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ヘブンズゲート・クライシス  作者: 遠藤 薔薇
40/112

40

「生理」

「せっ…」

繰り返しそうになって俺は口を塞いだ。彼女はシニカルに微笑む。

「別に気を使わなくていいよ。一緒に暮らしていれば出くわすものじゃない」

「そういわれても…」

「だから今日の私はオフ。休んでいるから、好きに遊んできていいよ」

声こそ気丈だが表情がげんなりしているのは隠せていない。申し訳ないが予定通りで出かけることにしよう。ここで予定を変更して家に残った所で彼女は喜ばないだろう。

その後、俺は夕食を作ることを約束して部屋から出た。待ち合わせの10時20分。恐らくギリギリの到着になるだろうが問題ない。槇原は時間にルーズで、基本的に15分は遅刻してくる。はりきって早めに待ち合わせる必要はない。

有楽町線で池袋に到着した俺は待ち合わせ場所の池袋東口で立って待っていた。昨日も池袋に来たから連日で来ていることになる。とりたてて好きな街というわけではないが、何かにつけて遊びやすい場所だ。プライベートでは色々重宝する。次の日のことを考えずにデートプランを考えたのもあるけど。

のんびり待っていると、スマホに槇原からのメッセージが入ってきた。

「5分遅れるー」

今現在⒒時20分。とっくに遅れているのにまた5分遅れるとのたまうとはなかなかの根性だ。日本人は世界でも時間をしっかり守るというけど、こと槇原に関しては例外なのだろう。おまけに今回はとびきり遅い。夏休みだとルーズさに拍車がかかるのだろう。

そこから更に10分待ってようやく槇原は姿を見せた。白のノースリーブに黒いノースリーブのパーカー、グレーと白のチェックのステテコ。さらにクロッカスをはいている姿はまさにラフの極み。身支度の時間は絶対そんなにかからないだろう。実際寝癖をそのままにした髪を披露している。元々栗色の地毛らしいが、天然パーマの少し入って犬の毛をクシャクシャに丸めたような感じになっている。

「おぃ~」

「おはよ」

間の抜けた声の挨拶。槇原の声は妙に幼い。背も小柄で、俺よりも頭一つ小さい。傍から見たら同級生には見えないだろう。

「ごめんなー遅れたー」

「寝坊だろ?」

「まーな。40分前に起きた」

俺が早めに起きたのがバカらしくなる言い訳だ。すっかり慣れたので「相変わらずだなぁ」くらいしか思わない。もっとも怒ったところで改善する奴でもないが。


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