第16話 マサムネの統治策③内政編
人集めたマサムネは館に皆を集めた。今後の方針を語るためだ。館には、コタロウから交代したコジュウロウ、ハンベエ、カツイエ、トウキチロウ、シゲザネの五名がマサムネの執務室に集まった。執務室には人払いされ、中にはマサムネとコジュウロウ、ハンベエの三人がいた。
マサムネ『皆よく集まってくれた。』
カツイエ『殿のお呼びとあれば何時でも駆けつけますぜ。』
トウキチロウ『そうですよ~。こんな僕たちを取り立てて貰えたのですから。』
シゲザネ『いつでも、何処でも駆けつけますぜ。』
マサムネ『皆の忠義うれしく思う。』
カツイエ『で、何のご用で?』
マサムネ『お前たちに今後、我らがどう動くか伝えようと思ってな。』
コジュウロウ『今後の話だ。』
マサムネ『その前に俺の秘密を一つ明かそうと思う。これは、コジュウロウにも話していなかったことだ。』
コジュウロウ『私にもですか?』
マサムネ『この事を知るのは我が父とイロハだけだ。そしてそれは我々の今後のことに繋がる。』
コジュウロウ『……。』
マサムネ『お前のことを信用していなかったわけじゃない。幼少期の頃からの付き合いだ、分かってくれ。』
コジュウロウ『はっ。』
シゲザネ『で、マサムネ様の秘密とは?』
マサムネ『俺は女だ。』
全員『『『……。えーっ!』』』
マサムネ『父タダスケに跡取りが出来なくても俺を嫡男として育てた。』
コジュウロウ『なんと……。』
マサムネ『だが俺を生んでくれた母が死に、今の母上トダ御前が後釜に座ると弟のマサタカが生まれた。おそらくだが父と母はマサタカを跡取りとして考えているだろう。俺のワタリ赴任も跡取りだからとは聞こえはいいが、中央から引き離す口実だったかも知れん。』
カツイエ『マサムネ様はどうなるんで?』
マサムネ『このままこの地に閉じ込めておくか、父の下を訪れた瞬間に殺されるか。』
コジュウロウ『もしくは謀反人としてこの地で住民諸共皆殺しか……。』
カツイエ『ま、まさか~。』
マサムネ『コジュウロウが言っていることも間違いではない。』
シゲザネ『……。このまま黙っているのですか?』
マサムネ『いや力を蓄え時を待つ。』
ハンベエ『時ですか?』
マサムネ『ああ。マサタカの元服の儀終了後に何かしらの動きかあるだろう。』
ハンベエ『動きとはまさか。』
マサムネ『そのタイミングでマサタカが跡取りだと発表をし、イロハを婚約者と発表する…。』
カツイエ『まさかそんな。』
マサムネ『恐らくは俺が女とも言うだろう。だが俺が待っているのはその時だ。それを期に打倒タダスケの兵を挙げる。真の跡取りは俺だとな。その後はダンジョウを倒し天下の覇権を握る。難しいが出来ないことではないと思っている。長い道のりだが、皆と力を合わせれば出来ないことではないとではないと思っている。』
カツイエ『天下取りですか!おもしれぇ!』
シゲザネ『一生あなたについて行きますぜ!』
トウキチロウ『ぼ、僕もついて行きます!』
マサムネ『うん。三人にはゆくゆくは一軍を任せられるぐらいにはなってほしい。』
カツイエ・シゲザネ・トウキチロウ『『『はいっ』』』
カツイエ『これからどうするので?』
マサムネ『今言ったとおり動きがあるのはマサタカの元服の儀式の時だ。それまでは領地を整備し、兵を鍛え、力を蓄えながら時を待つ。』
カツイエ『しかしイロハ様はどうするので?』
マサムネ『イロハにはコタロウを付けてある。コタロウに任せていれば問題ないだろう。』
トウキチロウ『では我らはなにをすれば?』
マサムネ『まずは町の整備を進める。農業はワタリは盛んだからひとまず街道を整備し、人を集める。』
コジュウロウ『しかし国境が近い領地なので人集まりますか?』
マサムネ『店を出しても魅力のある物にすればいい。例えば今まで取っていた場所代の免除、国の税金を6公4民から4公6民変える。初めはきついだろうが、人が集まればだいぶ軽減されるはずだ。また農民達の収める年貢もその年の取れ高で決めれば問題は解決するだろう。』
ハンベエ『それに関しては私に愚考が御座います。』
マサムネ『?何だ言ってくれ。』
ハンベエ『農民たちや町人達は戦になる度に兵として駆り出され生産力が落ちてしまいます。そこで、完全に戦を専門とする者と農民や町人と分けます。戦をする者たち戦の事だけを考えて練兵、鍛練をしていれば、は一度に動員できる数は限られますが精鋭化が計れるでしょう。』
マサムネ『なるほどな。兵脳分離という奴か。よしその案を採用しよう。すぐに取かかるぞ。』
コジュウロウ『はっ。』
マサムネ『練兵は、シゲザネ、カツイエ、トウキチロウも参加しろよ。お前たちも鍛えねば。指揮はコジュウロウに任せる。』
コジュウロウ『分かりました。』
こうして所領各地に張り紙が出された。マサムネのおふれに人々は喜んだ。これで商売がやりやすくなるとか収穫時期に人が取られなくなる。また自分の腕を試してみたくて兵に志願するものが増えた。また外部からもその噂を聞きつけワタリに移り住む人も多くなっていた。
ハンベエ『マサムネ様のねらい通りですな。』
マサムネ『ああ。まだまだ俺の野望は始まったばかりだ。これからもよろしく頼む。』
ハンベエ『無論。あなたの天下取りまでの道のりお供させていただきます。』
マサムネ『頼むぞ。』
こうして時が来るまで力を蓄えながら待つマサムネだった。