第三話 夜の森でのトラウマ
俺は、四歳になった。
おじいさん曰く、魔法はいつからでも使えるようなので、おじいさんから魔法も習っておく。おじいさんは、まるで呼吸をするように魔法を使うが、やってみると、これが地味にムズイ。ちょっとでも魔力の調整を間違えると凄いことになるし、怖気付いて魔力を出し損じると、全く出ない。でも楽しい。
戦闘術の方は、ほぼ応用に入って来ているが、いまだにおじいさんからは一本も取れていない。狂狼だった頃の俺はどこへ…
… さて、ここで一つ疑問が生まれる。
ーーおじいさんって何者なんだ?ーー
おじいさんに聞いてみても、
「わしはただの隠居老人じゃよ」
と、笑いながら答えるだけで、はぐらかされる。 おじいさんって実はすごい人なんじゃないか?
最近は、そんなことを考えながら過ごしている。
*
ついに五歳になった。転生してからもう5年か…色々と楽しすぎてあっという間だった。
魔法も、中級までなら使えるようになったし、あと少しでおじいさんから一本も取れそうだ。おじいさんも、俺の成長スピードに驚いていた。
今俺は、夜の森にいる。身体強化魔法に、体を慣らしていくためだ。やはり、人の身体能力を一度に上げるにも限度があるので、体に身体強化を馴染ませなければ、いざ身体能力を上げるときに、身体能力を上げすぎて骨が折れる、なんてことはザラにあるのだ。
「とりま、3倍くらいかなー」
なんて、軽〜い感じでジャンプ。
次の瞬間、俺は森を上から見下ろしていた。 ...上から?
「あ」
やばい。 そんなことを漠然と考えている間にも、俺の体はゆっくりと落下していく。
? なんでゆっくり? と思った瞬間、落ちる速度が急速に上がった。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
まずい、まずいまずいまずい、やばい死ぬ!
ドゴォォォォン!!!
痛っ…くない? 死んで……ない…のか?
「よかった…」
とりあえず安心する。でも、あの高さから落ちて、なんで死んでないんだ?
ーー手を見ると、手が黒くなっていた。
「えっ?」
なんだこれ? 病気か? 病気だったらおじいさんがーーーー
などと思考を巡らせていると、手はだんだんと肌色に戻っていった。
今のは一体なんだったんだ?
この日はとりあえず帰って、後日おじいさんに聞いてみることにした。




