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ヘブンズゲート・クライシス  作者: 遠藤 薔薇
52/112

52

「意味はまだよくわかっていない、ただ君からその言葉を聞いた気がする」

俺は固唾を呑む。

「これ以上深入りしてはいけない」と、彼女から漂う空気がそう告げているのはわかる。

それを無言で、強引に振り切る。

「そして、とても重要な言葉だって気もするんだ。俺と君にとって、本当に重要な」

「…私の名字よ。知らなかった?」

それは取るに足らないことだと言わんばかり、彼女は浮薄な調子で返した。

「イリス・ナイトクラウド。それが私の名前。珍しい名字だからね。それで耳に残っていたんじゃない?」

「ナイトクラウドの家そのものが君の職場?」

「そうね。とある企業の創業者一族なの」

「そして君が生きられる唯一の場所」

「生家だもの。家族もいるし、当然じゃない」

「だけど君はそこから出た。出たはずなんだ」

彼女が眼を見開く。

「待って…和嵩、あなた記憶が…」

「なのに君は、今でも仕事をしていると言っている。それも君の家で、ナイトクラウドで」

畳みかける。まずは確証が欲しい。

「そして君が働き始めたのは4、5年前。でも俺がイリスと出会ったのは6年前だ。その時彼女は『仕事の手伝いで日本に来た』と言っていた」

彼女は動じる素振りを見せない。だけどそれは虚勢だ。作られた静観だ。

俺は核心的な一言を見舞うだけだ。

「まだ疑問はあるけど…まずは一つだけ、君に聴きたい」

「何かしら?」

一呼吸置いて、言った。

「君は誰だ」


7.音も温度もなく

「君は誰だ」

我ながら馬鹿正直な直球だったと思う。

しかしイリスじゃない彼女はやっぱり動じていなかった。だが、静観という程冷めた感じもなくなっていた。

無に近い表情の裏で静かに観念したのだろう。


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