表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/26

第十五話

「...はい。今日はここまで。お疲れ様」

「ありがとうございました」

あれからロイド様の観察をすると決めたのはいいものの、何も分からずにいた。

特に、あの日から変わったことはなかった。いつも通り授業を行って、時間になったらやめる。授業の後は、少しゆっくりしてロイド様は部屋を出ていく。

(あれからエヴァン様のことを聞いてくることもないし、私の勘違いだったのかしら)

あの夜会から、何事もなく時は過ぎていった。私は、ロイド様が怪しい...と探っていたことを忘れかけていた。


いつも通り、授業が終わるとロイド様に呼ばれた。

「リラ様、ちょっと時間あるかな?」

「えぇ、大丈夫です。何かありましたか?」

ロイド様は曖昧に笑い、こっち、と手招きした。

私はロイド様の隣まで行くと、ロイド様がそっと私に耳打ちした。

「今度、魔力検査が行われることになったんだ」

「あぁ...」

魔力検査とは、その言葉のままその人の持っている魔力を検査すること。通常は、生まれてから二ヶ月以内に一回、10歳の誕生日に一回、それから16歳の成人するときに一回行われる。魔力の量によって待遇も違ってくるため、貴族たちはその三回の検査のために学び、訓練や矯正をしたりする。ただ、この検査を行うのは下級貴族まで。つまり、平民にこの検査を受ける義務はない。まぁ、平民に魔力があること自体が稀なため、検査を受けようとする平民はほぼいない。

私は生まれたときに一度したきり。10歳の検査は行ってないし、16歳の検査のときはまだ王族ではなかったため、検査をする必要がなかった。

(でもこの中途半端な時期に普通やる...?)

陛下は許可を出したのだろうか。そんな疑問を感じ取ったのか、ロイド様は言葉を続けた。

「それが、今回の検査の結果によってはリラ様を王族から追放するって話まで出てるんだ」

「え...」

追放、という言葉に思わず声が漏れた。頭の中にある出来事がフラッシュバックした。

私の呆然とした顔をみて、ロイド様は何を思ったのか、私に優しく話しかけた。

「大丈夫。僕が掛け合って、何とかするよ。微量でも、魔力があれば問題ないんだし。それに、リラ様の生まれたころの検査結果を見せてもらったけど、何の問題もなかった。だから、そんなに心配しないで」

私は後半のロイド様の言葉をほぼ聞き流してしまっていた。私の頭の中では追放という言葉がぐるぐるとまわっていた。

ロイド様はそのままゆっくりと席を立って、ゆっくりと微笑んだ。

「時間はまだあるよ。落ち着いて検査を受ければ大丈夫。...それじゃ、また」

私はソファに座り込んだまま、ロイド様が部屋から出ていくのを見送っていた。


それから、どれぐらい経ったんだろう。

コンコン、と扉がノックされた。その音を聞いて、私はようやく我に返った。扉が開いてメイが入ってきた。

「リラ様、まだここにいたんですね。もうすぐ3時ですよ。お茶にしましょう。」

メイがにっこりと笑って言った。

メイの顔をみると、それまで張り詰めていた心がゆっくりと柔らかくなるような気がした。

「...えぇ、そうね」

私は少し口角を上げて、メイと一緒に部屋を出た。



自分の部屋に戻ると、ドサッとベットに倒れ込んだ。さっきのロイド様の言葉がぐるぐると頭の中を回った。

(いけない、あのときのことを思い出しちゃう...)

ぎゅっと目をつぶったとき、ルークが部屋に入ってきた。ルークと目が合うと、ルークはメイに部屋を出るように言い、部屋の中には私とルークだけになった。

「今度、魔力検査をすることになったんですって。結果によっては王族から...追放、するって」

私は自嘲気味に笑った。

ルークは何も言わず、ポットからお茶を注いだ。

「まぁ別にいいんだけどね。地位や名誉に興味はないもの。森の生活に戻れば、またこれまで通り自由な生活が送れるわ」

リラ様、と静かにルークが言った。

私は下を向いて話を続けた。

「ほら、今までずっと魔力なんて使ってなかったから、たぶん検査には引っかかると思うの。だから、ルークはここに残りたかったら残っていいのよ?あなたまで森に戻って、不便な生活を送る必要なんてな...」

「リラ!」

部屋にルークの声が響き渡った。ルークは私の傍にくると、私の顔を掴んでルークの方に向かせた。そして、そっと濡れている目元を拭った。

「大丈夫。あのときみたいにはならないよ。今は俺も、レオ様だっているだろう?陛下だって、リラのことを大切に思ってるんだから。」

だから大丈夫、そういうようにルークは優しく微笑んだ。

熱いものが喉のおくから込み上げてきた。視界がぼやけると、ルークがそっと私の背中に腕を回した。私はルークの胸に顔を埋めて、ルークの背中にしがみつきながら声を出して泣いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ