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第八話

窓から入ってくる風が心地よかった。

私の髪もその風に揺られ、ゆらゆらと揺れていた。

「では、今日の授業はこれまでにしましょう」

(つ、疲れた...!)

今やっていたのは魔法学の授業。あまりの難しさについていけず、心が折れそうになったところでの終了だった。

「この調子でいけば大丈夫そうだよ。リラ様、飲み込み早いね」

「あはは、そんなこと言ってくださってありがとうございます」

「...うん。紅茶を入れようか」

ロイド様が苦笑して、使用人に紅茶を持ってくるように命じた。私は机に突っ伏し、項垂れていた。

(もうダメだわ...。)

目を瞑り、息を吐いた。ため息をつくと、ロイド様がのぞき込むようにこちらを見た。

「リラ様、大丈夫?」

「えぇ、大丈夫ですわ。ちょっと生きる気力をなくしただけで」

それ大丈夫じゃないと思うけど、とロイド様が苦笑した。

ロイド様は私の魔法学の先生。蜂蜜色の髪の毛がふわふわと渦を巻いている。先生と言っても、私とあまり年は変わらない。私はずっと森で暮らしてきて勉強をする必要がなかったから、今急いで頭に詰め込んでいる。

(最近、いつお茶したかしら...。)

忙しすぎて最近はゆっくり出来ていない。

(こんなことなら、王族なんてならなければ良かったかしら...)

はぁ、と2回目のため息をつくと、そういえば、とロイド様が話し出した。

「明日、王家主催の夜会だよね。そこでリラ様のお披露目をするみたいだけど」

「え?」

(私のお披露目?聞いてないんだけど...)

「まぁ僕も正式な通知があった訳じゃないから、詳しいことは知らないけど...。夜会にはでるんだよね?」

「はい...。」

確かに明日の夜会には出席する。

私が王族になって初めての夜会だ。元々、社交界に出る必要がなかった私は、社交界デビューする13歳の1回きり、それ以外の夜会は出ていない。確かにお披露目する必要はある。

(でも明日だもの...。まさか、逃げられないように直前にいうなんてこと...)

ルークならありえる。私とずっと一緒に居たのだ。私が面倒事が嫌いなことは嫌という程知っている。逃げられないよう明日の朝とかに言うかもしれない。

(今日問い詰める必要があるわね)

使用人が持ってきてくれた紅茶を飲み、私は席を立った。

「今日もありがとうございました。失礼致します。」

「うん。また明日ね」

ロイド様に見送られながら、私は部屋をでた。

廊下を進み、自分の部屋に向かっていると窓から声が聞こえてきた。窓の外を見ると、中庭に人影が見えた。

(あれは...ヘンリー様?)

中庭で談笑しているのは、ヘンリー様だった。

(隣にいるのは...誰?)

隣には、ヘンリー様の少し年下ぐらいの令嬢が座っていた。二人は随分仲がいい様子だった。

(あ、婚約者かもね。ヘンリー様ももういてもおかしくない年だし)

もしかしたら他の王族の婚約者の名前までも覚えないといけないのだろうか。そんなことを考えながら歩いていると、メイが向こうから小走りでこちらに来た。

「もう、リラ様!探しましたよ。ドレスの採寸があるんですから、急いでください!」

「そうだったわね。...ねぇ、ヘンリー様って、もう婚約者がいらっしゃるの?」

ヘンリー様ですか?とメイが首を傾げた。

「さぁ...私は知りませんけど...。何かあったんですか?」

「...あのね、さっき中庭でヘンリー様がどこかのご令嬢と談笑してるのを見かけたの。とても仲が良さそうだったから、婚約者なのかなって」

メイにさっき見たことを伝えると、えぇ?と驚きを見せた。

「でも、ヘンリー様って...」

メイが何かを言いかけ、しまった、というような顔をした。私は疑問に思い、振り返ろうとしたところで肩を掴まれた。

「そういう話を廊下でするものじゃありません。メイ、リラ様を呼びに行ったんじゃないのか?」

「すいません、ルーク様。」

メイが肩を竦ませた。私はルークに肩をがっちり掴まれたまま、大人しくしていた。

「まったく、仕立て屋を待たせてるんですよ。早くしてください。」

「はーい...」

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