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日は射さずとも命は巡る
目映いばかりの光が収まり、現実感がじんわりと足元から上ってくる。俺は狭いキャンプの中で棒立ちしていた。
夜の気配が充満している。辺りはすっかり暗くなっていった。
がらくたばかりが広がる空間に、幼女姿に戻ったアンティールは無言で椅子に傾けられた絵を眺めていた。
「あ……」
俺は机の上のランプに灯りをともし、小さな背中に語りかけた。影が長く伸びる。
「アンティール。堂本はこちらの世界を繋げたわけではないんだよな」
修学旅行の日程表の裏に描かれた魔方陣はアンティールがよく描くものにとても良く似ていた。
「……」
返事はなかった。
その代わりに彼女はその場でしゃがみこみ、地面に転がる白いなにかを拾い上げた。
白い枝のように見えたが、すぐにそれが骨だと言うことに気付く。
「それにしても、いい絵ですね」
傾いた日差しが校舎をオレンジ色に染め抜いている。夜明けか日の入りか、はっきりとはわからない。
「夜明け前が一番暗いんですよ」
誰に語るでもなく、アンティールは一人ごちた。




