12月31日①
「人類史を一言で表すなら?」
「そりゃあもちろん、争いの歴史でしょうよ」
「なるほどねぇ。シッキーは争いの歴史って捉えてるんだ」
「そら共テ対策で嫌になるほど歴史やってきましたからね、そうも捉えちゃうよ」
2023年12月31日深夜、俺、式波環は、級友の一条とこんな他愛もない話をしながら、初詣に行くために神社へ向けて自転車を漕いでいた。初日の出の前には例年渋滞が起きるほど混雑する神社への道も、この時間帯では寂しさを覚える程に閑散としていた。
「争いといえば最近は物騒な世の中になってきたよね」
「世界各地で紛争は起きるわテロは起きるわで平沼騏一郎が聞いたら目ん玉飛び出すレベルだよな」
「最近だと地震も増えてきたよなぁ」
「幾分マシになったが感染症もひどかったしね」
「今はクソ寒いし、夏はゲボ暑いしな」
「ほんとに、地球どうなっちゃうんだよ」
そんな、大晦日にふさわしくもない杞憂話をしていると、石造りの階段が見えてきた。
「着いたな」
「まだ11時半にもなってないか。予定よりも早く来れたな」
「それにしても寒いね〜」
「さすがに真冬の深夜だからね。自販機でなんかあったか〜いものでも買うかい?」
「シッキー、それ妙案だね。ここら辺自販機あるっけ?」
「境内行けばさすがにあると思うよ。とりあえず上ろうぜ」
コーヒーもいいがここは甘酒か?いやいや冬といえばおしるこも捨て難い……
コーヒーならば家でも飲める。甘酒は日が出てから縁日で買えるだろう。ならば買うのは……
なんて呑気なことを考えながら、少し段差の大きい階段を上り始めた。
「あ、蛍。」
そう呟きながら一条は右を指した。そこには青白い光があった。ふよふよと揺れる光。小さく、息を吹きかければ消えてしまうのではないかという程に儚い光。見ていると吸い込まれてしまうよな、そんな光。
「千葉の田舎にもいるもんなんだな」
「お、こっち来たぜ。縁起良さそうだしこれは入試受かったか?」
「今年の最後にいいもん見れたな」
「やべ 、声でかかったな。帰ってったぞ」
「あっちの方行けば沢山いるんじゃないか?まだ年越しまで時間あるし少し見てこようぜ」
「シッキーまたまた妙案だね。栄西も褒める位には妙案だよ」
「そうと決まれば行きますか」
小丘の上に建ったこの神社は木々で囲まれており、階段でしか行けないようになっている。その階段も手すりなどはなく、簡単に雑木林の中に入れるようになっている。確か夏祭りの時なんかはいちゃついたカップルで混雑していただろうか。そんな雑木林に俺達は足を踏み入れた。
冬の雑木林では動物も冬眠しているので特に怖が不安るものはなかった。そう、冬に蛍は出ない。
閲覧ありがとうございます!
文字数は少ないわ投稿頻度は遅いわでまぁひどいですが、なんとか温かい目で見てくれると幸いです
失踪するつもりは毛頭ないので、完結までどうかお付き合いください
ではまたお会いしましょう