第十七話
「うわぁー!おとうさま!あれ、うみ!?」
「あぁ、そうだぞ。」
初めて見た海は、キラキラしていて宝石のようだった。
「リラ、そんなに身を乗り出すと危ないわよ」
隣では母が注意しながらも、嬉しそうに笑っていた。私は、えへへ、と笑い、これから見れるであろう美しい景色を楽しみにしていた。
そんなときだった。
突然馬車が止まり、外が騒がしくなった。
「おい!どうした!?」
「主!海賊が...!」
父が慌てて外に飛び出すと、外から剣と剣がぶつかり合う音が聞こえた。
私は不安になり、母を見ると
「リラ、大丈夫よ」
と私の手を握った。
私は母にしがみつき、じっと耐えていた。
外では、父と部下たちが戦っていたが、数の多さで相手の方が勝っていた。そして、それは車内にも入ってきた。
「きゃあー!!」
「リラ!待って、待って!!」
私は男たちに外に放り出された。
「邪魔なガキだな。おい!こいつの口を塞いでおけ!」
「いや!おとうさま、おかあさま!!」
リラー!!と私を呼ぶおかあさまの声が遠くで聞こえた。私はそのまま、意識を失った。
頬にひんやりした感触があって、私は目を覚ました。
(ここ、どこ...?)
ひんやりとした感触は床だった。体を起こすと、そこは物置部屋のようだった。
(わたしたちがのった馬車が山賊に襲われて...あ!おとうさまとおかあさまは!?)
慌てて辺りを見渡すけど、荷物が置いてあるだけだった。
(ここにいるのはわたしだけ...?)
すぐに立ち上がって探しに行こうとしたが、手足が縛られていて自由が効かなかった。這うようにして扉の近くまでいくと、扉が少し開いていた。その隙間から外を覗くようにして見ると、他にも部屋が見えた。
(おかあさまやおとうさまはどこにいるのかしら...)
最後に聞こえたおかあさまの声。あの声が脳裏にこびりついて離れない。
(おかあさま...おとうさま...)
あのときのことを思い出して泣きだしそうになったとき、廊下から足音が聞こえた。
私は一気に体が強ばり、そこから動けなくなった。
(どうしよう...。おとうさま、おかあさま、助けてっ...!)
バンッと扉が開き、私はきつく目をつぶった。
中に入ってきた人が私のほうへ、近づいてくる。
(殺されるっ...)
私がそのまま固まっていると、リラ...?という男の子の声がきこえた。驚いた私が目を開けると、そこには私より少し上ぐらいの男の子が立っていた。
「君、リラ・クラーク?」
その男の子はわたしの名前を知っていて、私は頷くことしかできなかった。私が頷くと、男の子は私の手足を縛っていた縄を解いた。
「行こう」
私は男の子が差し出した手をとり、一緒に走り出した。
「ねぇ、あなたは誰なのっ...?」
走りながら男の子に聞くと、あぁ、とその子は言った。
「あぁ、僕は...」




