第51話〜到着〜
あわただしくクレアが出て行ったあとのルウの家。
サラは携帯電話片手に、誰かと話していた。
「……これでいいのよね、ルウ?」
『うん。ありがとう、サラ。これで、彼女たちは成長できる……』
電話の相手は、ルウ。学校は終わったが、まだ生徒会の仕事が残っているのだ。ちなみにサラは二日前に仕事は終わっていて、先に帰宅したのであった。
「……でもさ、ルウ。子供って親があれこれしなくても勝手に成長するもんよ?私がそうだったんだから」
『そうかもしれないね。君が言うんなら、説得力あるよ。でも、僕はこうして、成長を促してやりたいんだ。どんなにおせっかいだとわかっていてもね。……じゃあ、すぐに帰るから。準備して、待っててよ』
そう言って、電話が切れた。
「……まったく。家族のくせに素直じゃないんだから」
そう言ったサラの顔には笑みが浮かんでいた。
私はリンクの家を見つけると、拳銃、それも五十ミリの化け物銃で扉を撃ち抜いた。
轟音がとどろき、目の前にあった扉は跡形もなく消し飛んでいた。
私の傑作のうちの一つ、五十ミリ拳銃、その名も『ゾディア』。大木さえも一発でなぎ倒せるほどの破壊力がある。……強すぎて使い道がない、というのが欠点であるのを除けば、最高の一丁だ。
ミリアお姉ちゃんをさらった変態に気遣うほど、私は人間ができていない。
お姉ちゃんを救うはずみとか言って殺してやろうかしら、あの男。
「リンク!リンク・ソル・ジェイド!出てきなさい!ミリアお姉ちゃんを返してもらうわよ!」
玄関は弾丸の余波にあたり、ボロボロになっている。
もはや廃墟に近くなった家で、私はお姉ちゃんを探す。
「……なんのようだ?クレア」
「来たわね、変質者」
黒髪、黒瞳、黒マントの全身黒に身を包んだリンクは、私の呼び出しにすぐに応えた。
「何のよう?それはさっき言ったでしょ。さあ、早くお姉ちゃんを返せ!」
拳銃を突きつけて、叫ぶ。
「へえ、お姉ちゃん、ねえ。たしかミリアってもうお前の家族じゃないんだろう?」
「違うわ。まだミリアお姉ちゃんは私のお姉ちゃんよ」
「ルウが言ったんだろう?家長の言うことには従う。それが人間の家族だろ?」
リンクの言葉に、私はすぐに切り返した。
「それは昔の悪風よ!今そんなこと言うやつ、いないわよ!」
「昔のならわしには従うものだろ?てか、ルウは正しいと思うぜ?」
「なんでよ」
「だって普通敵になるやつを家族には出来ねえよ。俺は別だぜ?俺は、死なねえからな」
リンクはひょうひょうと、そう言った。
「……心は死ぬわよ?殺してあげるわよ?」
じゃらじゃらと、コートから道具を取り出して、脅す。
「おいおいおいおいおいおい!どう考えても小4の持ち物じゃねえだろ!?針に、鉈、斧、それに……これなんだ?」
道具のひとつをリンクは指さして訊いてきた。
「これ?いいわよ教えてあげる。これは鋼鉄の処女。聞いたことあるでしょ?針だらけの拷問道具。昔、結構使われてたみたいだから、作った」
「作ったって、おい……」
「不思議?」
「不思議も何も……」
「これで、あんたの心の息の根止めてあげる」
「……!」
アイアンメイデンをリンクに投げつけて、私は人の気配のある二階へと上がった。あれは気をそらすための囮。目的はお姉ちゃんだってことを忘れてはいけないのだ。
「……待ってて、もうすぐだから……!」
私は、二階にあった部屋の扉を開けた。




