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ヘブンズゲート・クライシス  作者: 遠藤 薔薇
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この空白は埋まらない。


2.彼女は知らない

7月末日。東京都B区立久間倉高校。

終業式を済ませた俺は早々と校舎を出て、蝉時雨が降る商店街を歩いていた。

今日も日本は平和だ。炎天下でちゃんとラーメン屋が冷やし中華を始められている。

ランドセルをガタガタいわせて走る小学生やアイスを片手に雑談する中学生がいる。

そしてそんな光景をつぶさに見ている能天気な俺がいる。


いきなり舞台が飛んだのでここで軽く説明しておこう。

俺の記憶は戻っていない。だが空白の間に何が起こった(と予測できるか)はわかった。

俺の記憶の空白は別の人間が埋めてくれた。俺の覚醒に気づいたナースが呼んだ医者やNYPDの刑事によってだ。

おおまかにまとめると以下の通り。

俺は予定通りアメリカに出発。6月一杯は短期留学を満喫していたらしい。だけどホームステイ先のアパートがガス爆発で木っ端微塵になった。その爆発に巻き込まれてしまったというのだ。それがつい1ヶ月前の話。

幸いにも俺は軽傷で済んだ。爆発の衝撃で窓を突き破ってアパートの3階から落下したために炎に巻き込まれず、植え込みの上に落ちたので打撲で済んだ。最初はもうろうとしていたが意識はあったらしく、植え込みの上で手足を土だらけにしながらもがいていたらしい。だけどそのまま意識が落ち、軽い昏睡状態に陥ったそうだ。

同時に、俺は記憶を失った。刑事と話してつじつま合わせをした結果、俺はアメリカに出発する3日前からの記憶が全て消えていた。短期留学での出来事も、思い出も、学んだことも全て切り取られたかのように消えている。

これには参った。お見舞いに来てくれた自称友人達とも話が合わないし、俺が今すぐすべきこともイマイチ判別がつかない。おまけに荷物がことごとく灰になってしまったものだからどうしようもない。スマホまで粉々になってしまったのは痛い。

とりあえず刑事に頼んで父親につないでもらい、治療費の支払いを頼んだ。アメリカは保険がないから入院し続けるとおそろしいくらい金が出ていく。請求してみたら今の段階でもかなりの額に跳ねあがっていた。

最悪な状況だがラッキーだったことが2つある。

1つ目は財布とパスポートが無事だったこと。貴重品だからと簡易金庫に入れておいたのが幸いだった。


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