第十八話
はっ、と目が覚めた。
額には汗をかいた感触がある。
(嫌な夢をみたわ...)
額の汗を拭き取り、窓の外を見ると、ちょうど朝日がカーテンの隙間から漏れていた。ベットからでてカーテンを開けると、窓を開け、バルコニーにでた。少し風が吹いていて、それがちょうど涼しかった。
「おとうさま、おかあさま...」
あんな夢を見たからだろうか。
無性に寂しくて、人肌が恋しかった。
瞳を閉じると、おとうさまとおかあさまに会える気がした。
しばらくバルコニーにいた後、部屋の中に戻った。いくら夏とはいえ、もうほぼ秋と言っていいぐらい。しかも今日は風が強く、長時間外にいると少し寒かった。時計を見るとまだ朝食には早い。
(メイとルークは起きてるだろうけど、仕事を増やしたくはないし...)
やっぱり王族というのは不便だ。少し外出するのも護衛をつけなければいけないし、かといって王宮の中を散歩しようものなら、使用人の目について、あまり一人で歩かないでください、などと小言を言われる。
(私が新しく王族に入って不安なのは分かるけど、もう少し自由にさせてくれてもいいのに...)
はぁ、と小さくため息をつくと、部屋の中を見渡した。
(何もすることがないし、魔法学の勉強でもしてみようかしら)
詳しい検査の日程は決まっていないが、突然言われてもおかしくない。机に座り、ノートと向かうが、どうも集中することができなかった。
どうしても、さっき夢で見たことが頭の中をぐるぐるとまわる。
あのとき助けに来てくれたのはルークだ。ルークはルークのお父様...バイロン様の命令で、私の捜索に同行していた。そこで私を見つけ出し、助けたことが陛下から認められ、私の従者となった。
(成果が認められたのに従者になるっていうのも、嫌な話だと思うんだけど)
ボスワーズ家は、貴族の中でも上位に位置している。ルークの祖父は宰相で、バイロン様は自分で商売を始めて大成功させた。ルークには三歳上の兄がいるが、その兄も今留学している。
(あのときルークが助けに来なかったら...)
今でも時々考えてしまう。私を助けに来たことで、ルークの人生を狂わせてしまったのではないか。私が、ルークの人生を邪魔してるのではないか。
(こんなこと考えても、私にはどうすることもできないって、分かってるのにね...)
自嘲気味に笑った。ふと時計を見ると、いつの間にかいつもの起床時間になっていた。私は立ち上がり、もう一度ベットに横になった。
(メイがくるまで、大人しくしていよう)
ベットに横になると、なんだか眠たくなってきた。意識が微睡んでいき、瞼が重くなった。
メイの声が遠くで聞こえたような気がしたが、私はそのまま意識を手放した。




