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「ごめんね。もうさようなら」
「何線?駅まで送るよ」
「ありがとう。でもいいよ。見送りまでしてもらっちゃうと、別れるのが辛くなっちゃう」
少女は足早に歩いて行った。俺は慌てて付いていく。
店から出た彼女は振り返って俺の足を止めた。
「ここでお別れ。ダメだよ、付いてきたら」
彼女の瞳は潤んでいた。俺はもう付いていくことはできなかった。
「…さようならだね。また会えたらいいって…願っている」
「うん…」
何を言えばいいかわからない。別れの言葉に何がいいか、何を言うべきかなんて知らない。
でも、声をかけずにはいられなかった。
「あ、あのっ!」
すでに背中を向けていた彼女が足を止めた。
「…何?」
「君の…名前は…?」
彼女はゆっくりと振り返り、笑顔を見せた。
「イリス。君の名前は?」
「…和嵩。真田和嵩」
「和嵩。いい名前だね」
残り香のような、きれいな笑顔だった。
5.夕暮れは短し
有楽町線の市ヶ谷駅に着いた時、イリスはキョトンとした顔をしていた。駅が変われば、当然景色は違っている。地上と地下で印象が違うのは当然だ。
地上に出て、あの釣り堀が見える橋まで来て、俺は言った。
「イリス、覚えている?」
「え?」
「ここだよ。6年前に俺達が出会った場所。ほら、あの釣り堀も」
イリスは目を丸くしていた。
「まさか…和嵩、記憶が…」
「いや、ごめん。記憶は戻っていないんだけど…6年前の記憶があるからさ。覚えている?イリス」




