第14話 マサムネの統治策 ①制裁編
マサムネが領地ワタリに着いて、一週間がたった。ワタリという地は、人口が2000人程の小さな村で、周りが山々に囲まれ土地も肥沃で農産業が盛んな土地だった。その分商人が少なく、金が欲しいなら行商で売り歩くか、たまにくる行商人に売るしかなかった。そのため農作業のきつさと不便さもあって、若者離れが深刻だった。マサムネはまずワタリの金の収入と収出を確認。内訳を出すように主簿に命じた。勿論金銭の流れを把握するためである。
~領主の館~
主簿『い、いかがでしょうか?何か問題でもありますでしょうか?』
マサムネ『……。金銭の収出に比べ収入がおおいな。』
主簿『そ、それは赤字にならぬよう此方も考えて使っているので……。』
マサムネ『民が貧窮しているのにか?』
主簿『そ、それはその……。』
マサムネ『まあいい。明日はお前たちの仕事ぶりを見せてもらおう。』
主簿『は、はいそれでは失礼いたします。』
主簿は一礼をして部屋を出ていく。
マサムネ『ふぅ。明らかに不正をしているな……。旅商人から賄賂か……。』
家来『マサムネ様。』
マサムネ『何だ?』
家来『マサムネ様にお会いしたいというものが参っております。』
マサムネ『俺にか?通せ。』
家来『はっ。』
家来に通され、一人の男が部屋に入ってくる。その男は商人の格好はしているもののがたいがよく背丈も高くとても商人とは思えなかった。
マサムネ『私がマサムネだが、何かご用かな?』
男『あなたがマサムネ殿か。』
マサムネ『そうだが。』
男『単刀直入に言おう。俺を雇ってくれ。』
マサムネ『そなたを?』
男『俺はこう見えて諜報活動が得意だぜ?雇って損はないと思うが、どうだ?』
マサムネ『諜報活動か。ふむ。ではおまえに頼みたい事がある。その結果次第でお前を雇うかどうか決めるのはどうかな?』
男『面白い。俺を試そうってか?いいぜ。それで。』
マサムネ『では、この村の商人と役人の蜜月を調べてくれ。簡単だろう?』
男『分かった。数日もあれば調べがつくだろう。数日待ってくれ。』
マサムネ『分かった。』
男『またここにくる。』
マサムネ『ああ。』
男は部屋を去ろうとする。
マサムネ『待て…。』
男『何だ?』
マサムネ『名を聞いてなかったな。』
男『俺か?俺の名はコタロウだ。』
マサムネ『コタロウか。いい知らせを期待している。』
コタロウ『ああ。期待しててくれ。』
翌日
マサムネは役人たちの仕事を見て回った。特に怪しい挙動はなく視察は終わった。
役人『いかがてしたか?』
マサムネ『ああ。仕事は良くやっているようだな。』
役人『それはようございました。ではこちらをお受け取りください。』
役人は懐から袋を取り出す。
マサムネ『何だ?これは?』
役人『我々からの心遣いで御座います。聞けば新領主さまは、許嫁が居られるとか。許嫁さまに髪飾りなどはいかがですかな?』
マサムネ『これを渡す代わりに商人との蜜月には目を閉じろと言うことかな?』
役人『!?』
役人は驚愕の表情を浮かべる。』
マサムネ『何だそういう事か…。まあ、もらっておこう。』
役人『では!』
マサムネ『ああ。蜜月の事は父上にも黙っておこう。』
役人『はっ、ははーっ。』
役人は下がっていく部屋を出ていく。。
マサムネ『ふぅ。だまされる振りも骨が折れる。後はコタロウからの報告待ちか。』
数日後
マサムネ『ふむ。やはり商人と役人の蜜月はあったのだな。』
コタロウ『ああ。商人からみかじめ料として役人に相当流れてやがる。』
マサムネ『みかじめ料として金を支払った商人は国に納める税金の免除やうちからの発注を優先的に斡旋出来るわけか……。』
コタロウ『そう言うことだな。』
マサムネ『ご苦労だった。誰か!誰かおらぬか!』
役人『はいっ!』
役人が一人はいってくる。
マサムネ『今夜商人や役人達を招いて酒宴を開こうと思う。早々に準備せよ。』
役人『は、はいーっ。』
マサムネ『コタロウ、今から10人ほど集められるか?』
コタロウ『俺の手下ならすぐにでも集められるぜ。』
マサムネ『そいつ等もつれてこい。まとめて雇ってやる。』
コタロウ『本当か!すぐにつれてくるぜ!』
コタロウは喜び勇んで部屋を出て行った。
さて俺も準備だな……。
その夜
領主の館に続々と商人や役人達が集まってくる。領主自らの宴なので顔覚えがよくしようと我先にとやってきた。商人達は奥の座敷へと通される。扉を開けると待っていたのは……。
そこには武装した男達と酒を飲みながら待つマサムネの姿があった。
マサムネ『よう。待っていたぜ。』
役人『こ、これはどういう事ですかな?』
マサムネ『どういう事か?見ればわかるだろう?今から不正した役人やそれにつるむ商人どもを裁くんだよ。』
商人『なっ!』
マサムネ『俺があの金でつられると思ったのか?証拠はあがってるぞ!』
マサムネはコタロウが集めた証拠を役人に投げつける。
役人『こ、これは!』
商人『不愉快だ!帰らせてもらう!』
マサムネ『逃がさねーよ。』
男達にかかり役人や商人達が捕まっていく。何とか逃げ出して玄関まできた商人も待ち伏せていた男達に捕まる。
マサムネ『一網打尽だな。』
商人『た、助けてくれ!』
マサムネ『商人がこの地に居なくなるのは困る。もう二度とこのようなことをしないと誓うなら許そう。』
商人『ち、誓う!なんならここにいる全員に念書を書かせる!だから許してくれ!』
マサムネ『……。いいだろう。次はないからな。』
商人『ははーっ。』
マサムネ『さて、次は……。』
役人『お、お許しを!心を入れ替え、今以上に働きます故…。平にご容赦を~!』
マサムネ『……。本来なら打ち首にする所だが今いなくなられてはたちいかなくなる。今以上にこのマサムネに忠誠を誓うか?』
役人『ち、誓います!』
マサムネ『いいだろう。次はないからな。』
役人『あ、ありがとうございます~。』
こうして役人と商人達蜜月の関係は終わった。役人達も心を入れ替えて働くのだった。