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第45話〜ルウの家族〜

 みんなの視線がルウに集中する中、彼は淡々と考えを述べる。

 「僕はね、思うんだよ。家族って、ぶつかりあって成長していくものなんだ、って。子供が反抗期を迎えるのも、ぶつかり合って理解しあうためのものなんじゃないかな、って僕は思う。だから、ね?」

 「……なにがいいたいの?」

 クレアがルウの言わんといていることが理解できずに、そう訊いた。

 「だからさ。みんな、何も僕の決定に従う必要なんて、どこにもないんだよ?

 君たちは僕に反抗したことが今までなかった。もしかしら僕はそれに動揺しただけだったのかもしれない。僕の決定は間違っている……そう思うなら、行動してくれ。僕はそれを止める。けれど、振り切って、すすむんだ。

 間違っていると思う親に従う必要なんてないよ。

 僕と君たちとは、家族であって命令したりされたりの関係じゃないんだから。

 きっと、僕は怒るだろう。でも、家族みんなが、アゲハを家族にしたいと心の底から思って、そしてもし敵でもいいというのなら……もしかしたら、僕も考えを変えることがあるかもしれない。今の時点で、僕は考えを変えるつもりはない。僕がいいたいのは、それだけさ」

 ルウの言葉は、クレア達をはっとさせた。

 今までルウに言葉を言って、覚悟を示したのはクレアだけ。リリーも、コトリも、ララも、何も言わなかった。だから、今までルウが考えを変えなかったのだ。

 それに気付くと、リリーは行動を起こした。

 「お父さん!私、お姉ちゃん迎えにいってくる!アゲハも一緒にね!」

 ガタリと立ち上がり、リリーがルウの言葉を待たずに飛び出ていった。

 「……やめときなよ、ララ」

 リリーに続こうとしたララを、ルウが止めた。

 「…………………私は、あなたに感謝してる。そして、今でも。………………けれど、今は、今だけはお父さんには従えない。恩を仇で返すことになったとしても、ミリアが大切だから」

 ララはそう言い残し、家を飛び出ていった。

 「私も、もう家族を失いたくありません!じゃ、じゃあね、お父さん!」

 制止されると意思が揺らぐと思ったのか、コトリはララに隠れるようにして出て行った。

 「……君は?」

 ルウがいまだに呆けているクレアに訊いた。

 「……なによ、ちゃんと認めてるじゃない」

 どちらかというと三文芝居だったが、それでも3人が気付いた様子はなかった。気づけたのはクレアとサラだけ、だったのだ。

 「認めてる?何を言ってるんだい?僕はミリアの存在は認めたけど、アゲハまで認めたつもりはないよ?ミリアに関しては怒らないけど、アゲハを連れてきたら本気で怒るよ?……それでも、君は行くのかい?」

 ルウの言葉に嘘はない。アゲハを連れてきたら怒るつもりだ。

 「……行くわよ。行かなきゃ。………でも、アゲハはね、家族がほしいだけなの。……それがわかってやれないなんて、やっぱり男はだめね。……お父さんにだけは、わかってほしかった」

 そう言い残して去るクレアの目の端には、涙が、一筋。

 玄関が開き、そして閉まる音がして、この家にはルウとサラ、二人きりになった。

 「……なによ、ほんとはどっちでもいいくせにさ」

 サラはからかうようにそう言った。

 「ははは……サラにはばれてたか……。うん、そうだよ。僕はもうアゲハが家族に入ってもいいって思ってる」

 「じゃあ、なんでわざわざあんなこと言ったの?クレア泣かせてまで言うことだった?」

 「うん。僕の家族はね、もっと喧嘩をするべきなんだよ」

 サラはこれには驚いた。平和主義のルウがこんなことを言うとは、まったくもって予想外だったからだ。

 「あんたが『喧嘩するべき』?何考えてんのよ」

 「……じゃあ、考えてみてよ。僕の決定に喧嘩もなくみんなが従っていたら、この家はどうなった?ミリアの未来視は戦闘の疲れでまともに使えないのに、あんな別れかたして、そのままで。

 きっと家族仲はどこがぎすぎすしたものになっただろうね。クレアは家族のことが信用できなくなって、リリーもコトリもララも僕を敬うばかりで、何も見ようとしない。最終的には、クレアは出ていくよ。未来視なんてなくても、それぐらいは読める。だからね、ここは一度ぶつからなきゃ。つらいけど、全力で喧嘩して、もっと家族のこと知らなきゃ。僕はクレアのことならよくわかる。いっつも喧嘩してるからね。でも、ミリアも、コトリもリリーもコトリも、僕はクレアほど理解できていないんだ。彼女たちとは喧嘩したことなんてないからね。

 ……喧嘩は別に悪いことではないよ。それが殴り合いや殺し合いにならなければ、の話だけどね。

 それに……家族一丸となって頑固親父に立ち向かう。この出来事がどれほど彼女たちの絆を深めることになるのか……今からでも楽しみだね?」

 ルウの言いたいことはサラにはいまいち理解できなかった。けれど。

 「……あんた、かなり策士よね。普通そこまで考えないわよ?」

 











 

 それだけは、理解できた。

 

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