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第31話 [無生物テイマー、魔女の力を見る]

 やっと終わった。終わったと思ったのになぁ……!


「んだよアレ……!!!」


 死体が集まった次には、目に見えない何かが集まりだした。だが、歪な怪物が生まれるわけではなく、ローブを被り大鎌を持つ巨大な人が出来上がっていた。

 不気味な存在だがどこか神々しささえ感じる存在。まるで神のような……。


「ど、どうするのアレン!? ってか何よあれ!」

「知るかんなもん……」

「……せっかく終わったと思ったのに……」


 どうする? いや、どうすると言っても、もう何もすることはないか。なんのしようがないのだから。

 3人とも満身創痍。体力マックス状態でもコイツに勝てる自信はない。負け試合だ。

 あのリーダーが言ってた最後の切り札ってわけか。ラストなだけあって飛んでもないのを残していきやがったな。


「これもまた仕方ないってやつなのかなぁ……」


 ローブを着た神らしきものは大鎌を優しく振り、ゆっくりと俺たちの命を狩ろうとする。その瞬間だった。


「――【(ディメンシ)ノ鉾(ン・ブレード)】」


 ――キンッ。


 大鎌が真っ二つに切断され、俺と神らしきものの間に見慣れた人物がいた。

 青のメッシュが入った黒い長髪、とんがり帽子、異質なオーラ……。そう、我らがギルマス、ソフィが目の前にいたのだ。


「ソフ――」


 嬉しくなって声をかけようと思ったのだが、俺は声を喉から出すことができなくなった。異質なオーラだ……いつもより、何百、何千、何万倍も違う。

 ――ど怒りだった。


「アレンくんを……ニヤちゃんを……こんなにボロボロにして……。しかもアレンくんにつけた蘇生装置壊して……! 絶対に許さない……!!!!」


 ……俺が死にかけたのはさっきの死体の集合体みたいなやつだ。だがソフィはアイツがやったと勘違いをしているみたいだな。なんかごめんな神みたいなやつ! 怒りの矛先そっちに向いちまったよ!

 というか、俺が生きていたのはソフィのおかげだったらしい。あとでお礼をしなければならないなぁと思った。


 少したじろぐ神らしきものは、ソフィの威圧感に圧倒されている。


『……【狩魂】……』

「私に効くとでも? 【範囲結界・剛】、【超新星スーパーノヴァ】」

『……!!!』


 ソフィは相手を結界に閉じ込め、その中を大爆発させた。爆風や衝撃はこないものの、じんわりと透けて見える結界内からその威力は計り知れないものだと感じる。

 爆発後に結界が消滅するが、神らしきものはボロボロになりながらも姿形をとどめていた。


「……神は神ってことなのかな。存在があやふや。じゃあ……存在すらも消すスキルで抹消するだけ」


 ソフィは俺たちに近づき、宙に浮かして自分自身に近づけていた。


「3人とも、私から絶対に離れたらダメだからね」


 手のひらをむこう側にかざして、一言呟く。


「――【◾︎(ブラックホール)】」


 手のひらから小さい漆黒の球体が現れる。そして次の瞬間、その球体は空気を吸い込み始め、次々と木の枝や小石を吸収していく。しかしそれだけにとどまらず、大岩を持ち上げ吸い込み、木を引っこ抜き吸い込み、さらには大地を抉って地面をも吸い込み始めた。


『!!!!』


 人智を超越した存在であろう神。

 しかし、その神が逃げ出そうとしていた。ソフィに、人間に恐れをなして。ソフィはまさしく異端な存在だ。神にも対抗……いいや、()()()()存在。


 そんな人と俺が同類らしいが、今この状況を見て信じられなかった。


 神らしきものは漆黒の球体に吸い込まれる。ここまでくると、逆に可哀想にも思えてきた。


「ふぅ……」


 球体を無くし、息を吐くソフィ。

 だが全てが終わった頃には、直径約一キロの空間が消滅していた。


 これが厄災の魔女(カラミティ・ウィッチ)の力か……。

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