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祖父の秘密と不倫で宿った命の行方は?
少し金属質な声でキャビンアテンダントがサイパン空港への着陸態勢に入ったことを告げると、眼下にティントレットの天井画のような青色の海が広がってきた。
右隣席の祖父重吉を見ると、眠っているのか瞼は閉じられている。
◇
■回想シーン
その横顔を見ながら、優子はサイパンまで来ることになった2週間前の祖母初子の葬儀のことを思い出した
「サイパン島まで連れてってくれないか?」
重吉からきりだされたのは、火葬場の待合室だった。
なぜ行きたいのかと問うと、終戦前にサイパンで家庭を持ち、子供がいたことなどを訥々と語り始めた。
◇