第55話〜夏休み直前の行事〜
ミリアお姉ちゃんが戻ってきて、アゲハが家族になってからもう三日が過ぎた。
最初こそアゲハの容姿に戸惑ったりもしたが、雰囲気が全然違うのですぐに慣れた。
面白いことにアゲハとはよく話が合う。趣味とか、美的センスとかがよくかぶるからだろう。アゲハも趣味はお裁縫とか言ってたし。
朝一番に起きて朝食の支度をするのがアゲハの日課(まだ三日しかたっていないが)だった。お父さんは『僕の仕事兼趣味が……』とか嘆いていたが、アゲハの作った料理を食べると意外とまんざらでもない様子だった。
で、アゲハのその技術はどうやら生来のものらしい。
『イノベート』の『シイナ』達にはもともと、そういう風に生活力があるよう『作られる』んだとか。
つまり、潜入するときに料理をつくれなかったり、ほどけた衣類を繕えなかったりしたら支障がでるから、遺伝子レベルに刻み込んでしまおう、というわけだ。
閑話休題。
ミリアお姉ちゃんは未だに未来視が使えない。どうやらアゲハと逃げていたときに見た未来があまりにも残酷だったためか、未来を見たくないというお姉ちゃんの深層意識が能力を封じているんだとか。時間がたつか使わざるを得ない状況になると使えるようになるようだけど、後者の方法では復活してほしくない。
現在はエリアに代わってもらっていた教職に復帰し、英語を教えているはずだ。
閑話休題。
私は三日間普通に過ごした。普通に学校に行って、普通に帰宅して、普通にご飯食べて、普通に家族とお話して、普通に道具や武器の整備、調整をして、普通に道具や兵器の新作造って、普通に試して、普通にお風呂に入って、普通に寝た。
どこまでも普通でつまらなかったのだが、それはまあいいとして、だ。
今私はとてもあせっている。
今は放課後前の学活。担任の先生が、教壇で話していることが、私をあせらせていた。
「え〜っと、明日から個人懇談を兼ねた家庭訪問が始まります!あしたからは4時間だけど、遊びすぎないようにね!」
昨日も言われた説明だ。個人懇談と家庭訪問の意味がわからなかったので、昨日家に帰って辞書で調べたら、こう出てきた。
『学校の教師や少年保護施設の職員が、児童・生徒の家庭環境を理解し、家庭と連絡を保ち教育上の効果を高めるため、その家庭を訪問すること』
『打ち解けて親しく話し合うこと』
………え?
って、私は思った。
私の家庭環境って……。
父、ルウ。白髪青い瞳の高校生。
母、サラ。赤い髪に赤い瞳の高校生。
長女、サラ。黒髪に茶色の瞳の英語教師。
姉、コトリ。金髪に金色の瞳の高校生。
姉、リリー。黄色の髪の黄色の瞳の高校生。
姉、ララ。白い髪に銀の瞳の高校生。
姪、アゲハ。黒髪に黒い瞳の現在職業なし。高校生になる予定。
所得、不明。謎の財源あり。
って、あれ?なんで父よりも長女のほうが外見年齢上なの?しかも全員が全員髪の色が違ったり、目の色が違ったりで、どこをどう頑張ってみても似ていない。
しかも、親しくって、一体何を話すの?
どう考えても前途洋洋な気がするのだが……大丈夫だろうか?




