第二十三話(ルーク視点)
ルーク視点の話です。
「ルーク様、こちらもお願いします」
「あぁ。そこに置いといてくれ」
バタン、とドアが閉まる。
はぁ、と思わずため息がでてしまった。
(またか...)
これで書類が増えるのは3回目だ。処理しても処理しても終わる気配はない。
(今日も帰れそうにないな)
今、俺がいる場所はボスワーズ家。父の仕事を手伝わされている。これだけの量を今までどうやって一人でこなしていたのか、不思議になる量だった。
書類がようやく半分に減った頃、トントンと扉を叩く音がした。返事をすると、使用人が入ってきた。
「お仕事中すみません。バイロン様がお呼びです」
「わかった。すぐ行く」
最近は父の仕事を手伝っている。今までは兄が手伝っていたが、その兄が今は留学し、父が一人で仕事を回すのが大変になってきたからだ。
コンコンと父の部屋をノックすると、はい、とすぐに返事がした。
「失礼します」
中に入ると、ゆったりと父が座っていた。
「急に呼び出して悪いな、ルーク」
「いえ。それで用件は?」
父から渡されたカードから浮かび上がってきたのは、若い令嬢の写真や名前などだった。
「これは...」
「お前にお見合いの誘いだ。相手はナタリー・ウォード嬢。ウォード家は中級貴族だが、今勢いのある家だ。お前にも、ボスワーズにもいい相手だと思うぞ」
(久々に帰ってきた実家に、大量の仕事と見合いの知らせがあるなんて、散々だ...)
お断りします、と言おうとしたところで、父がふっと笑った。
「わかってるよ、お前の言いたいことは。見合いを断ると言いたいんだろう」
「わかってるなら受けないで欲しい。見合いを了承すれば、相手に期待させてしまうだろ」
カードをぽん、と机の上に置くと、部屋を出ようと扉に向かった。これ以上用はないだろう、という空気を出して部屋を出ようとすると、待て、と父の声が聞こえた。
「どうせ、お前は家を継ぐ気はないんだろう?お前がリラ様の傍を離れるとは考えられないしな」
だが、と父は続けた。
「従者を続けるのはいいとしても、いつまでも結婚しないわけにはいかないだろう。リラ様に相手が出来たときはどうするんだ。従者であるお前に、その結婚を止める権利はない」
(そんなことはわかっている)
わかっていても、現実を突きつけられた気がして、俺は何も言えなかった。
「遅かれ早かれ、身を固める必要はある。そうだろう、ルーク」
「そんなことはわかってる!」
思わず口からでた言葉は、自分が思っていたより乱暴なものだった。そんな俺をみて、父は言い続けた。
「会うだけでも会え。今無理に結婚しなくてもいいが、いずれする覚悟はきめておけよ」
そう言うと、椅子に座って書類を見始めた。
俺は何も言えないまま、父の部屋をでた。自分の部屋に戻って、今後のことを考えた。
(確かに今の状態がずっと続くわけじゃない。でも、俺の気持ちをリラに伝えても、リラにとっては迷惑になる)
ずっと兄のように慕っていた俺が、いきなり自分のことを好きだと言ってきたら?リラは信じていた俺に裏切られたような気持ちになるだろうか。
かといって、リラの従者をやめるなんて選択はありえない。
(今後のこと、か...)
見合いは1ヶ月後。それまでにこれからのことをじっくり考えるのもいいかもしれない。




