第11話 ［無生物テイマー、聖騎士と戦う］
「【召喚:剣・火】」
真っ向から真剣勝負したら、結果なんて言うまでもなく惨敗してしまうだろう。奪った剣士という役職もまだ使い込んでいないし、聖騎士とじゃ格が違う。
だから持ってるもん全部と、使えるもん全部を駆使してやる。
「はぁあああ!!」
騎士は腰に携えていた剣を鞘から抜き、こちらに走ってきている。実に勇猛果敢で絵になる姿だが、俺はそんな馬鹿正直なことはしない。
右手では召喚した剣を握りしめ、左手を地面に当ててこう呟いた。
「【槍生成】」
「っ！」
地面から土の槍が植物のように生え、騎士の行く手を阻む。さらに火を飛ばし、リソースをそちらに割かせる。
その隙にテイムしておいた革靴でいつもの倍のスピードで移動し、騎士のすぐ真横まで着いた。
「【袈裟斬り】！」
「くっ！ 【光薙】!!」
「クソッ！」
槍も火も御構い無しに剣を回転させて振るい、俺が持っていた剣が弾かれて宙を舞う。
新しい武器を召喚するか一瞬のうちに迷ったが、諸率が高くなる可能性を試してみることにした。
手を騎士の持っている剣にかざす。
「【使役】……！」
――バチンッ!!
弾かれた。テイムできなかった。
なんの条件がダメだったのか。俺がテイムした剣や盾との違いは？ まだ何もわからない。
そんなことより、眼前に騎士の剣が迫ってきている。避けられない。何かしなければ。打つ手は何がある？
「（賭けばっかりの戦いだな……！ 耐えてくれよ！）」
俺は拳を握りしめ、【鉄拳】を発動させる。その上から【強靭化】を重ね、剣に向かってその拳を振るった。
ガギィィンという金属音が耳に響いてくる。
「はっ！ 危ねぇなぁ……!!」
「何ですって!?」
剣はなんとか防ぐことができたが、血がたらりと滴り落ちている。後少しでも剣の切れ味が良かったら、威力が高まっていたら。そう考えるだけで右手がゾワゾワしだす。
剣を拳でなぎ払い、一旦距離を取る。
「貴方、何者なの。さっきの構えは明らかに剣士だった。けれど槍を生成したり、拳術を使ったり。さらには物を勝手に動かすだなんて」
「そう易々と答えると思うか？ 相手のこと知りたきゃ自分から説明してくれよ。マナーがなってねぇぞマナーが」
「どの口が……！ 罪を犯しす分際でワタクシにマナーを問おうとするなんて！」
犯罪……してねぇよ。思い込みって怖いなぁ。勝手な自己解釈でここまで感情的になれるなんて。反吐が出るほど哀れだ。
盾を召喚し、【強靭化】で強化をしておく。さっきは明らかに手加減をしてくれていたが、なんだか怒ってそうな予感がするので本気で殺しにかかるかもしれない。
一触即発の空気。
そんな中、たった一瞬だけ瞬きをした途端、目の前に騎士の姿があった。
「やば――」
「【光撃】!!」
剣を下から上に振り上げて攻撃してくる。俺は反撃の余裕さえ無く、ただ盾でカードをすることしかできなかった。
世界が真っ白になるほどの眩い衝撃で盾は破壊され、さらには俺の体は木々を飛び越えて空中に放り出される。
「ッてぇ……！ やっばいな！ ってかなんでこんな空中まで飛んでこれんだよ化け物が!!」
地上数十メートルだというのに、騎士はジャンプして俺のところまで向かってくる勢いだ。
空中ならば身動きできず、なす術無し……。とでも思っているのだろう。
俺がさっきテイムしたものを忘れているな。
「【召喚:岩】!!!」
さっきテイムした巨大な岩石が手のひらから現れ、騎士の姿を飲み込んで地上まで落下した。
おそらく革靴やらズボンやらをテイムしてなかったら骨がポックリ逝ってただろう。それくらいの高さからな落下だった。
「はぁぁ……。んで？ 空中で身を捻って避けた化け物さん、今度はどうするよ」
「こんな物まで自由自在に操れら貴方も化け物だと思うけれど」
剣はもうそろそろ壊れそうだし、盾は壊された。火は辛うじて避けて生き残っているが、岩も次落下させたら崩壊しかねない。
騎士の剣がテイムできなかった以上、役職もおそらくテイムできないだろう。
さて、この状況をどう乗り越える。
「（【奪取】でアイツからなんかを奪ったらテイムができるか……？ でもそんな隙もう見せてくれねぇかもな……）」
思考を巡らせるが、有効打は全く見つからない。スキルと有効な物がまだ全くテイムできていない。
「終わりよ」
腰を低くし、剣を構える。刹那、世界が真っ白になって一筋の痕だけが見えた気がした。
「【光芒一閃】」
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