第五話
王宮につくと、使用人達に案内され、会議室に向かった。中に入ると、一斉に視線を向けられた。
(あー、突き刺さるわね...)
どの人も、なんで?という顔をしていた。私は、何も気にしていないように、用意されていた席に座った。
今日集まっているのは、陛下の孫に当たる王族まで。それ以上となると、血が薄くなってしまうからだ。王族であるのとないのとでは、大きく違うことがある。それは、魔力の量だ。この世界では、魔力が多いほど力が強くなってくる。王族以外の貴族は、王族よりも魔力が劣ってしまう。さらに平民にもなると、ほぼ魔力を持っていないため、魔法石と呼ばれる魔力が込められた石を使っている。
ルークが私の斜め後ろの席に座った。どうやら、私が最後だったらしく、陛下の従者が陛下を呼びに行った。
陛下が中に入ってくるとしん、と静まり返った。
「今日は急だったにも関わらず、皆よく集まってくれた。今日は、重要なことを話し合うため、私が直接案内を出させてもらったが、皆にきちんと意見を出して欲しい。では、始める。」
宰相である、ビリー・コーブラー様が議題を読み上げると、どよめきがあがった。
「お待ちください。次期陛下の決定とは、陛下が退任されるということですか?」
王位継承権第五位である、ブラッド・ジェラルド様。彼は陛下の側室の子供のため、レオお兄様より王位継承権が低い。
「そうだ。 2年後の建国記念日、退任しようと思っている。」
「そんな...聞いていませんわ!」
「今、この場で初めて公表したのだ。知らないのは当たり前だろう。」
「ですが...!」
眉間に皺を寄せ、今陛下と話しているのはアルマ・ベンソン様。彼女も、ブラッド様と同じで陛下の側室の子供。本来なら、結婚して王家を出るはずだが、婿をもらい、王族として残っている。
「それなら、エドウィンも知らなかったのでしょうね」
「あぁ、今聞いたよ」
エドウィンというのは、レオお兄様のお父様である、エドウィン・ジェラルド様。王位継承権第一位。エドウィン様は陛下の正室の子供だから、一番王位継承権が高い。私の母はエドウィン様の妹のため、本当は王位継承権第二位だったが、もうこの場には居ないため、ないものとされている。
「陛下が2年後、退任されることは分かりました。そのご意思が固いことも。ですが、その話し合いでなぜ王族全員を集める必要があるのですか。しかも、王族でいない方も混ざっているようですが...?」
ブラッド様が私のことをチラリとみて言った。視線が突き刺さる。私は俯いて下をみた。
「実は、次期国王はレオにしようと思っている」
陛下の言葉に耳を疑った。レオお兄様を国王に?周りの王族たちもざわめいている。普通では考えられないことだ。普通は、王位継承権第一位の者が即位する。それがいきなり王位継承権第三位のレオお兄様にいくとなると、驚かないわけがなかった。信じられない思いでレオお兄様の方を見ると、一切の動揺をみせず、真剣な眼差しで陛下を見つめていた。
(レオお兄様は、このことを知っていたんだわ)
と直感的に思った。
レオお兄様は立ち上がり、恭しく礼をした。
「国王陛下、そのお言葉ありがたく存じます。僕の気持ちとしましては、ありがたくお受けしたいと思っております」
「ちょっとお待ちください!うちのヘンリーはどうなりますの!?」
ブラッド様の妻、ブルーノ様が言った。ブラッド夫妻の息子、ヘンリー様はレオお兄様の1つ下。
(王位継承権はレオお兄様より低いけど、二人は歳が近いから、ブルーノ様にとっては気になるわよね)
ヘンリー様の方をみると、眉間に皺を寄せていた。
(でも、怒っている感じではなさそう...)
どちらかというと、つまらなさそうな感じだった。
ヘンリー様の様子を変に思っていると、陛下がさらに驚くことを言った。
「それと私が退任し、レオが即位したと同時に、リラの住居を王宮に移そうと思っている。」
「えっ!」
今度は私の口から声が漏れた。私の方に視線が一気に集まってくる。
「あの、発言をお許しください。...私は、王族ではありません。本当は、この場にいることも出来ないような存在です。それに加えて、王宮に住むだなんて...。とんでもございません。」
私がそう言うと、次々と賛成する人達が増えた。
(このまま、なしってことにならないかしら...)
そう思いながらレオお兄様を見るが、ふっと笑って首を振られた。