表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘブンズゲート・クライシス  作者: 遠藤 薔薇
15/112

15

すでにその恰好を慣れた俺は帰り際に寄ったスーパーで買った食材の入ったビニール袋をイリスに渡して靴を脱いだ。

イリスにもらったチョコバーを食べながら俺はソファに座った。イリスもそれとなく隣に座る。

1週間も経てばイリスが近づくことにもうドキドキしなくなる。何だかんだ一緒に暮らしているわけだし。ここまでくると家族のような感じがしてくる。

もし結婚したらこんな感じ…と考えると気恥ずかしくなるのでやめた。

「今晩何食べる?」

「任せる」

「そろそろ和食に挑戦しようかなー。カリフォルニアロールとか」

「それは、ちょっと違う」

「え?あれはお寿司じゃないの?」

「日本にはないよ。あれは和食じゃない」

「エビチリが中華になっている国なのに、そこは違うんだ」

「見た目のイメージで決まるからなぁ。それっぽかったら、オリジナルと違っていても関係ないんだよ」

イリスは「そうなんだ」とだけ答えてテレビを点けた。去年やっていたドラマの再放送が流れている。平和な生活を送る主婦が突然国家レベルの陰謀に巻き込まれるサスペンスものだ。俺はリアルタイムでその作品を見ていた。確か主婦の正体が記憶を失った公安の刑事とか、そんな設定。

フィクションながら妙に親近感が沸いて、俺は思わず見入ってしまった。

「平凡な人生なんて存在するのかしら」

ふと、イリスが呟いた。主人公の主婦を指しているのだろうか。

「平凡の定義なんてあやふやだわ。誰の人生にも大なり小なりドラマ性というか、特異性みたいなのがあるのに」

「そうかな」

「和嵩だってそうじゃない。お母さんが…」

そう言ってイリスはバツの悪そうな顔をした。

「ごめん、失言だった」

「いいよ、別に」

母の事を指しているのだろう。

四年前に自動車事故で死んだ俺の母、真田聡里は物理学者だった。それも世界的な再生可能エネルギー関連の権威であり、よく海外の学会にも参加していた。IQ180ともいわれている、俗に言う天才だ。俺の前ではグータラで放任主義な母親だったけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ