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第2話〜喧嘩のあとには〜

 教室に二人が帰ると、すでに教室は戦場となっていた。


 「なんですの、あなたたち男は! 野蛮で、考えなしで!」

 「うるせえ! 女だって野蛮な時あるじゃねえか!」

 「ハン! 男ほどではありませんわよ!」

 「なんだと!?」

 「やりますか!?」


 柊風羽と神宮克樹を中心に、男子VS女子で完全に対立している。 

 教室の真ん中を線に、きっちりと二分している。


 「ちょ、ちょっと、みんな……」


 沙耶の制止の声も、怒りに目を曇らせた彼らには届かない。


 「みんな、やめてよう……」


 涙目になって、沙耶は言う。

 それでも、言い争いは止まらない。


 「お前な、少しは落ち着いてものを見たらいいんじゃねえか!? 転校生みたいにさあ!」

 「フン! 何かにつけては転校生、転校生! そんなにあの子がよかったんですか!?」

 「いい悪いじゃねえだろ! あいつみたいにしたらどうだって言ってんだよ!」

 「お断りですわ! 何が悲しくてあんな無愛想、見習わなくてはいけないんですか!」

 「無愛想は関係ねえだえろ!」

 「関係ありますわ!」

 「んだとぉ!?」


 ほとんど無意識的に克樹の手が風羽の胸倉に伸びた。

 それに気付いて、風羽は身をよじってよけようとするが、逃れられない。


 「……!」


 しかし、克樹の手は阻まれる。

 

 震えながらも、風羽を守ろうと飛び込んできた、クレアの手によって。

 

 「あなた、なにをしているの?」


 クレアの声はわずかに震えていたが、克樹はそれに気付かない。言い表せないような圧倒感に、彼もまた震えていたから。


 「な、なにって、それは……」

 「それは、なに? 女の子の胸倉つかもうとするなんて、一体どういうつもりなの!?」


 克樹の手をつかんだまま、とがめるような視線を向ける。

 その瞳の奥にある本物の敵意に、普通の生活をしてきた小学4年生の子供が怯えないはずがなかった。

 幼いころから人を殺し続け、虐待に耐え、身も凍るような経験をしなければ身に付かないような、本物の、敵意。

 この敵意は、すぐにでも殺意に変わる。それぐらいなら、克樹にでもわかる。


 「う、あ……」


 経験したことのない敵意に怯え、克樹は手を振り払い、数歩、下がる。他の男子生徒も、それにつられて下がる。彼らはみな、クレアが発する殺意に敵意にただ怯えるばかり。


 「私は、あなた達男が怖いの。……でも、他の女の子が男に何かされるのはもっと怖い。私と同じような目に、他の誰かが遭うなんて、絶対に嫌だ! あんな痛い思い、誰にもして欲しくない!」


 手を女子をかばうようにして広げる。敵意の瞳は変わらないが、目には涙が浮かんでいた。


 「ま、まてよ、俺達はクレアをかばってたんだぜ? 普通なら、感謝すべきなんじゃないか?」


 克樹が、弁護するように言った。それでも、クレアの敵意に満ちた瞳は力を失わない。


 「誰が、頼んだのよ! かばってって、一体誰が頼んだのよ! 勝手にかばわないでよ! 私は男になんてかばわれたくない!」


 クレアは必死に叫ぶ。

 彼女は男に親切にされても、裏があるのではないか、何か企んでいるのではないかと疑ってしまう。彼女はそれがたまらなく嫌だった。

 男がみんな悪い人間でないのは、父親を見て理解できた。

 けれど、それをわかっていても、疑わずにはいられないのだ。

 親切にされて、しかしそれを悪意で返してしまう。

 その度に彼女は自己嫌悪してしまう。自分が最低な人間だと、どうしても思ってしまうのだ。

 どうせ悪意にしか感じれないなら、最初から親切になんかされたくない。男とはしゃべるのも辛い。

 そう彼女は思っている。


 「もう、優しくしないで、話しかけないで! 私のことなんて、無視しててよ!」


 彼女の叫びは、喧嘩していたことすら忘れていたクラスメイトに、誰ひとり聞きもらすことなく届いた。















 それから、一週間。

 クレアの望みどおり、クラスの男子はほとんど話しかけようとはしなかった。男子が彼女に話しかけるのは、事務的な連絡をする時だけであった。

 いくら好奇心旺盛な男子でも、怖がり、怯える女の子にちょっかいをかけようとはしなかった。

 向けられた尋常でない敵意もそうだが、それ以上に、『男に対する恐怖』が彼女の中で強大なのをクレアの叫びで理解したからであった。

 そして、彼女に否定的だった柊風羽も、少しづつではあるが仲良くなってきている。

 自己紹介の時無愛想だった原因がはっきりしたため、頭から否定する理由がなくなったからである。


 「ねえ、クレア」


 昼休み。給食の真っ最中、クレアと一緒の班である黒月沙耶が、そう、切り出した。

 隣にいるクレアはパンを食べる手を止め、


 「うん?なあに?」


 と親しげに言った。

 あの一件から、沙耶とクレアの仲はとてもよくなっている。一番最初に話した仲だからか、単に気が合うからか。

 それはともかく……

 










 「私たちって、友達、だよね?」

 「……もちろんよ、沙耶」

 

 

 

 

 



 

 


 どうやらクレアは、学園生活を楽しむことができそうである。

はい、どうでしたか?

 クレア編の始まりはこれにておしまいです。

 これから彼女がどのようにして学校生活を送っていくのか!?

 楽しみなところです。

 では、読んでくださりありがとうございました!

 コメント&感想、ぜひ書いてください!読者様の言葉が、作者の原動力になります!


 では、また次回、お楽しみに!

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