それに、これが一番拓海らしい。拓海が沙良を想ってこのドレスを選んでくれたのと同じように、沙良も拓海を想って選んだものだ。

 だから、素敵に見えるのも致し方ないことなのかもしれない。

 互いが互いに惚れ惚れとしながら、腕を組んで披露宴会場へと戻る。一体、どんな目で見られるのだろうか?感嘆と、称賛、祝福が待ち構えているに違いない。

 そう思うと、無意識のうちに足取りが軽くなった。

 拓海も同じ気持ちなら、尚嬉しい。だが、仄昏いのを見る感じ、嫉妬のほうが勝っていそうだった。それでも、嬉しいことに変わりはないが。

 披露宴での必修部分がすべて終わると、挨拶回りになった。本来はやらなくても別に構わないし、次のパーティで良いのだが、拓海がどうしても今日したいと言い張ったのだ。


「一ノ瀬くんおめでとう。一ノ瀬くんのような人の妻になれて、嬉しいだろうね」


「しゃちょー!俺まだ結婚してないのにズルいですよー」


「本当にめでたいね。今後も二人で頑張ってほしい」


 そんな祝福がたくさんもらえた。二人目は少々祝福か怪しいが……。

 それを貰うたびに、拓海も沙良も二人して喜悦した声で礼を述べたものだ。

 これから先、これ以上の幸せが続くんだ。

 そう考えると、これから先の未来が楽しみで仕方ない。

 景気づけにとエテルノを飲み干した。

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