第15話 マサムネの統治策②人事編
商人と役人の不正を正したマサムネは、次に人事に手を着けることにした。それは来る『その時』に備えて自信の戦力を強化するためである。マサムネはまず、ある立て札を2つ立てることにした。
一つには、新しく領内の決まり事を記し、その決まり事に一言一句でも書き足すか、訂正する事が出来たなら金を与える。
これはもう一つ狙いがある。それは新しい決まり事を領民に周知させる事。訂正する事が出来なくても、決まり事を領民に周知させることができる。
もう一つは、腕っぷしが強い者、喧嘩に強いものを自他、他薦問わずに館に集まるようにとふれを出すことにした。
マサムネ『今記したことを立て札に書いて、ワタリの各所に設置してくれ。』
役人『はぁ。』
マサムネ『お前たちではまたまだ人手不足なのでな。新しく雇っても、お前たちをどうこうしようという事ではない。安心しろ。』
役人『分かりました。直ぐに用意致します。』
マサムネ『頼む。』
役人『はっ。』
こうして領地の至る所に立て札たてられた。領民はこぞって立て札を見て何か訂正や書き足すことが出来ないかなど議論を交わしたり、我こそはと力に自信があるものなど名乗りを上げるのだった。
数日後
マサムネはまず看板に書き記した政策に対して意見のあるものに面会、些細な訂正や大きくこうした方がいいのでは?と言う意見を取り入れ、大小とわずに約束通り金を与えた。また才能のあるものを誘い官僚に取り入れるなど人を集めた。
また力のあるものや腕っぷしの強いものも続々と館に集まってきた。
マサムネ『私がワタリの領主マサムネだ!よく皆集まってくれた!お前たちの力今日はじっくり見せてもらうぞ!』
コタロウ『で、どうするんだ?』
マサムネ『剣なんか使っても皆ド素人だろう。だからちょっといい方法がある。』
コタロウ『いい方法?』
マサムネ『ああ。』
マサムネは部下を使って半径ニメートル位の円を描かせた。そして中央に線を引いて男二人をたたせた。
マサムネ『良し、これからお前たちに相撲をとってもらう。』
男A『相撲?なんだいそりゃあ?』
マサムネ『ルールは簡単だ。今描いた円の外に相手を出すか、相手に土を付けたら勝ちだ。ただし殴る蹴るなどの暴行は無しだ。純粋に力で投げるか円に出した方が勝ちだ。もし、殴るなど暴行と見なせる行為を行った場合は即失格だ。これを三人になるまでやってもらう。』
男B『つまり合格者は三人と言う事か?』
マサムネ『そう言うことだな。よし始めようか!行司は私がしよう。合図とともに始めるぞ。はっけよい……!』
二人が構える。
マサムネ『残った!』
試合は開始され、次々と力の弱いものから落ちていく。中には機転を利かせて、はじめのぶつかり合いをせず相手を転ばせたり後半になってくると実力がはくちゅうしておりなかなか勝負が決まらなかったり、なかなかの盛り上がりを見せた。
そして……
数時間後
昼間から行われた相撲も日が傾いた頃には全ての試合が終わった。残ったのは…。
一人は背は高くないが筋肉隆々で小回りが利くタイプ。
一人は背が高くがっしりとした体つきの正に力持ちと言うタイプ。
もう一人は機転が利き頭脳戦で勝ち抜いた、頭が回るタイプ。
マサムネ『ふむ。見事だった。名前を聞こう。』
筋肉隆々の男『シゲザネっていうだ。』
背の高い男『俺はカツイエだ。』
頭脳タイプの男『ぼ、僕はトウキチロウです…』
マサムネ『シゲザネ、カツイエ、トウキチロウか。この三人は明日より館に来るように。』
三人『『『ははーっ。』』』
男『俺たちはどうなるだか?』
マサムネ『お前たちは負けたとはいえ、その力は十分に役立つだろう。お前たちには非常兵として戦になれば一緒にでてもらうぞ。何もないときは農事でその力を役に立ててくれ。』
男達『『『はいっ。』』』
このときの三人はマサムネ軍の有力な武将となり、中心となっていくのだった。
コタロウ『ほうなかなか見事なもんだ。』
マサムネ『人がいなけりゃ、国は成り立たないからな。人は宝だ。』
コタロウ『たから。か。』
マサムネ『コタロウ、一つ頼みたいことがある。』
コタロウ『ん?どうした?改まって。』
マサムネ『イロハは知ってるな?』
コタロウ『お前さんの許嫁だろ?』
マサムネ『ああ。父上の元にイロハがいる。そこにいるコジュウロウと交代してイロハを守ってくれ。何かあればイロハを連れて脱出を。』
コタロウ『…。分かった。任せてくれ。』
コタロウはイロハの護衛のためマサムネの元を離れた。
数日後
マサムネ『在野の知恵者に詳しいものはおらぬか。』
文官『在野にでごさいますか。』
マサムネ『まだまだ人はいる。心当たりはないか?』
文官『噂くらいなら。東の鉄路山といわれる山には賢人が住んでいるとか。ただ才能が認められていないため世捨て人になっているとか。』
マサムネ『ほう……。会ってみる価値はありそうだな。』
文官『いかれますか?』
マサムネ『会ってみる。準備を頼む。』
文官『はっ。』
マサムネは知恵者の居るという鉄路山に向かった。麓には小さな小屋があった。
カツイエ『ここですかい?』
マサムネ『その様だな。』
カツイエ『ちょっと待っててくだせぇ。引っ張り出してきまさぁ。』
マサムネ『馬鹿者。礼儀を知らぬか。』
カツイエ『は、はあ。』
マサムネ『此方から訪ねたのだそれ相応な礼儀がある。』
カツイエ『……。』
マサムネは小屋の入り口にたち声をかける。
マサムネ『ゴメン。ここに天下の大賢人がいると聞いてやってきたのだが。』
?『わっはっは。そのようなものは此処におりませぬ。お引き取り願いますかな?』
マサムネ『私は若輩者故、先生のお知恵をお借りしたく。』
?『儂の知恵とな?何のために?』
マサムネ『天下。』
はっとした小屋の隠者は戸を開ける。そこには跪くマサムネの姿があった。
?『!!』
マサムネ『先生の教えを請いたくマサムネまかり越しもうした。』
?『あなたは仮にも一領主。人に簡単に跪くものじゃありませんぞ。』
マサムネ『天下のために先生の教えをお授け下され。』
?『天下ですか。……。分かりました。何処までお力になれるかは分かりませぬが、私で良ければお力になりましょう。』
マサムネ『ありがとうございます。』
?『申し遅れました。私はハンベエと申します。』
マサムネ『よろしく頼みます。ハンベエ殿。』
ハンベエ『此方こそよろしくお願いします。』
こうしてマサムネは後に政権の基盤となる人材を固めていくのであった。