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「がっ…」
「それくらいにしておけ、ゼメキス」
「ヤー」
男は低く返すと、俺の身体をベッドへ投げ飛ばした。急に喉へ入り込んできた空気にむせて俺はせき込む。息を整えながら、俺は部屋に入ってきた人影を睨む。
俺を持ち上げていたのはゼメキスと呼ばれる長身の男だった。ダークスーツの下に屈強な体格を隠している男は肩までの黒い長髪に髭面だった。無機質な、冷めた目をしている。
部屋に入ってきた人物はもう一人いた。ゼメキスを止めた男だ。背丈はゼメキスより頭一つ小さく、痩せている。整った身なりをしており、上等なスーツをまとっているとわかった。髪を後ろに撫でつけている。右足をケガしているのか引きずっており、杖をついて歩いていた。
ゾッとしたのは目つきだった。ゼメキスとはまた違う、冷たい無感情な眼差しだ。
「よもや抵抗を試みるとは。度胸は買うが、無謀だ」
「アンタは…?!」
「娘が世話になった手前、名乗るべきであろうな。私はローレンス。ローレンス・メドン・ナイトクラウド…」
ローレンス・メドン・ナイトクラウド。ナイトクラウド家当主にてイリスとハーピアの父親。イリスを殺し、ハーピアを送り込み、俺の記憶を失わせた張本人。
「お前が…!」
いきり立つ俺を涼やかに一瞥し、ローレンスはベッドに腰掛けた。
「多少の無礼は許そう。君からしたら異常な状況だ。戸惑うのも無理はない」
「どういうつもりだっ…!」
「どういつもりだ?異なことを言う。それはこちらの台詞だよ、真田和嵩君」
立ち上がろうとする俺をゼメキスが抑え込んだ。圧倒的な力だ。自分の力では振りほどけない。ローレンスは力を加減するよう手で指図した。
「よもやアメリカに…それも事故に巻き込まれたニューヨークに現れるとは。自身の命が惜しくないのかね?それとも我々の誘いを受ける気になったのかね?」
「誰が…お前達なんかに…!」
「その言い草…やはり君は知り過ぎたようだ。やれやれ、ハーピアも不出来に育ったものだ。口が軽い。彼女はこんな漏洩は犯さない」
「お前がイリスを…!イリスを…!」
「おや、そんなことを気にしていたのかね?てっきり自らが殺されかけたことを怒っているかと思ったが」




