第17話 サゲツサイ
マサムネが陣容を強化している頃、この日タダスケの元に一人の男が訪れた。初老の男で、男の名はサゲツサイ。タダスケの元で戦場に内政に外交に多種多様な場所で獅子奮迅の働きをするタダスケがもっとも信頼をおく家臣だ。
タダスケはサゲツサイの来訪を聞くと直ちに人払いをしタダスケの私室へと案内した。
タダスケ『おお。よくきてくれた。サゲツサイ。息災そうで何よりだ。』
サゲツサイ『殿もお変わりなく。』
タダスケ『そこに座ってくれ。まずは一杯やろうではないか。』
サゲツサイ『はっ。』
タダスケはサゲツサイに酌をする。
タダスケ『さあ飲め飲め。』
サゲツサイ『はっ。いただきまする。』
サゲツサイはマサタカの酌を受けマサタカにも返酌をする。
タダスケ『こうして二人で飲むのも久しいな。』
サゲツサイ『はっ。懐かしゅうございます。』
二人は昔話に華を咲かせながら酒を飲み交わした。酒が進んだ頃タダスケは一つのことを切り出した。
タダスケ『なあ。サゲツサイよ。お主から見てマサムネの統治方法はどうみる?』
サゲツサイ『マサムネ様のですか。』
マサタカ『遠慮はいらん。私とサゲツサイの仲ではないか。』
サゲツサイ『……。私どもでは思いつかぬ政策をやっております。特に税金を減らし、人を呼び込むなどなかなか出来ることでは在りますまい。』
マサタカ『ふむ。ではやはり跡取りはマサムネの方が相応しいと思うか?』
サゲツサイ『はい。代々我が国では長兄が跡を継ぐものと決まっておりますので。それを曲げるわけにも参りますまい。』
マサタカ『……分かった。サゲツサイよ。お主はマサムネの元へ行ってはくれぬか。』
サゲツサイ『……。といいますと?』
マサタカ『マサムネの人となり、また住民からの評価などが聞きたい。』
サゲツサイ『私にマサムネ様が跡取りに相応しいかどうか調べろ。と言うことですね。』
マサタカ『……。お前にしか頼めん。やってくれるか?』
サゲツサイ『……。分かりました。殿のご命令とあらば。』
マサタカ『頼む。』
~ワタリマサムネ屋敷~
屋敷にてマサムネはコタロウからの定時連絡を読んでいた。コタロウにはイロハの護衛とマサタカの動きを監視し定期的に連絡するよう伝えていた。
マサムネの執務室にはコジュウロウ、ハンベエが文官からの報告や献策などを聞いたり指示を出していた。
コジュウロウ『コタロウ殿からはなんと?』
マサムネ『うん。数日のうちにサゲツサイがここにやってくるらしい。』
コジュウロウ『サゲツサイ様が!』
マサムネ『大方、父上に頼まれ俺の様子を見に来るのだろう。』
ハンベエ『どうなさいます?』
マサムネ『兎に角歓待してやろう。だが、サゲツサイは油断ならない男だ。油断だけはしないようにしなくてはな。』
コジュウロウ『はっ。』
マサムネ『詳細はコジュウロウに任せる。失礼の無いようにな。』
コジュウロウ『畏まりました。』
数日後
サゲツサイはワタリとの境目にきていた。
サゲツサイ『この辺は山賊などがでて荒れ放題になっていたというのに……。綺麗に整備されている……。』
マサムネは領主着任後手を着けたのは街道の整備だった。山賊が横行し荒れ放題となっていた場所には討伐隊を送り討伐したり投降したものは自軍に取り入れ強化したりしていた。
少し歩くと兵を伴った1人の男が立っていた。
サゲツサイ『何者か?』
ハンベエ『サゲツサイ様ですね。私はマサムネが家臣ハンベエと申します。主の命にてお迎えにあがりました。』
サゲツサイ『そうか。大儀である。』
ハンベエ『有り難き御言葉。ではご案内いたします。』
二人は歩き出す。
サゲツサイ『この辺は山賊が跋扈し大変治安が悪い場所だと思っていたが。ずいぶんよくなっているようだな。』
ハンベエ『マサムネ様はまず治安回復のために山賊討伐に乗り出されましたから。ワタリの地で山賊をしようとする輩は今や御座いません。』
サゲツサイ『そうか。』
しばらくいくと数人の人影が見えてきた。
サゲツサイ『ん?あの人影は?』
ハンベエ『おお。我が主自らがサゲツサイ様を迎えに参られたようです。』
サゲツサイ『!!』
サゲツサイは急いでマサムネに駆け寄る。
マサムネ『おお。サゲツサイ殿お待ちしておりましたぞ。』
サゲツサイ『マサムネ様もご健勝そうでなりよりでございます。』
マサムネ『もうすぐ我が屋敷で御座いますればごゆるりとされよ。』
サゲツサイ『マサムネ様のご配慮感謝いたします。』
こうしてサゲツサイはマサムネに歓待される形でワタリに入った。