表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

後編


「うらめしや……」

「きゃあっ!」

 いつものように、通りかかったお客様の一人が怯えてくれました。今回はカップルではなく、数人のグループのお客様です。

「おっ、凄いな!」

「まだ稼働してる部分もあるんだね。電源はどうなってるんだろ?」

 驚かなかった者たちが、そんな言葉を交わしています。

 彼らの『電源』という言葉で気づきましたが、そういえば、今日は照明が消えていました。元々お化け屋敷なので薄暗いのですが、もう『薄暗い』を通り越して、完全に真っ暗なのです。

 彼らも懐中電灯みたいなものを手にしていました。私が使っていた『懐中電灯』とは違って、四角い形です。

 そして照明の他にも、違和感がありました。『稼働』と言われて気づいたのですが、唐傘お化けが出てこないのです。作り物だから、怠けるという概念はないはずなのに……。

 困惑した私は、少しでも事情を理解するために、彼らの話にさらに意識を向けました。

「でも、これで来た甲斐があったね! 何もなかったら、馬鹿みたいだもんね!」

「どうせ暇潰しだから、俺は何も期待してなかったけどな」

「とりあえず、面白いネタにはなるぞ。帰ったら早速、廃墟探索サイトの掲示板に書き込もうぜ!」

「『三年前に閉園した遊園地、打ち捨てられたお化け屋敷に本物の幽霊が!』みたいな感じだね!」

「おいおい、『本物の幽霊』は大袈裟だろう」

「ハハハ……!」

 私一人を残して、彼らは笑いながら去っていきました。


   


 幽霊の時間感覚は、人間だった頃とは異なるのでしょう。

 今の方々が、なんと三年ぶりのお客様だったとは……。本当に驚きです!

 もう稼働していないのであれば、私以外の脅かし役たち――作り物のお化けたち――は、二度と顔を出すこともないのでしょうか。

 そう考えると、少し寂しくなります。でも、だからといって私には、ここを出て余所(よそ)へ移ろう、という気力もありません。

 だから『打ち捨てられたお化け屋敷』に居座る私は、それこそ本物のソロ幽霊。気づかぬうちに私は、きちんとソロデビューしていたのですね!




(「そろそろしたいソロデビュー」完)

   

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ