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第7話〜呼出〜

 「……くすくす。彼女、今日倒れたそうだよ?なんでも、過去の話をしていたせいだとか」

 校長室に、声が響く。少し低めの女の声にも、少し高めの男の声にも聞こえる中性的な声だ。

 「思い出話をしただけで倒れるものかね?」

 ふかふかの偉そうな椅子に座った校長はいぶかしげに訊く。

 「くすくす。キミは本当に教育者かい?キミは一体彼女の何を知っている?あの子はもしかしたら死ぬような目に何度も遭って、それがトラウマになっているかもしれないのに噂だけで判断するなんて、とてもじゃないが校長先生のすることだとは思えないな」

 すると声があざけるように笑った。

 「……で、なんの用かね?」

 反論できないからか、話題をそらすように校長が言った。声はそれをとがめることはしなかった。むしろ、ようやく本題に入れて喜んでいるというところか。

 「いや、簡単な頼みごとだよ。放課後、ボクのところへ彼女を招待したいと思ってね。その準備……つまり、放送室の使用許可を得たくてね。構わないかい?」

 そう声が訊くと、校長はやれやれと嘆息しつつ、こう言った。

 「君は別に私に許可を得なくともとも構わないよ。校則でも、物理法則でもそう決まってる。……自由に使いたまえ」

 「実にありがたい。今日を逃したらチャンスはないかもしれないと思っていたんだ。彼女にボクを知ってもらう機会は、そうそうないと思うからね」

 それきり、声は聞こえなくなった。放送室へ行ったのだろう。

 「……まったく、振り回される日々から、早く抜け出したいものだな」

 一人になった校長はそう一人ごちた。

 しかし、彼自身それが叶うことがないとあきらめていた。

 







  

 なぜなら、声の主の能力が絶対的で、終わりがないことを理解していたからだ。





  




 




 気を失ったせいか妙に長く感じた一日を終え、放課後。

 両親とミリアお姉ちゃんが待つ家へ帰ろうとした時だ。

 ピンポーンと、校内放送が入った。

 なんだろう?と私は注意して聞こうとする。

 『えー、4年3組、クレア・ペンタグラム。今すぐ生徒会室に来るように。生徒会室は一階職員室の隣にあるから、迷うことはないと思う。……では、ゆっくり待っているので用事があったら先に用事を済ませて来てくれたまえ。以上』

 簡潔に用件だけ、というわけではないがどこか事務的な口調。

 「クレア、何したの?」

 「え?」

 沙耶が疑いの目を私に向けている。……なぜ?

 よく見れば、教室も私を見てひそひそと話している。

 「……この学校の生徒会に呼び出される、その意味をあなたは理解していないようですね?」

 そんな私に追い打ちをかけるように、柊風羽(かぜは)が説明しようとしていた。

 「いいですか?この学校の生徒会は、他の学校の生徒会とはわけが違います。この町、琴乃若のおさ、それが生徒会というものなのです」

 ふむふむ、琴乃若のトップが、この学校の生徒会、ということか。なるほど。

 「……そんなこと、信じれると思う?所詮は子供の集まりよ?それが大人の世界を牛耳ってるとでも?」

 あり得るわけがない。まともな政治や経済ができないと、長なんてできない。そんなの、子供にできるわけがない。

 「信じるも信じないも、事実なのですから仕方ないでしょう?私のお父様も柊の党首ですけど、生徒会長には逆らえませんもの」

 ……それは、きっと弱みを握られているから頭が上がらないだけなのでは?

 口には出さずに思ってみる。

 あながちあり得なくもない。

 少なくともこの町が学校の生徒会によって支配されているなんてことよりは、よっぽど現実的だ。

 「……生徒会長って、どんな人?」

 まあ、仮にこの町を支配しているのだとして、その人がどんな人間か、すこし知りたくなってきた。もしかしたら会うかも知れないし。

 「高等部の生徒で、雪のような白髪の人、としか。あまり人前に出てこられない人なので……」

 真っ先にお父さんを私は思い浮かべた。

 だって、高校生で白髪ってまずいない。まあ、可能性としては考慮に入れておこう。

 「で、ここの生徒会に呼ばれるのはどういう意味なの?」

 最初はこの話題だったはずなのに、生徒会のことばっかりに話がいってしまった。まあ、知らないことを知れたから悪くはないが。

 「生徒会に呼ばれる人間とは、たいていが犯罪者です」

 「なっ……」

 なにそれ。なんで犯罪者が生徒会に呼ばれるわけ?

 「そして、生きて帰ってくる人間はいません」

 「なっ……!」

 もっとなにそれ。なんで生きて帰ってくる人間がいないの?まさか、殺して……

 「……と、無駄話がすぎましたわね。生徒会に呼ばれた人間が、遅れてはいけませんから。……では、ごきげんようクレア」

 そう言って、風羽は教室を出ていった。取り巻きたちもそれに続く。

 今は放課後なのだ。いつどのタイミングで出ても誰からも文句は言われない。私も待ってと言えない。

 「……行くか」

 生徒会に呼ばれるという意味を再認識して茫然としている沙耶は、教室を出ようとした私についてこようとはしない。まあ、危険な目に遭わせるわけにもいかないし、いいけど。

 













 ……危なくなったら、暴れるだけだ。何も心配はいらない。














 放送であったように、職員室の隣に行くと、扉があった。

 信じられないぐらい大きな扉が。

 ここだけが、他の部屋と違って感じるのは、何も扉のそばにある『生徒会』と達筆の表札だけのせいではないはずだ。ここが他の部屋と違うのは、いくら転校したての私でもわかる。

 ギイ……

 恐る恐る、豪奢ごうしゃな扉を開ける。かなり重いので、力を入れないとビクともしない。

 苦労して扉をあけると、声が聞こえた。

 「ようこそ、生徒会へ」

 部屋の中に入ると同時に、扉がゴウンと音を立てて閉まった。

 部屋は暗く、照明はつけられていない。重苦しい雰囲気しかしない。今までの経験則から、今すぐ逃げ出したい衝動に駆られる。

 でもなぜだか、もう逃げられないという気がした。

 「……さて、自己紹介を始めよう」

 そう言ったのは、お父さんそっくりの人。

 白髪頭で、でもそれがとてもかっこいい。

 目の色は暗いから分からないけど、背格好もそこはかとなくお父さんに似ている。 

 暗いけど、顔つきがお父さんに似ているのは分かる。

 違いと言えば、声と、中性的、というところだ。

 お父さんは男だってはっきりわかる容姿をしている。

 でも、この人はお父さんに似ているのに、性別が判断できない。

 声も中性的だから、さらにわからなくなる。

 「キミの名前から言っていこう。キミはクレーシア・ペンタグラム。しかしキミ自身はクレアと呼ばれたがっている。ボクもそれに応じてあげようと思う」

 ……?

 この人は自己紹介をしようと言ったはずだ。それなのになぜ、私のことを言っている。

 ……というか、どこでそれを!?

 「ボクはこの程度のことなら分かるぐらいには、地位があるつもりだ」

 つまり、この人は自分の情報収集力のすごさを証明するためだけに、私のことを言ったのか。

 一応用心のために右手はコートの中に入れている。掌にはすでに拳銃の感触が伝わっている。

 「……さて、ボクの名前を言おうか、クレア・ペンタグラム」

 彼とも彼女ともいえる人は、指を鳴らした。

 すると、灯りがついた。

 彼のような彼女のような人は、いくつもの長机が円卓状に並べられた部屋で、その空いた中心に立っていた。

 円卓には誰もいないが、それがかえって様になっている。

 彼のような彼女のような人は、腰に手をあてて偉そうに、












 「ボクの名前はトレース。トレース・トレスクリスタルだ」

 そう名乗った。


 そろそろ忘れられている人もいるでしょうから、補足説明を。

 ちなみに、前作『異世界を渡る旅人達』を閲覧していない人のために、ざっと特徴も記しておきます。

 


 クレアが言う、

 お父さん=ルウ・ペンタグラム

 

 ルウ・ペンタグラム

 異世界を旅する旅人で、外見16歳、実年齢不明。

 白い髪に青い瞳が特徴。

 優しい性格で、悲惨な目に遭っている子をほっとけないという理由で養子という形で引き取っている。結果、息子、娘合わせて66人近い人数に。

 しかし、彼らはほとんどが旅人であるため、一同に会すことはめったにない。

 現在はサラ、長女のミリア、娘のクレアと共に旅をしている。





 以上で補足は終了です。

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