表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死スキルは弱い方です  作者: 上葵
▼隔離城下街
61/79

ゲート


 城門の先は薄暗いトンネルのようになっていて、抜けると、城下街につながっていた。

 かつての人の営みを想像させるぐらいには、建物は町の様相を保持していた。

 家屋や街灯など、多少ひしゃげているものの、本当にここが何百年ものあいだ人を寄せ抜けていないのか、想像ができなかった。

「なんで俺たちは結界に弾かれなかったんだ」

 先ほどの門での出来事が気になったので質問してみると、アンティールすごくめんどくさそうに、

「自分で考えてください」

 とだけ返事をした。

「おい、教えろよ」

 無視して先に進もうとしたアンティールの襟を引っ張る。「ぐえ」と小さな悲鳴を上げて彼女は立ち止まった。

「やれやれ。仕方ないですね。教えてあげます」

 咳払いをして彼女は続けた。


「先ほど我々が倒したオウルベア。あれは原始個体ではなく、模造だったんですよ」

「どういうことだ?」

「オウルベアというモンスターを真似て作られたモンスターということです」  アンティールの瞳は真剣だった、伊達や酔狂で言ってるわけではなさそうだった。

「……工場みたいなところで作られるってことか? モンスターが? てか、もし仮にそうだとしても、門を通り抜けられたこととなんの関係があるんだよ」

「工場ではなく、紋章の力です」

「……なんで、いまそんな話が出てくるんだよ。結界の紋章にそんな力があるのか?」

「ヒラサカさんは結論を急ぎすぎです。その話の前にまず獣の紋章を理解しておく必要があります」

「獣の紋章?」

 城下街を隔離しているのは『結界の紋章』のはずだ。なぜここに来て別の名前の紋章を挙げたのだろう。

「傷付けた相手を容姿を変え、支配下におく。所在不明の十三紋章の一つです」

 いたって平穏に憶測を述べるので毒気が抜かれてしまった。

「獣の紋章が使われたことにより、エダ城の兵士は深淵の獣になったってことか?」

「その可能性が高いです」

「なるほど……」

 一人納得して頷く。アンティールが満足したように歩き始めた。

 城下街は広いらしい。正面の広場には水が枯れた噴水があった。

「いや、待てよ。獣だか結界だか知らないけど、それがなんで門を潜れた理由になるんだよ」

「鈍いですね。異次元空間においては、重力が狂い、物質は形を維持できず内部から崩壊するらしいです。結界の紋章は薄い異次元の幕を呼び出しているのだと思います」

 浅くため息をついて、続けた。

「にも拘らず、異次元空間においても重力に左右されないのが紋章持ちです。私やヒラサカさんは輪廻、不死の紋章をそれぞれ宿してますから、結界の紋章の作り出すバリアに肉体が左右されないんです」

「……」

 彼女の言葉を無言になって理解しようとしていたら、アンティールがニタニタしながら、続けた。

「おっと、その顔は、『ならなんでアメントは門をくくれたんだ』って疑問の疑問の顔ですね。簡単なことですよ。彼女も紋章持ちだったんです。おそらくは『心霊の紋章』、長らく行方不明だった紋章は愛教の聖女が持っていたんですよ。教団の信仰を左右する情報ですから、扱いにはくれぐれも注意してください。紋章一つで戦争が起こるほとですからね。推理で導くのは大変でしたが、あらゆる情報がそれを物語っているのです」

「それは知ってた」

「……え、なんで」

「いや、ずっと前に人伝で聞いたことあるし……」

「……」

 アンティールは苦虫を噛み潰したような渋い顔をして、ぼそりと「うざ」と呟いた。俺のせいじゃなくない?

「それより、門を普通に潜り抜けてる深淵の獣はなんなんだよ」

「獣の紋章により作り出された生き物ですから、結界を無効化できるのでしょう」

「よくわからないが、紋章持ってれば結界は越えられるってことか?」

「簡単には言ってしまえばそういうことです。同じ制作過程で作られた秘術ですから。まあ、潜れる確率は相当高いと踏んでましたが、予想通りでした」

「予想外れてたら?」

「そのときはヒラサカさんの腸詰めが出来てただけですよ」

「うりゃ!」

「遅い!」

 右拳でアンティールの頭を小突こうとしたが、避けられた。振り抜けた拳が空しく空を切る。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ